玄関を入るとすぐにぎゅっと抱きしめられる。
眠いし、疲れてるし、お風呂も入りたいのに、やっぱり抱きしめられる安心感の方が勝ってしまう。
同じくらいの身長のさとしの肩に頬を乗せて、ふーっと息を吐く。
嵐の二宮和也から、ただの和也に戻る瞬間なのかもしれない。
「さとし、あけましておめでとうございます」
「んふふ。おめでとうございます」
「あけましては?」
「だめか?」
「いいですけど」
「んふ。なんで今?」
「ん、なんとなく」
「そっか」
「ん」
ただ、抱き合ったまま揺れて。
そんな事が幸せだと思う。
「中、入るか」
「うん。お風呂も入んないとね」
「一緒に入ろ」
「一緒に?」
「いやなんかよ」
「嫌なわけ無いでしょ?」
廊下を歩きながら話すのは、本当にどうでもいいような日常の話。
廊下の途中にある洗面所で手を洗って、うがいもする。
ついでにお風呂をざっとシャワーで流して、お湯張りボタンを押す。
居間で荷物を置いて、上着を脱いで寝室から2人の着替えを出してくる。
その間にさとしは冷蔵庫のビールを確認して、少し補充してくれたりしてて。
なんだろうね。
すごく幸せだと思ってて、ちょっと怖くなった。
2人でお風呂に入って、でも逆上せやすいさとしはあんまりゆっくりお湯には入ってられないから、先にあがる。
俺は腰のためにも冬はちゃんと温まることにしてるから、さとしより10分遅くなるかならないかって感じかな。
先に出たさとしはビールを飲んでテレビの前のラグでのんびりしてる。
まだ少し湿ってる髪の毛を「ドライヤーで乾かしなよ」って言うと「やってよ」って甘えてくるの。
俺って、この人に甘いよなぁって思いながら「しかたないなぁ」って言いながら乾かしてあげる。
したら俺の髪を触って「かずも濡れてる」って言うんだよね。
俺を開いた足の間に座らせて、ドライヤーを持って俺の髪を乾かしてくれる。
それから、乾いた俺の髪に顔を埋めるみたいにくっついてきて「いい匂い」って。
「さとしも同じ匂いでしょ」って言うと
「かずの方がいい匂いする」って。
しばらくそのまま過ごしてからビールを取ってきて、2人で乾杯する。
ぴったり腕がくっつく距離で座って、んふふって笑いあいながら飲んで。
ふっと目が合ったら、優しく唇が重なった。