スペインはユーロ圏からの離脱ではなく、衰退に向かう可能性の方が高い(ロイター) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

スペインはユーロ圏からの離脱ではなく、衰退に向かう可能性の方が高い(ロイター)

秘書です。
スペインはどうか?
下記の記事によると、スペインはユーロにとどまり(=通貨高を容認し)衰退に向かうと。そして中央と地方の確執がはじまる。日本ではどうなるか?


スペインはユーロ圏離脱せずに衰退の可能性、深まる地方との確執
2012年 05月 14日 15:12 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE84D03820120514?sp=true

[バルセロナ 12日 ロイター] スペインでは財政緊縮策と銀行救済に対する抗議活動が勢いを増しているが、銀行救済コストが最も悲観的な予想に沿った水準に達しない限り、スペインはユーロ圏からの離脱ではなく、衰退に向かう可能性の方が高い

ギリシャの場合は、国際支援の条件を順守する新政権が発足しなければ、突如として輸入代金の支払いにさえ困る恐れがある。しかしスペインは、潜在的にじわじわと人心が荒廃するという、ユーロ圏債務危機を取り巻く全般的な特徴に近いユーロ圏各国では緊縮策により政治家が信任を失い、経済の失策で社会構造がほころびを来している

バルセロナ商業会議所の経済研究責任者、ホアン・ラモン・ロビラ氏は「問題は社会的なもの。失業率が25%に達している時に何ができるだろう。劇的な状況だ」と話す。

カタルーニャ州の州都バルセロナでは病室が閉鎖され、学校の1クラス当たりの生徒数は増え、大学の授業料は上昇している。

この結果、人々の態度は硬化し、さまざまな団体が既得権益を守ろうと訴えている。カタルーニャ州の独立を支持する人々は、中央政府への資金拠出をますます嫌がるようになり、中央との政治対立が高まってきた。

カタルーニャ州のアルトゥール・マス知事の報道官は「スペインはわれわれにとって重過ぎて背負い続けられない荷物だ。わが州の発展が犠牲になっている」と述べた。

<輸出は増加、住宅価格は下落>

バルセロナ商業会議所のロビラ氏は、カタルーニャ州の輸出が順調に伸びているとし、スペインの危機乗り切りを楽観視している。

スペインの輸出は昨年11%増加した。ユーロ発足後の賃金高騰で失われた競争力を徐々に回復した結果だ。政府の予想では、2007年に10%でピークをつけた国内総生産(GDP)経常赤字比率はことし、1%を割り込む見通しだ。

コメルツバンク(フランクフルト)のチーフエコノミスト、ヨルグ・クレーマー氏は、危機に先立って起こった相対的労働コスト悪化の半分を取り返したと推計。最近の改革で賃金と労働契約が柔軟性を増したため、改善傾向は続くとみている。

対外的な経済不均衡是正が進展しているのとは対照的に、国債利回りの上昇により財政赤字の削減は遅れている。

スペインの銀行が抱える不動産関連の不良債権は1800億ユーロを超え、景気後退により企業向け融資や住宅ローンの貸し倒れが増えれば、事態はさらに悪化すると恐れられている。

スペイン政府は大手銀行のバンキア(BKIA.MC: 株価, 企業情報, レポート)を実質国有化したのに続き、11日には国内銀行に合計300億ユーロの貸倒引当金積み増しを命じ、投資家の信頼回復に努めた。しかし金融市場は納得していない。

独立系エコノミストのエドワード・ヒュー氏は、政府の取り組みが遅すぎたとし、銀行の不良債権処理はまだ終わらないと予想。「一番の問題は、不動産価格がどこで下げ止まるかだ。それが分かるまで(最終的な処理額は)すべて当て推量に過ぎない」と言う。

住宅価格は2007年以来、約25%下落した。11日公表のロイター調査によると、2012─13年中にさらに15%以上の下落が予想されている。

モルガン・スタンレーの基本シナリオでは、スペインの銀行の資本不足額は250億ユーロ。ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドは向こう3年間で680億ユーロに達すると予想している。

ルービニ・グローバル・エコノミクスは、損失額が1300億ユーロから3000億ユーロの範囲に及ぶと予想。60%の確率で、スペインは2015年に救済と債務再編が必要になるとみている。

しかしある地方銀行のチーフエコノミストは、スペインの景気後退が数年続くと想定しない限り、市場が要求する貸倒引当金の積み増し額は疑わしいと指摘。「信頼性を回復し、われわれの社債のリスクプレミアムを減らすのに必要なら、(貸倒引当金積み増しを)やらざるを得ないのだろう。しかし市場は行き過ぎていると思う」と述べた。

<地方政府との確執>

JPモルガンによると、昨年のスペインの一般政府財政赤字は対GDP比8.5%で、このうち55%を地方政府の赤字が占めた。中央政府は地方政府が支出を抑制しない場合、予算を直接管理する可能性を盛り込む新法を可決した。

しかしバルセロナから見ると、ことはそう単純ではない。

カタルーニャ州やその他の地域は、公共サービスの管理に責任を負っているが、大半の規制や課税・支出の権限を握るのは中央政府だ。景気の厳しい時期には、これが摩擦の火種になる。税収は激減するが、医療・教育支出への需要は増大する

この結果として、バルセロナはたびたび中央政府に資金不足の穴埋めを懇願するはめになる。カタルーニャ州はスペインで最も富裕な地域で、毎年GDPの8%以上に当たる税収を中央政府に拠出しているにもかかわらずだ。

その上、カタルーニャの中道右派与党、カタルーニャ同盟(CiU)の主張では、中央政府は権力の中央集中とカタルーニャ州の抑圧を目的に、約束した投資資金を棚上げにしている。

カタルーニャ州のアンドレウ・マス・コレル経済相は「われわれはスペインが危機にあり、改革が必要だということは分かっている。全員が1つのボートに乗っているのだ。いら立たしいのは、わが州の自治権を制限したり、過去の約束を反故にする機会として、危機が利用されていることだ」と語った。

カタルーニャ州は自治権拡大に結び付く新たな財政合意の交渉を望んでいるが、債務が州GDPの22%に近づいているため、政治力が弱まっているようだ。

同州は医療支出や地方公務員給与の削減など、追加的な財政支出削減策に取り組んでいる。経済相は「われわれは危ない橋を渡っているが、有権者は厳しい状況を理解してくれるはずだ」と述べた。

<不公平感>

バルセロナでの会話からは、人々が緊縮策の必要性を理解していることがうかがえる。重要なのは、スペインでは家族の絆が強く失業時のセーフティーネット的な役割を果たしていることだ。それでも犠牲の負担が公平ではないと感じられている

社会学者として働くフェリペ・アラングレンさん(59歳)は「腐り切った」国内銀行に怒りをぶつけ、富裕者の課税を増やし、資金を公共事業に投じるべきだと訴える。

ただアラングレンさんは、ユーロを離脱してもスペインの苦境は収まらないと指摘。「経済的な事はすべてブリュッセルで決まるため、スペインはなすすべがない。しかしユーロを離脱しても、問題がまた一つ増えるだけだ」と語った。

(Alan Wheatley記者)