逃げだして自分の部屋で、電気も点けないままにソファーに膝を抱えて座る。
そん時、ピコンとなったスマホ。
見ると、昔からの仲良しからの『今日何してる?』の言葉。
なんにも考えずに『今から行っていい?』って返事をしたら『ええよ。どこにおるん?』だって。
家って答えたら、帰り道だから拾うわって迎えに来てくれて、メッセージを受信して10分も経たないうちに、家を後にした。
「ヒナ、ごめんね」
「何が?」
「いっつも、勝手で」
「お前は、そうゆう奴やろ」
「うん」
「気い使いのくせに、甘えれるやつには嫌っちゅうほど勝手やねん」
「うん」
「ええねん、それで」
「ありがと.....」
「それ、やめえ言うたやろ?」
「どれ?」
「その上目遣いで、人見るんやめ」
「あー、うん」
「おーちゃんも、大変やな」
ふっとため息をついたヒナを見ると、苦笑いしてる。
ヒナのマンションのエレベーターでぼそぼそと話す。ヒナの話じゃ、部屋にはヨコが来てるんだって。
映画のプロモーションで忙しいヨコが『久しぶりに一緒に鍋しようや。俺も相葉ちゃん誘うから』って、言うからニノにも声かけてんって、車の中で言われた。
相葉さん来るのはちょっと想定外だけど、メンバー以外の人の前で、さとしとのことを言ってくるわけないよねって思って、そのまま何も言わないことにした。
ヒナとヨコの関係はちょっと特殊で、ヒナの家の合鍵をヨコが持ってて、ヒナが落ち込んでる時とか、ヨコがちょっと1人になりたい時に来たりしてるらしい。
ヨコは弟達と住んでるから『落ち込んだ顔とか家で見せたくないらしいわ』って、いつだったかヒナが言ってた。
「ただいまあ」
「おじゃまします」
玄関で靴を脱いで、ペタペタと廊下を歩いてリビングの扉を開けると、味噌のいい匂いがする。
「おかえり。ニノも来れて良かったわ」
「うん。いい匂いしてる」
「腹減ったわ」
「こないだ言うてた米麹の味噌の鍋作ったで」
「おお、なんか、簡単言うてたな」
「そやねん。売ってる鍋の素みたいな味噌溶かして、野菜と鶏肉入れて火いつけて煮込むだけやねん」
「ええなあ」
「へえー」
「あー相葉ちゃん、なんか風間と約束してたらしくて、連れてくるって」
「そうか」
「へえー」
上着を脱いで、手洗いとうがいを済ませた俺は、ヒナの家のソファーでやっぱり膝を抱えて座った。