検察官の客観義務 | なか2656のブログ

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大阪地検特捜部の証拠改ざん事件に関して、12日に

元主任検事を実刑とする判決がだされましたが、

21日の新聞記事によると、検察・被告側が控訴しない

方針を固め、実刑判決が確定するとのことです。


この12日の判決文は、朝日新聞の記事によると「村木

元局長の無罪を示す証拠となり得るFDが元局長らの

公判に持ち出されて紛糾することなどを恐れて改ざん

しており、有罪立証の妨げになる「消極証拠」とも誠実

に向き合わなければならない検事の行為としては常軌

を逸したものだったと非難」したとされています。


そもそも憲法は戦前の特高などの深い反省を踏まえ、
被告人は「公平」で迅速な裁判を受ける権利を持ち(37

条1項)、その手続きは適切な手続きにのったもので

なければならない(31条)として、31条から40条にも

およぶ厳格な規定を置いています。

そしてそれを踏まえて刑事訴訟法は、刑事事件につき、

「事案の真相を明らか」にすることとともに「個人の基本

的人権の保障」をすることが目的であると定めてい

ます(刑訴1条)。


このような戦後の憲法・刑事訴訟法において、検察官

は刑事訴訟において原告(訴追者)の役割を務める

だけでなく、訴追官として「公訴を行」うにあたり、裁判

所に「法の正当な適用を請求」するという精神を堅持す

る必要性があるとされています(検察庁法4条)。

したがって、検察官は単に有罪を請求するだけが任務

でなく、訴訟の経緯がそう要求する場合には、無罪と

なっても十分その職責を果たしたことになるとされて

います。

このような、被告人の有罪を請求するだけでなく、法と

正義の実現を目指して公平・公正たるべきとの検察官

の職務規範を、「検察官の客観義務」と呼びます(田宮

裕『刑事訴訟法〔新版〕』24頁)。


今回の有罪判決が元検事を厳しく糾弾して実刑判決を

科している理由の一つは、この検察官の客観義務に、

元検事が大きく反しているからであると思われます。

刑事訴訟法/田宮 裕
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