『おやすみなさい』
ひまは少しだけ眠そうに
そらはちょっとドヤ顔で
おやすみなさいの挨拶をするとリビングを出て行ったうちの可愛い双子。
ひまは疲れたんだろうな。
あのケーキ結構難しいから、すごく上手に出来ててびっくりしたんだよ。
のんびりしてて、いい意味でいい加減なところのあるひまにとって、ケーキを焼くのは大変だったはず。
そらは、器用でわりと何でも簡単に出来る子だから、あの出来上がりにも納得で。
おやすみなさいの後のあのドヤ顔とか、そららしくて笑っちゃいそうになったけど。
そういう所が、まだ子どもだって思わせてくれる。
本当に2人とも頑張ってくれたんだなぁなんて思ってたら、さとしが隣でスマホを一生懸命操作してるから、そっと覗いてみた。
なんか....やっぱりこの人を好きになって良かったなって思った。
もう遠くなってしまった子どもの頃に、俺の好きになった人は、今も変わらずに俺を誰よりも惹き付けて放さない。
じっとその横顔を見ていたら、子どもたちの返事を見て笑ったさとしが俺の方を見た。
「かず、おいらと結婚してひまとそらを産んでくれてありがとな」
「...うん」
「ずっと、これからもおいらのそばにいてね」
「....うん。あなた、そればっか言ってるよ」
「大事なのはそれだけだもん」
まだ涙目のさとしが俺をじっと見つめて、それから俺の肩に腕を回してグッと引き寄せる。
ゆっくりと近づくさとしの顔。
唇が触れるまで目を開けてたら、さとしがじっと俺の目を見てたから恥ずかしくなって目を閉じた。
押し付けられて食むように柔らかく重なる唇が熱い。
唇から漏れる吐息が熱くて、声が甘くて頭が痺れてくるのは、どうしてなんだろう。
何度唇を重ねても、いつも痺れるように感じてしまう。
さとしの熱に全てを攫われるような気持ちになる。
するりと唇の隙間から忍び込むさとしのシタは、唇より熱くて俺は絡め取られて身動きも出来なくなって、さとしにしがみつくように抱きついた。
「はぁっ....さと...」
「かず、綺麗だ」
「ね、寝室行こ?」
「誘ってんの?」
「うん」
「どした?素直じゃん」
「あんなキスするから...」
言いかけた俺にまたキスをして、ボーッとなった俺の腕をひいて立たせると、スッとお姫様抱っこで抱き上げたさとし。
そんな力、まだあったの?
若かった頃を思い出して少しだけ笑った。
「さとし、カッコいいね」
「アホ」
そう言った横顔は、昔と同じで。
やっぱり俺の旦那さんはカッコいいなって思った。