食品メーカーなど内定を貰っていたけど、
僕の志望業界は変わっていた。
そのため内内定をすべて断ってしまっている。
実質内定はゼロ。
この時期に内定がないことほど辛いことはない。
一つ一つの面接のプレッシャーがすごい。
それまで入社することを確約する内定承諾書を書いたことがない。
いつも電話で内定辞退の連絡を入れていた。
直接会って謝る気持ちが大切だけど、たいてい電話で済んでいた。
「誠に申し訳ないのですが、辞退をさせていただきます」
たいてい、人事の人は待ってくれる。
「そうですか。もう少しだけ期間を延ばせば、変わりますでしょうか?」
「すみません。今は違う業界を目指そうと考えております。これ以上延ばして、ご迷惑をおかけするわけにはいきませんので、誠に申し訳ないのですが、辞退をさせて頂ければと思います」
「そうですか。わかりました。」
内定の辞退は慎重にしなければならない。
僕の場合は何ごともなく辞退できたけど、
友達の中には呼び出しをされたり、
その場で他の内定を辞退を断るように施す企業もある。
ひどい企業では目の前で内定を辞退させたあげく、
内定を取り消すという企業もあるそうだ。
内定をとってから態度を変える学生もいるけど、
痛い目を見ることになるかもしれないので注意してほしい。
企業もそんな学生たちをたくさん見ているので対策をしている。
「入社意志が固まり次第、誓約書に判子を押しに来てください。定員があり、定員に達してしまった場合は内定はなかったことにします」
このような学生と企業の化かし合いはいつまで続くのだろうか。
すでに4月になると、どの業界も内定を出し始めている。
僕が志望している広告業界や出版業界は比較的選考が遅い。
3月ぐらいから選考が始まり、まだ間に合う。
だいたい3月に書類選考で4月から面接が始まる。
幸い、色々な企業を見ようと思い、
エントリーシートを提出していたので、まだ受けられる企業はあった。
少しでも興味がある企業であれば、
一応エントリーシートを出しておいた方が、あとで役立つこともある。
志望業界が変わった時に出していなければ受けられない。
大手広告代理店のエントリーシートは倍率が高く、
10000人ぐらい応募して、通過するのは2000~3000。
エントリーシートを通過するだけでも難しい。
特にエントリーシートによく見られるのが、
キャッチコピーや短い文字数で自己PRするもの。
ほとんどショート自己PRの課題がある。
例えば、「40文字以内で自己PRを5つ述べよ」という課題。
自分の強みをちゃんと理解していないと、
短い文字数では伝えられない。
自己PRも志望動機でも何でもそうだけど、
文字数が短ければ短くなるほどごまかしはきかない。
ちゃんと自分の「核」をとらえてなければいけない。
広告もそうだけど、少ないスペースの中で
商品・サービスの良さを伝えなければらない。
自分をどれだけ広告できるかが求められている。
よくショート自己PRのエピソードの全てが
同じような強みを言っているような回答がある。
何のために複数書かせているかがわからない。
そのようなつまらない自己PRはまず落とされるだろう。
よくありがちなのが努力系。
ひたすらサークルやアルバイトを努力したことをアピールするもの。
僕の場合はそうならないようにまんべんなく書いた。
料亭のアルバイト、国際交流サークル、
学校の授業には毎日欠かさず出席したこと、
読書は月50冊、ブログの運営について。
一番欲しいのが「ギャップ」。
「こういう面もあるけど、実はああいう面もある」
「実は」というのがポイント。極端な例を言えば、
「引きこもりなんだけど、実はテニスで日本一」
マスコミ業界のエントリーシートについては
一度も落ちたことがなかった。
人気企業になれば、みんなの就職活動日記で
合格通知がきたのかどうか議論になっている。
「えっ、もうきてるんじゃないんすか!?」
「結果が待ちきれません(>_<)通過の連絡が来た方がいたら書き込んでいただけると幸いです!!」
「まだ来ない・・・明日来ますように!」
「大概一気に連絡するし、これから先連絡が来るってのは望み薄だな」
やれるだけやろうと思い、
面接前日にもOB訪問をすることに。
ロンドンにいるOBに紹介してもらう。
その会社のOBではないけど、
前日にOB訪問したことにより、面接の練習になった。
その人はその会社に落ちていた。
さらにもうすでに面接を受けた友人からも情報を得ることに。
面接で何が質問されたのかなど、入念にメモし、
答えをあらかじめ考えていた。
情報があるのとないのでは全然違う。
突然、課題を出されたとしても慌てることなく対処できる。
事前に準備するかどうかが、
難関企業で内定できるかどうかのポイントだと思う。
鏡の前でも、自己PR・志望動機を何度も練習をした。
1分用、2分用、3分用。
ありとあらゆることを想定して練習をした。
今まで、面接なんて成り行きだと思っていたので、
ここまでするのは初めてだった。
それが逆に自分らしさが
