自己実現的な円高期待が定着。現在の円高ではデフレを克服することは極めて難しい(岩田元日銀副総裁) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

自己実現的な円高期待が定着。現在の円高ではデフレを克服することは極めて難しい(岩田元日銀副総裁)

秘書です。
岩田一政・元日銀副総裁は、日銀は追加緩和が必要、と、以下のように語りました。

基調的なインフレを判断するには、食料とエネルギーを除いた連鎖方式のCPI上昇率で見るべき

物価動向についても、円高の継続や4%を超える失業率などを踏まえると、日銀が事実上の目標に掲げる消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率1%には「だいぶ距離がある」と指摘

今の(1ドル=)78円という為替レートは円高が行き過ぎている

自己実現的な円高期待が定着してしまっている。現在の円高ではデフレを克服することは極めて難しい



インタビュー:日銀は追加緩和必要=岩田元副総裁
2012年 09月 4日 09:54 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE88300I20120904?sp=true

[東京 4日 ロイター] 岩田一政・日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)は、世界経済の減速を背景に日本経済の下振れリスクが強まっているとし、日銀はさらなる金融緩和が必要になるとの見解を示した。具体策として、世界的な金融危機の予防と円高是正を目的とした外債購入や、資産買入基金で買い入れている国債の年限長期化が有効と語った。
インタビューは3日に実施した。

<世界経済に下方リスク、CPI1%に「だいぶ距離」>

岩田氏は世界経済について、減速が明確になっており、債務問題に直面しているユーロ圏は「景気後退に入っている」と分析。米国は2%程度の緩やかな回復過程にあるが、中国は在庫の積み上がりが顕著となるなど「8%を切る成長が続きそうだ」とし、世界経済全体に「下方リスクが強まっている」と述べた。

こうした中で日本経済は、輸出や生産の鈍化が避けられないことに加え、エコカー補助金など政策効果の息切れで、これまで堅調だった消費も伸び悩む可能性が大きいとみる。震災からの復興需要に伴う公共投資が引き続き下支えになるものの、日本経済は「下振れリスクの方が大きくなっている」と懸念を示した。

物価動向についても、円高の継続や4%を超える失業率などを踏まえると、日銀が事実上の目標に掲げる消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率1%には「だいぶ距離がある」と指摘。基調的なインフレを判断するには、食料とエネルギーを除いた連鎖方式のCPI上昇率で見るべきとし、自身が副総裁を務めていた2006年3月の量的緩和政策の解除を振り返り、「当時は生鮮食品だけを除いたコアCPIで見ていた。仮に(当時の判断に)誤りがあったとすれば、どのような数字を重視してデフレ脱却とみるか、そこから考えなければいけない」と語った。直近に発表された7月の全国消費者物価指数では、コアが前年比マイナス0.3%に対し、連鎖方式による食料とエネルギーを除いたはベースは同マイナス0.7%となっている。

<FRB追加緩和、QE3と時間軸強化の合わせ技も>

また、世界経済の下振れリスクが強まる中で、欧米の中央銀行が近く一段の金融緩和措置に踏み切ると予想。欧州中銀(ECB)のドラギ総裁は、流通市場でのイタリア、スペイン国債の買い入れに向けた準備を進めていることをすでに表明しているが、岩田氏は9月6日のECB理事会において「(国債買い入れの)具体的なアウトラインを示すだろう」と予想。米連邦準備理事会(FRB)も高水準の失業率が続く中で、9月12─13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)において、量的緩和第3弾(QE3)と経済指標を用いた時間軸政策の強化などを「合わせ技で実施してくる可能性もある」とみている。このように欧米中銀が緩和策を相次いで打ち出してくれば、 「国内経済の下振れリスクが大きくなっている中で、日銀もさらなる金融緩和が必要になるだろう」と展望した。現在、残存期間1─3年となっている資産買入基金による長期国債の買い入れ対象年限を長期化させ、ポートフォリオ・リバランス効果を追求する必要性や、外債購入を具体策に挙げた。

<IMF・世銀総会で国際金融システム安定策の提言を>
外債購入について岩田氏は、昨年10月の国家戦略会議(議長:野田佳彦首相)で、円高是正に向けて50兆円規模の「金融危機予防基金」を創設し、日銀が円で外債を購入する仕組みを提案している。岩田氏は現在も「今の(1ドル=)78円という為替レートは円高が行き過ぎている」とし、輸出市場における日本のシェア低下に危機感を表明するとともに、「自己実現的な円高期待が定着してしまっている。現在の円高ではデフレを克服することは極めて難しい」と主張。金融危機予防基金による50兆円規模の外債購入は、欧州問題を背景とした「グローバルな金融危機」の予防策と位置づけ、国際通貨基金(IMF)の資金基盤の倍増や、金融危機の予防策を議論する専門委員会のIMF内への設置も提案。IMFがSDR(特別引出権)建ての債券を発行し、国際金融システム安定のための資金を調達できるようにする仕組みなども含め、「国際金融システムの安定と同時に日本の利益にもなる」方策として、10月に東京で開催されるIMF・世銀総会で日本政府が積極的に提案すべきだ、と訴えた。

(ロイターニュース 伊藤純夫 木原麗花)