一度も乗ったことがない鉄道系の


広告代理店の2次試験はプレゼンテーション。





「あなたが広告代理店でしてみたいこと」






どれだけ広告に対して情熱を持っているのかがわかる。


志望動機をちゃんと書いている人なら、


志望動機を利用してプレゼンをすればいいだけ。




志望動機にもいろいろあるけど、


「具体的にその会社でしたいこと」を書くのが一番わかりやすい。


その会社でしかできないことなら、なおさら説得力がある。




さらに僕はその代理店の強みを生かしたアイデアを考えてきた。





会場には学生が5人、人事の人が2人。


人事の人から説明がある。




「プレゼンテーションの持ち時間は5分。発表の順番はくじ引きで決めていただきます。なお、最後に投票用紙を配ります。自分以外の方のプレゼンテーションを聞いていただき、1番良かった人、2番目に良かった人を投票していただきます。」




今までにない方法だった。


それを聞いた途端、誰もが周りの人を見て、


警戒していたように思えた。




くじ引きの結果、僕は一番最後の発表になる。




1人目の男子学生はお笑い芸人の


「いつもここから」のように画用紙にアイデアを書いてきた。


絵は結構上手だったが、アイデアはたいしたことがなかった。




アイデアは駅の看板を全てジャックし、


商品やタレントの表情を変えたりして、見せていくというもの。


パラパラ漫画に近いかもしれない。





しかし、全駅を使ってやる意味がわからなかった。




何よりも気がつかないかもしれまない。


地下鉄で同じような手法で


CMが見せられる広告があり、明らかにリサーチ不足。


それを自信満々にプレゼンしているのが滑稽に思えた。





あらかじめ「準備」を欠かさないようにすることが大切だ。





しかし、他3人のプレゼンを聞いたけど、一番良かったのは彼だった。


他の3人で印象に残っていたのは「広告代理店でしたいこと」よりも、




「チアリーディングで全国で優勝したことがある。」



「芸大出身で絵がお上手」




ぐらいだった。




芸大出身の人は自分の作品集をみんなに手渡していた。


しかし、作品の方に集中してしまい、


誰もその人の話はほとんど聞いていなかった。





プレゼンでは必要最低限ものしか配らないようにした方が良い。





そして、自分の番。


毎回、プレゼンをする度に少し足が震えていた。


悟られないように必死で堪えようとしている。




芸大出身の人は違い、


僕が配ったものはワードで作成したレジェメ1枚。


内容は自己PRと志望動機をまとめたもの。




ただやりたいことを述べても説得力がないので、


あえて自己PRも少しだけ加えた。


志望動機はその代理店用に修正をしたもの。




まずは無難に自己PR。


いつもどおりアイデア力があることをアピール。



「私は学生時代、キャッチコピーのコンテスト・携帯電話のコンテストでグランプリを受賞しました。その発想力を生かし、入社してしたいことを2点します。」




あえて、どういうアイデアで賞をとったのかは触れなかった。


あとで「質問時間」を設けて、活発なプレゼンテーションにするためだ。



「1つは電車の日よけのブラインドに広告を掲載することです。ブラインドは日差しを避けるために使用するもので、そんな時消費者は「暑い」と思っていると思います。そんな暑い時に欲しくなるものを広告すれば効果が高まるのではないでしょうか?例えば、アイスやビールなど。ブラインドの色はどの電車も灰色で重い感じがするので、アイスやビールの広告のようなさわやかな色を使うことによって、電車の広告自体の印象も良くなるのではないかと考えております。」




学生も人事の人も「うなづき君」だった。


「うなづき君」とはプレゼンテーションの時に


よくうなづている人のことを勝手にそう読んでいた。


その光景を見て自信がつき、足の震えはとまる。




「次に提案したいものはホームを利用した広告。よく、電車を待っているときに3ドアか4ドアかチェックすることはしませんか?必ず、ホームにある「3ドア」「4ドア」のマークを確認するはずです。」




少しわかりづらいので手で四角形を描き、


それを「ホーム」に例え、説明をした。





「そこで、そのマークのとなりに広告を掲載します。たまに「3ドア」と「4ドア」のマークが隣同士になっている場合がありますがそのときは広告を真ん中に挟みます。強制的に見せる広告です。以上が私の提案です。」




自分で言うのもなんだけど、


この5人の中では一番だったと思う。


そして、最後に予定していた通りの言葉を話す。




「何か質問はありますでしょうか?」





案の定、コンテストで


どういうアイデアを出したのかを聞いてくる。


いつもの面接のようにそつなく答えて、時間終了。





全員のプレゼンテーションが終わると投票用紙に書き込む。




投票用紙には選定理由まで書き込む欄があり悩む。


お世辞を書くのがいいのか、


正直に書くのがいいかのだろうか、迷う。





結局、できるだけ良いところを探し、理由を書いて提出した。


本音で書いたら、「該当者なし」って書きたいくらいだ。





プレゼンテーションが終了した。




その会社に行ける駅は1駅しかなく、帰り道はみんな一緒だった。


そして、投票については一言も触れず、


牽制しあいながら、プレゼンテーションについて話しながら駅に向かう。



「君のプレゼン良かったね。何かサークルに入っているの?」


「何もしていないよ。就職活動で5回ぐらいしただけかな」


「すごいね。自分は今日が初めてだったんだ」


「初めてにしてはすごいんじゃない?」




結局、誰がどんな投票をしたのかはわからないが、


数日後、郵送で合格のお知らせがきた。




【教訓】


プレゼンでは作品など聞いている人が集中してしまうものは渡さない。注目させるのは「自分」。出し惜しみするなど工夫をしましょう。


志望動機は「その会社でしかできない、その会社の強みを生かしてやりたいこと」を書くと説得力がある。



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