おはようございます。

 

今朝も雲に覆われていますが、比較的明るく雲から青空も覗いています。

 

朝から長男の施設へ行ってこようと思います。

 

 

6回目の手術

 

 事故から既に1年2か月余りを経過していた9月6日(月)、私はアキラの手術に立ち会うために嘱託の仕事を休むことにしていた。

 

 朝から妻とともに銀行などで所定の用件を済ませ、その足で病院へ向かって、12時頃に着いた。

 

彼の病室は、今度は右手の一番奥まった所にあり、今回も幸いに窓際のベッドだった。正面は空きベッドで、隣と対角線のベッドには若い人たちが入っていた。

 

2月前と同じように、2人は外見だけではそれほど大きな怪我があるようには見えなかった。隣の青年は車椅子を操っていた。

 

 間もなくして、アキラが昨夜の地震のことに触れた。

「夕べの地震はどうやった? よう揺れたでー」

「そうやな。よう揺れたな。お父さんは丁度、ベッドで新聞を読んどる時やったな」

「まだ、起きとったん?」

「うん。ベッドに入って直ぐやったんや。お母さんはまだ下におったしな」

 

すると、この4月から勤め始めたという前川看護師が入って来て、アキラに体温を計るように求め、脈をとった。

 

私は彼女に尋ねた。

「手術は予定通りですね?」

「はい。1時からです。また、10分か15分ほど前に迎えに来ますので、用意をしておいてください」

と、彼女は気持ちよく受け答えをした。

 

するとアキラが尋ねた。

「下も取っておくの?」

「はい。全部取っておいてください」

「スッポンポンやな」

と私が言ったが、彼は一向に意に介さない風だった。

 

以前なら、そういうことを言うととても敏感だった彼も、長い入院生活でかなり慣れたのかもしれない。

 

 やがて1時12、3分前になって、前川看護師が入って来た。アキラは既に小便も済ませ、下着なども全て取って手術着になっていた。

 

 私たちは何時ものようにアキラが横たわるベッドとともに、患者用のエレベータで4階まで下り、手術室の入り口の前で、それぞれに激励の言葉をかけて彼を見送った。

 

 事前に聞いていた話では、手術に要する時間は2時間ほどだった。私たちは手術を待つ時間を利用して、地下のレストランへ行って昼食を摂った。再び4階へ戻って、待合室で手術が終わるのを待った。

 

 アキラが手術室に入ってから2時間45分が経過した3時45分になって手術着姿の主治医が扉の奥から出て来るのが見えた。

 

私は小走りで彼の方へ駆け寄り、

「先生、どうもお疲れ様でした」

と声をかけると、彼は

「主治医の上畑です」

と、改めて自己紹介をされた。

 

「ありがとうございました」

「最初、親指の所だけと思っていたのですが、他の指も硬くなっていましたので、そこの筋も伸ばす手術をして、一応軟らかくして、足の曲がったのを真っ直ぐにして、足首の所を直角にするようにギプスをしました。一応所期の目的は達しました」

 

「ありがとうございます。お疲れ様でございました」

「あと、4週間ほどギプスをして、その後、また足首が硬くなりますから、リハビリをする必要があります。後10分か20分ほどで出て来られますから」

 

「ありがとうございます。今後ともよろしくお願い致します」

と、傍でやりとりを聞いていた妻とともに頭を下げて、私たちは口々に「良かったね」と喜び合った。

  (つづく)

 

読んでいただきありがとうございます。