【金融機関の守秘義務】本人の家族等からの契約内容の照会 | なか2656のブログ

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 保険会社などの金融機関が、保険契約などを締結している本人の家族などからその契約内容の問い合わせ(照会)を受けることはよくあります。この場合、金融機関がこの本人以外の者に対して契約内容などを回答してよいかどうかが問題となります。

 

 この点問題となるのは、金融機関が負っている守秘義務についてです。守秘義務とは、金融機関が負う「顧客との取引内容に関する情報や顧客との取引に関して得た顧客の信用にかかわる情報などの顧客情報をみだりに外部に漏らすことは許されない」という義務のことです(最高裁平成191211日判決)。そしてこの守秘義務は道徳的な義務ではなく法的な義務(商慣習または契約に付随する義務)であるため、万一、金融機関がこの義務を怠り、顧客に損害を与えた場合は、金融機関は顧客に対して損害賠償責任を負うことになります(民法415条、709条)。

 

 そのため、保険会社などの金融機関が本人の家族などから契約内容などの照会を受けた場合、金融機関は本人に対して守秘義務を負うので、家族などに対しては契約内容などの回答をしてはいけません。

 

 法的な問題はおくとしても、保険契約などはたとえ家族であっても一方の配偶者が他方の配偶者に対して秘密で保険に加入することはよくあります。そのため、保険会社が本人に無断で他方の配偶者などの家族に契約内容を知らせてしまった結果、本人から「どうして家族に契約内容を教えたのか。家族には内緒にしていたのに。」といった趣旨のクレームに発展してしまうことがしばしばあります。

 

 そこで、保険会社などの金融機関としては、たとえば本人が事故などで思い傷病などを患い病院に入院しているなどの例外的な場合を除いては、家族などからの照会には回答すべきではありません。

 

 本人が多忙で金融機関の支社などの窓口に来店できない等の事情がある場合は、本人に署名・押印してもらった委任状を家族に持ってきていただくべきです。また、電話による照会は、本人確認が難しいことがあるので、金融機関のほうから契約内容に記録された電話番号に電話をかけ直すなどの対応も有効です。

 

<参考>

・神田秀樹など『銀行窓口の法務対策3800講Ⅰ』176
・野村修也など『事例で学ぶ生命保険コンプライアンス実践講座2』
90頁 
・「ケーススタディ 金融機関の守秘義務」『金融法務事情』1802号7頁


銀行窓口の法務対策4500講 I コンプライアンス・取引の相手方・預金・金融商品編



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