防衛白書がいう軍と共産党との関係変化の読みとり方 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

防衛白書がいう軍と共産党との関係変化の読みとり方

秘書です。
防衛白書29頁の記述より。

http://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2012/2012/pdf/24010103.pdf

「また、近年では、軍事力近代化にともなう軍の専門化の進展や任務の多様化など軍を取り巻く環境が大きく変化してきている中で、共産党指導部と人民解放軍との関係が複雑化しているとの見方や、対外政策決定における軍の影響力が変化しているとの見方※もあり、こうした状況については危機管理上の課題としても注目される。

※たとえば、国家主権や海洋権益などをめぐる安全保障上の課題に関して、人民解放軍が態度を表明する場面が近年増加しているとの指摘がある。一方、中国共産党の主要な意思決定機関における人民解放軍の代表者数は過去に比べて減少していることから、党の意思決定プロセスにおける軍の関与は限定的であるとの指摘もある。なお、人民解放軍は「党による軍隊の絶対指導」を繰り返し強調している。

防衛白書本文の「共産党指導部と人民解放軍との関係が複雑化しているとの見方」や「対外政策決定における軍の影響力が変化しているとの見方」とは何か。

注をみると、

①国家主権や海洋権益などをめぐる安全保障上の課題に関して、人民解放軍が態度を表明する場面が近年増加しているとの指摘

②中国共産党の主要な意思決定機関における人民解放軍の代表者数は過去に比べて減少していることから、党の意思決定プロセスにおける軍の関与は限定的であるとの指摘

の2つであることが読みとれます。2つの指摘は「一方」でつながれていますが、もしも、この2つの指摘が同一の現象を異なる側面から見ている指摘と仮定すると、一つの解釈として、中国の経済発展に伴い、党は様々な社会勢力の声をとりいれざるをえず、軍だけを代表することができなくなり、結果として、軍は独自の利益を社会全体に対して意思表明し理解と支持を求めざるをえなくなっているといえるかもしれません。

だからこそ、そのような環境下で軍は予算獲得のために対外的な摩擦を強調する行為に出るのではないか?特に、経済成長率が屈折してすべての社会勢力の要求を財政支出で満たすことができなくなったとき、財政支出の優先順位をつけなければならなくなり、軍事予算を優先するのか非軍事予算を優先するのかの選択が迫られることになり、そのときに軍は権益確保のために対外的な摩擦を強調するのではないか?そこに、危機管理上の課題がある、ということでしょうか。

いずれにしても、中国内政分析が日本の危機管理の観点から重要だということになります。