中央銀行がその気になって国債を買えば、かならずインフレにできるということを証明した背理法 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

中央銀行がその気になって国債を買えば、かならずインフレにできるということを証明した背理法

秘書です。

「中央銀行はデフレからインフレにすることはできない」(※下記の2012年2月14日付け日銀総裁記者会見要旨参照)

これを背理法で論破するとすれば、

中央銀行がその気になって国債を買いまくれば、かならずインフレにできるということを証明したものである。中央銀行が世の中の国債をすべて買い入れてもインフレにならないのなら、簡単に財政再建ができてしまう。これはおかしい。だから必ずインフレになるという論法だ

ということになるのでしょうか?

そういうと、いや、ハイパーインフレになる、と反論するのでしょう。そうすると、国債を買って物価の安定を維持できないのはなぜ?となってきますね。

背理法についての高橋洋一さんの記事より。


※日本銀行総裁記者会見要旨
―― 2012年2月14日(火)
午後3時半から約1時間
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1202b.pdf
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(問) ・・・1点目は、先般のFRBの発表では、「物価上昇率は、長期的には主に金融政策によって決定される」という声明が出されていますが、この点について、日銀ないし白川総裁はどのように考えているかお教え下さい。・・・

(答) ・・・長期的には金融政策で決まってくるという命題についてどう考えるのかという問いですが、これは、色々な考え方がもちろんあり得ると思います。大学の講義ではありませんので、そういう話をするのもどうかなと思いますが、非常にインフレ率が高い時にインフレを抑制していくということ、これは、景気への影響等を無視すれば、強力に金融引締めをやればインフレ率が下がっていくということで、そういう意味では、究極的、最終的に、金融政策が物価を決定していく、それはその通りだと思います。
また、米国の1930年代のように、中央銀行が最後の貸し手として積極的に行動しなかった結果、金融が大きく縮小する場合には、経済活動を大きく縮小させ、その結果、当時のアメリカは、物価が確か3割ぐらい下落しました。そういう意味で、金融政策、あるいは中央銀行の行動が、物価の長期的な経路を決めていく上で非常に重要であることは、私はそうだと思っています。
しかし、現在問われている問題は、今の日本経済、物価の上昇率が概ねゼロ近傍という世界で、中央銀行がお金の量を供給することだけで直ちに物価上昇率がゼロから1%、1%から2%へ上がっていくかという問いであるとすれば、それは必ずしもそうではないと思います。先程申し上げた、日本経済が直面している様々な構造的な問題、これらへの取組みが必要であると思います。これは決して中央銀行の役割が小さいということではなく、むしろ、中央銀行の役割はしっかりあると思っていますが、成長力を引き上げていく努力と、それを支える金融面の支援、その両方が相俟って、デフレからの脱却は実現していくものだと考えています。
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“3年財政破綻説”のインチキぶり喝破!
2012.06.20 zakzak 高橋洋一さん
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20120620/plt1206200732004-n1.htm

 「背理(はいり)法」をご存じだろうか。高校時代に数学の授業で習ったといえば名前ぐらい覚えているだろう。

 ある事柄を否定するために、その事柄を仮定した際に矛盾が起きることを示すものだ。矛盾が起きるのはある事柄を仮定したからであり、その事柄自体がありえないという話になるという証明の手法である。

 ある事柄を前提として話を進めてとんでもない矛盾を導き出して、次の瞬間に一転して全面的に否定する。土俵際のうっちゃりのようなものだ。

 今月13日に開かれた衆議院社会保障と税の一体改革特別委員会の公聴会で、筆者はこの背理法を使って、日本の財政状況は危機的である(例えば3年で日本の財政は破綻する)ことを否定した。

 現在、日本国債のCDS値(破綻に備える保険料のようなもの)は約1%。“3年財政破綻説”が正しいと信じているなら、1%の保険料を3年分、合計3%払えば、財政破綻の際に“保険料”が100%入る。確実に33倍になる投資法が存在することになる。

 もちろん「確実に33倍になる投資法が存在する」のはおかしい。ということは、「3年以内の破綻」という前提がありえないというのが背理法のロジックだ。

 この背理法発言は“3年財政破綻説”を妄信していたマスコミや御用学者にとって衝撃的だったようだ。ツイッターではCDSのデータを紹介した筆者への人格攻撃も多かったが、お門違いで、批判するなら「マーケットが間違っている」と言うべきだ。

 3年以内の財政破綻を唱える人には、大した根拠もなく印象論の人が多いが、そのくせ「33倍投資法」を実践していないのはきわめて不思議だ。自説が正しくないことを自覚しているのか、ただ単に財政当局のプロパガンダをうのみにしているだけだろう。

 背理法は数学でよく用いられるが、他の分野では珍しい。ただ、バーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長も、学者時代の1999年に「日本の金融政策は自分でマヒに陥ってしまったのでは?」というちょっと面白いタイトルの論文で背理法を使っている。

 その中で、日本の一部の人々が「バーナンキの背理法」と呼ぶ一説がある。これは、中央銀行がその気になって国債を買いまくれば、かならずインフレにできるということを証明したものである。中央銀行が世の中の国債をすべて買い入れてもインフレにならないのなら、簡単に財政再建ができてしまう。これはおかしい。だから必ずインフレになるという論法だ。   

 筆者がかつてバーナンキ氏に「日本では“バーナンキの~”と形容詞が付いている」と話すと「普通の論法に個人名をつけるのはおかしい」と言われた。

 この背理法での難点は、いつインフレになるのか、そのために必要な国債買いオペ額を特定できないことだ。その点も聞いたことがあるが、「洋一、それは君が得意な分野だろ」とかわされてしまった。

 読者の皆さんも背理法を使って、世間に流布しているウソを見破ってみよう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)