「何してんの?」
「ん?分かるでしょ?」
「質問に質問で返すなよ」
「ふふ、ごめんね?」
チッて小さく舌打ち。
でもその目は笑ってて、少年だった頃の無邪気さがのぞく。
「潤せんせは、何シテルの?」
「その潤せんせっての、やめろよ」
「だって先生でしょ?」
「今はスクールじゃない」
「じゃあ....潤?」
せんせって呼ぶ俺に少し拗ねたような横顔を見せる潤。
昔と同じように名前だけで呼びかけると、華があるってこういう事なんだなって誰もが思うような、華やかな笑顔を見せた。
そのまま俺の隣に座って、ジントニックってマスターに頼んでる横顔も綺麗で。
地味派手と言われる俺とは正反対だなんて思う。
華やかな潤。
地味だけどなぜか人目を引く俺。
ずっとつるんでた俺達は、見た目だけじゃなく中身も正反対だったりした。
熱くて、真面目で一生懸命。
手を抜くとかいい加減なんて言葉は許さないって潤と。
冷めてて、マイペースで面倒くさがり。
抜ける手は抜くし、やりたくない事は適当にって俺。
だけど人に迷惑をかけないとか、やり始めたら最後までちゃんとやるとか、目的までの行く道は違っても、たどり着く場所は同じだったり。
気づいたらいつも隣にいて、なんだかんだと5年間、親友として過ごした。
大学生活半ばで渡米して、帰ってきたのはアメリカ仕込みのイケメンダンス講師。
綺麗な顔は大人の色気を纏って凄味を増して、すれ違う人はみんな潤を見てた。
帰ってきてすぐにもらった電話。
待ち合わせ場所からいつも行ってた居酒屋まで、俺の肩を抱いて歩く潤からはムスクの甘い匂いがして、大人になったんだなって妙に納得した。
それから何年も友達のままで、潤が立ち上げたdance academyの講師になった。
潤の結婚式にも出席して、ずっと俺達は親友なんだと思ってた。
なのに。
今、俺の隣でジントニックをゆっくり飲んでるのは、雄の顔したオトコだ。
オマエ、俺のことダケルノ?
心の中で問いかけた。