病院へ戻ると夫は病棟に移動しており
直径1cm強の管を鼻から入れられていました
ほどなく主治医が来て

「イレウス管を入れたのでしばらくこれで様子を見ましょう」と言われましたが
「イレウスって何ですか?これは何をしてるんですか?」
「腸閉塞です。これはお腹に溜まった詰まったものを管で排出します」
「腹水じゃなかったんですね?良かった」
「でも腸閉塞じゃかなり痛かったんじゃないの?」
「かなり痛かったと思いますよ」
「何で言わないかな?」
「いや・・・薬の副作用だと思って」
「全然!素人目に見てもおかしいのわかるよ」
「奥さんの勘は間違ってなかったです」
「そんな事言われても」

毎日面会には行くけど変化はなく1週間位した頃
主治医に呼び出されました。
「イレウス管入れてますが、なかなかお腹の張りが取れないですし
本人も相当苦しいと思います。開腹手術をしたいのですが」
「はいお願いします」
「手術室の調整もあるので4日後でどうですか?」
「お任せします」
その間夫は「手術したらこれ抜けます?」と言っただけでした

手術の日
「まぁ頑張ってらっしゃい」
「ありがと」 夫から初めて聞いたありがとうでした
予定の3時間を過ぎても手術は終わらず
『開腹手術すれば閉塞も治るし大事にならなくて良かった』と
呑気だった私もさすがに心配になってきました。

手術後私だけが呼ばれ
取った拳二つ分くらいの塊を見せられながら
「閉塞は取りました」

「ありがとうございます 良かった」笑顔が出た私に続けて

「奥さん、癌が見つかりました これが(と白い塊を指し)そうなんですが

お腹の中でかなり大きくなっていて米粒をまき散らすように
小さな細胞がお腹に広がってるので全て取り切るのは無理です」

「癌ですか?治らないんですか?」

「ステージ4です」

素人にもわかる言葉ステージ4

「それって良くないですよね?どれくらい生きられるんですか?」

「わかりません」

「同じような患者さんだとどうなんですか?」

「平均27か月 これはすごく状態の良い人どうにもならない人も含めた数字なので、これより長いかもしれない 短いかもしれない 僕にもわかりません」

「えっと・・・夫に話すかちょっと考えさせて下さい」

「今は告知をするのが一般的です」

「え?」

「今はインターネットも普及していて隠してもすぐにバレます
隠すと患者さんに不信感を持たれて治療の妨げになるんです」

「そうですか・・・」

「僕から話しましょうか?」

「お願いします すみません・・・」