「は?何?....え?今から?」
「な...そりゃ今日は暇だけど.....」
「だからってそんな急に、あなた何考えてんのよ....って聞いてる?....ちょっとおーのさん!さとし!.....」
プープープー
俺の耳に聞こえるのは虚しい電子音。
昨日、急にスケジュールの変更があって、急遽オフになった今日。あの人が今日は久しぶりのオフなのはもちろん知ってたけど、本当に久しぶりに釣りに行くって3週間も前から聞いてたからオフになることは言わなかった。
だって、言ったら釣りはキャンセルするって言い出すに決まってるから。
なのに、どこから俺がオフって聞いたのか、朝から電話してきて急に出てこいって。
どこ行くのって聞いても『言わない』の一点張りだし、とにかく待ってるから準備できたらうちに来いってなんなのよ。
去年、俺の家からかなり近くの場所に引っ越してきた智。
それこそ徒歩で行ける距離だからってしょっちゅう行ったり来たりするようになってたんだけど、3月の緊急事態宣言以降は何となく行き来が減っていた。
もちろん仕事では顔を合わせることも多かったけど、リモートだったり、距離があったり、なんなら最近はアクリル板で接触しないようにされてたり.....。
スキンシップ過多な自覚はもちろんあったし、智も実はかまって欲しい人だったりして、2人ともいつもの調子には戻れてなくて、ちょっと寂しい気持ちでいた。
冬の終わりからまさか夏の終わりも近づいた今まで、こんなに長くいつもと違う季節を過ごすなんて思ってなかった。
そんな寂しさが結構きてたんだなぁと、通話の切れたスマホを持ったまま笑ってしまう。
俺もだけど、あの人もさ。
きっと会いたくて、話したくてしかたないんだ。
久しぶりに重なったオフ。
いいよね。
本当に久しぶりだもん。
きっとあの人は『俺たち家族以上なんだからいいだろ』なんて言うんだ。
そうなんだ。
俺たち5人でしか分かち合えないモノがあるように、俺と智にしか分かち合えないモノがあって。
それはいつだって、どんな時だって二人の間にあるモノだから。
自分で言うのもなんだけど、愛とか恋なんて感情超えちゃってるもん。
あの人は俺の全ての基準で、行く先を照らして見守ってくれる人。
あの人といるから俺は人に優しくできてる気がする。
優しすぎるけど、強すぎる人だからね。あの人は。
考えながら冷蔵庫の冷えた水を飲んで、顔をサッと洗ったら、少しはマシな服を着て玄関に立つ。
そこにはあの人からの誕生日プレゼント。
いつものサンダルが置いてある。
『これは楽屋、これはレコーディングスタジオ、これは事務所、これは.....』
嬉しそうに山盛りのサンダルをひとつずつ並べながら言うあの人。
潤くんは呆れてて、翔ちゃんはめちゃくちゃ笑ってて、相葉さんはすごい!!ってなんかテンション上がってたな。
『.....で、最後のこれは俺とデートするとき用ね』って満面の笑みで嬉しそうに言ったんだ。
俺、恥ずかしくてちっちゃい声でありがとうってしか言えなくて、したらにのちゃん耳真っ赤!って相葉さんが言うから、パシッと頭を叩いといた。
「突然君からの誘いで 履いていく靴に迷ってる~♪」
知らずに口から流れ出したメロディーは靴に迷うけど、俺の足元はあの人の愛が詰まったサンダル。
「さ、行きますか」
開いた玄関の外、焦げつきそうな太陽が眩しいけど、少し汗をかきながらあの人の家に行こう。
きっとガンガンに冷えた部屋で、温かい鍋かなんか用意してるんだよ。
『今は何にだって どこの誰にだって
シアワセ分けてあげた~い~♪』
小さい声で歌いながら歩き出した。
おしまい♡
涼ちゃん、R*さん企画立案、実行お疲れさまです。
遅れちゃったけど、こっそり参加させてください。
いつもありがとうございます♡