行政書士なかしま事務所のナカシマです。

 

今回は、「自己所有の農地に自家用駐車場を設置するのはどうしたらいいの」というテーマで、農地転用(農地法4条)について解説していきます。この記事は、「農地転用」「農地法4条」をキーワードとしています。

 

 

農地は法律によって守られています。なので、農地以外の用途で使用することも規制されており、使用するには都道府県知事等の許可が求められます(一部例外あり)。先日、知人から「市街化調整区域にある自己所有の農地(第二種農地)に自家用駐車場(面積100㎡)を設置するのはどうしたらいいの?」という相談がありました。

 

<目次>
1. 都市計画法による区域の確認
2. 立地基準(農振法と農地法による農地区分の確認)
3. 一般基準
4. 農地法4条許可申請の流れ
5.  例外規定(農地が2アール未満で耕作に必要不可欠な駐車場の場合)
6. まとめ

 

1. 都市計画法による区域の確認

 

対象となる農地が都市計画法によって、市街化区域に位置づけられているかどうかによって手続きが異なります。都市計画法は、都市の健全な発展を目的とする法律で、その中で市街化区域は「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」とされています。農地の保護よりも市街化を優先している区域です。

 

なので、市街化区域外であれば農地法4条に基づく許可が必要となりますが、市街化区域内であれば農地法4条に基づく届出で転用を進められます。届出であれば、形式上の要件に適合していれば農業委員会で受理をされ、その時点から効力が発生します。形式上の要件とは、次の(ア)~(ウ)に該当しないことだとされています(「農地法関係事務に係る処理基準」)。

 (ア)届出にかかる農地が市街化区域にない場合

 (イ)届出者が届出にかかる農地につき権原を有していない場合

 (ウ)届出書に添付すべき書類が添付されていない場合

但し、今回の相談では市街化区域外であるため、許可申請に向けた検討を進めていきます。

 

 

2. 立地基準(農振法と農地法による農地区分の確認)

 

農地法4条の許可基準として、立地基準と一般基準があります。立地基準では申請にかかる農地を区分して、その区分ごとに拒否の判断がされます。ここでの区分は、農業振興地域の整備に関する法律(以下、「農振法」)と農地法によって行われています。

まず農振法によって、県が農業振興地域を指定し、その上で市町村が農用地区域を指定します。さらに農地法によって、農用地区域外にある農地を甲種農地、第一種農地、第二種農地、第三種農地の4種類に区分します。それぞれの特徴については下表をご覧ください。なお、どの区分に該当するかについては、市町村役所での確認が必要です。

 

■農用地区域内

転用は原則不許可。市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地。

 

■甲種農地

転用は原則不許可。市街化調整区域内にある特に良好な営農条件を備えている農地で次に該当する農地。

①おおむね10ha以上の一団の農地の区域にある農地で、その区画の面積、形状、傾斜及び土性が高性能農業機械による営農に適する農地 ②特定土地改良事業等の施行に係る区域内にある農地で、工事完了の年度の翌年度の翌日から8年以内の農地

 

■第一種農地

転用は原則不許可。集団的に存在する農地その他の良好な営農条件を備えている農地で、次に該当する農地。

①おおむね10ha以上の一団の農地の区域にある農地 ②特定土地改良事業等の施行に係る区域内にある農地 ③近傍の標準的な農地を超える生産を上げることができる農地

 

■第二種農地

転用は、周辺の土地では事業目的を達成できない場合や公益性が高い事業等の場合は、許可。市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地に近接する区域にあるの農地、その他市街地化が見込まれる区域内にある農地で次に該当する農地

①道路、下水道その他の公共施設又は鉄道の駅その他の公益的施設の整備の状況からみて、第三種農地の場合における公共施設等の整備状況の程度に該当することが見込まれる区域内にある農地で次に該当する農地

ア 相当数の街区を形成している区域内にある農地 イ 鉄道の駅や役場等の施設の周囲おおむね500m以内の区域内にある農地

②宅地化の状況が住居の用若しくは事業の用に供する施設又は公共施設若しくは公益的施設が連たんしている程度に達している区域に近接する区域内にある、おおむね10ha未満の農地の区域内にある農地

 

■第三種農地

転用は原則許可。市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内で、次に該当する農地。

①道路、下水道その他の公共施設又は鉄道の駅その他の公益的施設の整備の状況が次の程度に達している区域内にある農地

ア 道路、下水道管又はガス管のうち2種類以上が埋設されている道路の沿道の区域であって、容易にこれらの施設の便益を享受することができ、かつ、農地からおおむね500m以内に2つ以上の教育施設、医療施設その他の公共施設又は公益的施設が存すること

