~兄ズの気持ち~
「智くーん」
「なに情けない声出してんだよ」
「雅紀があっち行っててって。冷たい」
「んはは」
「笑い事じゃないよ」
翔くんが情けない声で、情けないことを言う。
いっつもしっかりしてて、嵐一頼れるオトコなのに、事が相葉ちゃん絡みになると途端に弱くなる。
本当に惚れてんだなぁって兄ちゃんみたいな気持ちになった。
俺の和は、サプライズパーティーしたいって言う相葉ちゃんの頼みをいつものように仕方なさそうな顔して受け入れて、なのにめちゃくちゃ楽しそうにしてる。
良いよ。翔くんの誕生日だし、相葉ちゃんと楽しそうにジャレてんのもいつもの事だもんな。
だけどさ、アレはダメ。
潤にウィンク。
しかも、あの顔。
お前たぶん無意識だと思うけど、色気撒いてたかんな。
昔から和はそうだった。
構われるとニコッと笑って、スルッとみんなの懐に入ってた。
俺はそんな和を独り占めしたくて、誰にも触らせたくなくていつも隣に座らせてた。
和も嬉しいって笑うから、いつか無人島に連れてこうって、半分マジで思ってたことまで思い出す。
「....あんな邪険にすることなくねぇ?って、智くん?聞いてる?」
「あ?」
「聞いてなかったよね」
「あー」
「あの二人!智くんなら何とかできるでしょ?あんなくっついて作業する必要ある?」
「あー」
「もー!ちょっとなんかない?とか何とか言ってどうにかしてきてよ~」
なんか必死な翔くんが可愛いなぁと思ってた。
「智くん?兄さん?」
「ん?」
「とにかく行ってきて!」
あのでっかい目をさらにでっかくして俺を見る翔くん。
しかたねぇなぁ。
俺としては相葉ちゃんは一番安全だと思ってるから良いんだけどな。
翔くん、そばに居らんないから拗ねてんだろうな。
そんなこと思いながらキッチンへ近づくと、楽しそうな2人と潤の声。
「なぁ」
「あ、どうした?」
「なんかない?」
「は?」
「いや、あとどんくらい?なんか俺たちすることねぇの?」
「はいはい。翔さんね」
くすくす笑いながら、小さなカップに出来たてのタルタルソースを盛っていく和。
「はい」って俺に渡しながら「あと少しだから、大人しく待っててください」って。
なんだよ。
俺、子どもみたいじゃん。
柔らかく笑う和の笑顔を見て思う。
うん。認める。
俺も和が俺のそばにいなくて、楽しそうにしてんのが面白くない。
「ん」
「口、尖ってる」
「むー」
「ほら、大人しくあっち行ってて」
口を摘まれて上目遣いで言われれば、もうなんにも言えなくて、すごすごと翔くんの待つリビングに戻った。
コトリと置いたタルタルソースを見て、翔くんの肩がいつもより撫でた。