ドームツアーの打ち合わせの合間、休憩に入ったところでスタジオの屋上に出た。
アルバムを渡されてから初めての5人の仕事が今日で、落ち着かないのはどうしようもなくて。
アナタと朝から何度も目が合うのは気のせいじゃ無いよね?
あの歌を聴いてから俺の気持ちはずっと波立ってて、もう諦めたはずなのに未練なのかな.....昔のアンタの夢を見ちゃったりして、こんなの俺らしくないじゃんなんて思う。
少しでも冷静になろうと屋上で風にあたる。
吹く風が前髪を舞いあげていく。
風の軌道が見えるような気がして、ソラを見上げた。
「ふぅーーー」
「何のため息?」
後ろから突然聞こえた声に、ビクッとしてしまったけど、その声の穏やかさに頬が緩む。
「潤くん.....」
「珍しいね、屋上来るとか」
「そう?」
「インドア派だろ?」
「まあね」
「で、何のため息?」
真んまるの大きな目がジーッと俺を見つめてる。
さっきまで空を見てたはずなのに、そんな風に真剣なかおで見られたら、俺どうしたらいいの?
困ったなぁって思ったら、またため息が出た。
「ふぅー」
「どうした?」
「んー、どうしたんでしょうね」
「なんだよそれ」
「俺にもよく分かんないんデスヨ」
「ん?」
「潤くんさー、ソロ聞いた?」
「聞いたよ」
当たり前のことを聞く俺に、怒りもしないで静かに返事をしてくれる。
潤くん、落ち着いてきたよね。
ちょっと前までピリピリ、イライラしてて、みんなを傷つけてるようで、本当は自分が1番傷ついて苦しそうな顔してた。
ある日、急にスッキリした顔しててびっくりしたんだよね。
自分でも何でか分かんないって言ってて、不思議そうな顔してたのが面白かったなぁ。
いわゆる反抗期の終わりだったんだよね。
それからの潤くんは周りをよく見てて、俺のこともよく心配してくれる。
だからかな.....ポロっと零れた言葉は、切なすぎて泣いちゃいそうだった。
「おーちゃんのこと忘れられないよ.....」
強い風が、言葉を攫っていった。