パタッと音がして、振り向いたらソファーの前のラグに座り込んださとしの頭がゆらゆらと揺れていた。だらんと床についた手の先には、俺の誕生日に出る本。
膝をついて顔を覗き込んだら、しっかり目を閉じて居眠りしてた。
久しぶりの俺の家で気が緩んでるとかだったら良いのにって、確かめようも無いこと思ったりしながらソファーにクッションを詰んで、首を痛めないようにゆっくり頭をもたれかけさせた。
少しだけ丸くなった顎のライン、相変わらずの童顔が眠ってると更に若く見える。
去年は真っ黒に日焼けしてたのに、いつの間にか普通の人の肌色に落ち着いてて、この人なりに準備してたのかな…なんて思う。
とりあえずお腹にだけ薄いブランケットを掛けておいて、空になったタンブラーを持って立ち上がった。
「かずなり」
少し掠れた声で名前を呼ばれてさとしを見たら、その目が俺を見上げてた。
「ちょっと飲み物用意してくるから。待ってて」
「ん」
音だけの返事をしながらまた目を閉じるけど、寝てるわけじゃないのは分かった。
ステンレスのタンブラーに氷を入れて、メンバー皆がお気に入りのウィスキーを注いだら炭酸で割る。最近はもっぱらこうやってハイボールばっかり飲んでる。やっぱりビールはお店で飲む方が美味しいんだよね。さとしも飲むかなってことで、もうひとつ同じものをつくる。
カラカラとなる氷の音を聞きながら隣に戻った。
「はい。コレで良い?」
「ん。あんがと」
俺からタンブラー受け取ってクイッと一口。
うめって小さく呟いた後、床に落ちた本を拾ってパラパラとめくってる。
「こないだの写真いっぱいの。あれ可愛かったぞ」
「何、急に」
「照れてんのか?耳真っ赤だぞ」
「うっさいよ」
「んで。これ…お前が詰まってるみたいな本だな」
文字だらけの本を手に、柔らかく話すさとし。
「まさきがどう思うかだっけ?分かってるだろ。『かずくんだもんね。可愛いよね』って言って頭グリグリされて終わりだな」
思い出し笑いしてるみたいに目が、唇が弧を描く。
メンバーにしか見せない顔。
優しくて、どこまでもどこまでも優しい顔。
本当はさ、ちょっとじゃなくて皆がどう思うか気になってたんだ。
そんな気持ちだって、この人は綺麗に拐って優しい色に変えてくれる。
「かずなりが和也らしくしてたら、それで良いよ。
二宮和也の顔もニノの顔も、全部俺たち見てきてるから。お前が何したって、何言ったって、底にあるものを知ってるしお前の事信じてんだから」
何も言えずに飲んでる俺の肩を抱く。
「嬉しいも楽しいも苦しいも悲しいも、悩んだりしても、俺も皆もお前が好きだよ」
酸素みたいに、言葉が脳に細胞に染みていく。
俺の感情、一切合切全部拐ってく。
さとしの、皆の、いつもの顔を見れば幸せが溢れる。
俺の大好きな4人と居るだけで。
「うん。知ってる」
たっぷり間をとって、それでも昔より素直になった俺の返事に、とびきり嬉しそうな顔をして、チュッとキスされた。
日付けが変わって緑のアプリの通知が次々くる。
まーくん、翔ちゃん、潤くん
なんでか隣のおじさんからも。
「証拠残しとかないとな」
って。何それ。
でも、ありがとう。
入ってきた後輩からのメッセージ見てちょっと不機嫌なさとし。尖る唇にキスしたら倍になって返ってきた。
今年はきっと一生忘れられない一年になる。
だから皆で笑ってようね。
沢山のキスを受けながら幸せな景色を思った。