実家は相変わらずで、母さんはちゃきちゃきと元気で、今年も手作りの綺麗なおせちが並んでる。
今も仕事をしてるから忙しいだろうに、食の細い俺の好物を色々作ってくれてる。
おせちがあるのに、玄関のドアを開けたとたんに母さんのハンバーグの匂いがして、やっぱり母さんってすごいなって思う。
ちゃんと寝てるのとか、仕事頑張ってるねとか俺を心配してくれてる。
姉ちゃんは相変わらずで、何考えてんのかよく分からんない人だけど「あんた無理しないようにね」って真面目な顔で言われてドキッとした。
無理しないようにねなんて初めて言われて、姉ちゃんも色々あるのかなって思ったり。
じいちゃんはやっぱりじいちゃんで。
下町の頑固なじいちゃんだけど、国民的な女優さんと共演するって話したら、すごい喜んでくれた。
家族っていいなって思った。
さんざん食べて、少しお酒も飲んで。
コタツでみんなとみかん食べて。
夜までゆっくり過ごして、お酒が抜けてから車でマンションに帰った。
元旦の夜の街は静かで、遠回りしてオフィス街を通る。
いつも人で溢れてるオフィス街が、シーンと静まりかえって不思議だ。
お休みの日のオフィス街を歩くのが好きで、お正月はお昼にも歩いたりする。
ゴーストタウンって感じするじゃない。
それがさ、面白いの。
世界に俺しかいないのかもって思うあの感じが、寂しくてでも気楽で。
だけど
すぐに思い出すのはさとしのこと。
俺にとってあの人は、俺の生きる場所の全てで。
生きることの最大の目的でもあって。
あの人のいない世界で生きていけんのかな....なんて考えてしまう。
離れてたあの時だって、あなたの存在は確かに俺の中にあったし、手放すつもりなんて無かったから、あの人を失ったことなんて一度も無いんだ。
いつか
あの人を失うことがあったら。
俺、どうなるんだろう。
暗い道を走りながら思った。