イ 農地からおおむね300m以内に鉄道の駅や役場等の施設が存すること

②宅地化の状況が次の程度に達している区域内にある農地

ア 住宅の用若しくは事業の用に供する施設又は公共施設若しくは公益施設が連たんしている

イ 街区に占める宅地の面積の割合が40%を超えている

ウ 都市計画法に規定する用途地域が定められている

 

今回対象となる農地は、第二種農地。立地基準としては転用許可がおりやすい区分です。ポイントとなるのは「代替性(ほかの農地ではダメでこの農地でないとダメであること)」です。また、農用地区域内や甲種農地、第一種農地が原則転用不許可ですが、転用許可がおりるケースもあります。詳しくは後日に回します。

 

≪農水省HPより引用≫

 

 

3. 一般基準

 

続いては一般基準を見ていきます。次の①~⑯までの要件を全て満たす必要があります。

①申請者に農地転用を行うために必要な資力及び信用があると認められること

②申請に係る農地転用の妨げとなる権利を有する者の同意を得ていること

③農地の全てを農地転用に供することが確実と認められること

④農地転用の許可を受けた後、遅滞なく、申請に係る農地を申請に係る用途に供する見込みがあること

⑤申請に係る事業の施行に関して行政庁の免許、許可、認可等の処分を必要とする場合においては、これらの処分がされたこと又はこれらの処分がされる見込みがあること

⑥申請に係る事業の施行に関して法令により義務付けられている行政省庁との協議を行っており、支障がない見込みがあること

⑦申請に係る農地と一体して申請に係る事業の目的に供する土地を利用できる見込みがあること

⑧申請に係る農地の面積が申請に係る事業の目的からみて適正と認められること

⑨申請に係る事業が工場、住宅その他の施設の用に供されている土地の造成のみを目的としないこと

⑩農地転用をすることにより、土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがないと認められること

⑪農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがないと認められること

⑫周辺の農業に係る営農条件に支障を生ずるおそれがないと認められること

⑬農地の利用集積に支障を及ぼすおそれがないと認められること

⑭農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがないと認められること

⑮仮設工作物の設置その他の一時的な利用に供するための所有権の取得ではないこと

⑯一時転用等の場合において、その利用に供された後にその土地が耕作の目的に供されることが確実と認められること

 

 

4. 農地法4条許可申請の流れ

 

転用の許可権限を持つのは、原則として都道府県知事です。申請者は、転用許可申請書をまずは農業委員会に提出します。農業委員会では内容を検討し、当該申請書に意見書を付して都道府県知事に送付します。都道府県知事は、その後、転用許可申請に対する拒否の判断を行った上で、指令書(許可・不許可書)を申請者に交付するという流れになります。また、転用許可申請の対象となる農地の面積が30アールを超えるときや農業委員会総会で意見聴取が必要と判断されたときは、あらかじめ都道府県機構の意見を聴き、4ヘクタールを超える農地についてはあらかじめ農林水産大臣に対し協議をしなければなりません。

なお、申請書は農業委員会でいつでも受理してもらえるわけではありません。市町村の農業委員会によって月ごとの受付期間を決めているため、そこに間に合わなければ翌月まで待たないといけません。

 

     

≪「農地法に係る事務処理要領」から引用≫

 

≪農水省HPより引用≫

 

 

5. 例外規定(農地が2アール未満で耕作に必要不可欠な駐車場の場合)

 

基本的には、自己所有の農地を耕作目的以外の用途で利用する場合には、農地法4条による許可申請等の手続きが必要になります。これには、例外があります。農業従事者が、自分が所有する農地に、2アール(200㎡)未満の農業用施設を設置する場合は、許可等は不要となり、農業委員会事務局が定める所定の様式での届出だけで構いません(農地法施行規則第29条)。この農業用施設には農業に使うための駐車場も含まれます。しかし、この農地が農用地区域内であれば、事前に用途区分を「農用地」から「農業用施設用地」に変更する必要があります。

ただ、今回の相談では「農業用駐車場」ではなくて「自家用駐車場」であるため、この例外は適用できませんでした。ちなみに、現在、政府の規制改革推進会議では、農地転用の緩和に向けて協議がなされており、近い将来、許可不要の面積(2アール)が拡がる可能性も出てきています。

 

 

6. まとめ

 

「市街化調整区域にある自己所有の農地(第二種農地)に自家用駐車場(面積100㎡)を設置するのはどうしたらいいの?」という相談に対する回答ですが、各種法律を確認しながら、立地基準及び一般基準を満たすことができるかを検討します。今回は自家用駐車場であるため、原則として都市計画法における開発許可申請は不要と考えられますが、転用後の用途によっては、他にも検討しないといけないことも増えるため、個々のケースによって細かくみていく必要があります。