こんにちは。


前回はここ1か月のうちに読んだ小説について触れましたが、今回はこの1年を振り返り心に響いた作品3冊を挙げてみたいと思います。


⚫︎「同志少女よ敵を撃て」

(逢坂冬馬著・早川書房)

今年ベストセラーになった作品ですが、圧倒的な真実味を帯びて読む者を魅了しました。


それは何といっても、2月24日に開始されたウクライナ侵攻がこの作品が単なるフィクションに思えないことを証明したからでした。


題材とされたのはかつての「独ソ戦」でしたが、この作品の中で描かれたロシアとウクライナの状況は現在の両国関係を示唆するものでした。


⚫︎「スタッフロール」

(深緑野分著・文藝春秋)

生来の映画好きには、楽しくてたまらないストーリー展開でした。


代表作「ベルリンは晴れているか」での戦争時の精緻な描写には驚きましたが、この作品でもクリエーターの専門的領域に深く入り込んで描かれています。


アナログからデジタルに、表現方法は進化しても映画を愛する気持ちが変わらない限り、映画館からスクリーンが消えることはないと確信しました。


⚫︎「塞王の楯」

(今村翔吾著・集英社)

直木賞受賞作ですので、作品の高い評価は当然なのですが、何といっても登場人物の圧倒的な存在感に脱帽です。


今村さんの作品はいつもそうなのですが、この作品でも城の石垣を造る職人にあたかも筆者自身が乗り移ったかのような迫力を感じます。


今村さん自身は、今年全国の書店や学校をめぐるキャラバン活動により、本の文化を絶やさない運動に尽力されました。


作品に現れる迫力はおそらくそうした行動力から生み出されているのだと思います。


今年もいろいろな作品に出会いましたが、長編小説に「タイパ」は通用しません。


1頁1頁に結末につながる要素(ヒント)が埋め込まれていると思うと、丹念に活字を追ってしまい、時間がかかってしまいます。


本当はもっと多くの小説を読みたいと思うのですが、こんな読み方をしていると、長編だと年間20冊くらいが限度です。


それだけにどの本を読むか決めるときには、勇気決断が求められます。でもそれが読書の醍醐味の一つなのかもしれません。



今回もここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。次回もまたアクセスしてください。


  


どの作品も心に響きます