出せなくなっていたのかもしれない。
明らかに「余裕」が消えていた。
あまりにも人気がある企業なので、
応募者が多く、待ち時間が長いと聞いていた。
友達はとても待たされて怒っていた。
到着順に面接が受けられるようだけど、
面接時間ギリギリだと2、3時間待ちは当たり前。
面接時間の1時間前には会場に到着していた。
面接当日。
とても強い雨で、蒸し暑かった。
スーツもびしょびしょになりながら企業に着く。
バックからタオルを取り出して入念に拭いてから会場へ向かう。
300人ぐらいがいる部屋に通され、不快感が増していく。
まだ、前の面接が終わっていないらしく50人くらいは残っていた。
最後尾の列に座ると、いかにも頼りなさげな男子学生が座っていた。
よく見ると、ビビるの大木に似ている。
黒ぶちめがねに、丸みを帯びた顔。
よくエントリーシートを通過したなと思いながら、声をかけてみた。
「すごい人ですね。応募倍率が高いのにこれだけ人がいるんですね。」
男子学生はちょっと驚いたようにして答える
「そうですね。でも、他の企業を知らないので」
「えっ、初めての面接なんですか?」
もう就職活動が本格的に始まって3ヶ月。
こんな人がいるとは思わなかった。
「今まで何をしていたんですか?」
「何もしていないですね。最初から広告に絞っていたんで。他の業界には興味がないし。今年無理でも、来年挑戦しようかと思っているし」
ここまで徹底しているとすごい。
1・2社しか受けないで内定を貰う人もいるけどそれは稀。
先輩にもそのような人がいたけど、明らかに志は違っていた。
マスコミ関係を志望している人に多い。
そういう人はマスコミのゼミに入っていたり、
テレビ局のアルバイトですでに働いていたりしている。
しかし、この人はそのような志はなさそうに見えた。
失礼かもしれないが、彼は来年受けたとしても受からないだろう。
来年あるなんて思っている人は絶対に受からない。
そんな簡単に人間は変わるものではない。
「早く仕事をしたくて仕方がない、今すぐにでもしたい」ぐらいの
気持ちがあってこそ、難関企業に受かると思う。
早めに来て並んでいたにも関わらw図
面接時間より30分遅れて、面接をすることになる。
面接会場に着くと、20個ぐらいのブースに分かれて、
個人面接を行っていた。
どのブースも学生の大きな声が聞こえてきて盛り上がっていた。
こんなに広くて、活気のある面接会場は見たことがない。
僕の面接の番。
面接官は2人。
40代ぐらいのおじさんで、
いかにも接待が上手そうな風貌だった。
顔も色黒で、やくざにいそうな人だった。
朝から面接をしていたらしく、いかにもやる気がなさそうだった。
座席に座ると周りの面接の声と
このオジサンたちのやる気のなさが
より一層緊張させ、頭が真っ白になりそうだった。
そして、気だるそうに面接官は質問した。
「1分で自己紹介してください」
こんな時に限って
「自己PRと自己紹介の違いは?」なんて考えてしまう。
自己紹介も自己PRも言い方次第で、自分の強みを言えばいい。
一瞬、戸惑ってしまう。
あらかじめ練習をしていたのに緊張のため噛んでしまう。
1分用に練習していたのに、
自分の口から出てきたのは2分用の自己PRだった。
「私の『変化を起こす努力家』です。今までコンテストで応募してきたのですが、たくさん落選をしてきました。しかし、その失敗を反省し、次に活かそうと努力をしてきました。まず、その1つが「そのコンテストに関する本を最低10冊は読むこと」です・・・・」
話しているうちに1分でおさまらないことがわかり、
どうしようか迷ってしまう。
途中、省きながら話していたが、
なんとなく流れが良くない。
そして、いつものようにアイデアを発表した。
「トランシーバーのようにみんなで話せる携帯電話を作るという提案をし、賞を頂きました。」
いつものようだと反応が悪い気がしたので、
実際にコンテストで提案をしていない内容を盛り込んだ。
ちょっとした脚色だったら構わない。
「実際に実現できたら、新製品のキャンペーンで応募者を募り、その人たちが好きなタレントとしゃべれる権利が当たえると面白いかもしれません。」
面接官が食いついてきた。
「それはおもしろそうだね。ちなみに誰がいいと思う?」
「私だったら、松嶋菜々子でしょうか」
「いいねぇ。今だったら、新垣結衣がいいかな」
「あんたの意見なんて聞いていない」
心の中でそんな風に思いながら笑顔で答える。
「そうですね。新垣結衣さんはいいですよね。ギャラは高そうですけど。」
「そうだよね。やろうと思えば実現できそうだよね。」
横柄に座っていた面接官も、
ちょっと前のめりになりながら話をかけてくる。
しかし、盛り上がったのもこれまで。
志望動機を話しても、全く反応せず、
自分で用意してきた新聞に掲載された切抜きを
もって説明しても、全く反応せず。
流すように面接は終わった。
面接が終了後、すぐにバックと切り抜きをしまい、
立とうとしたとき、切り抜きがはがれて落ちる。
拾おうとすると、切り抜きが濡れていた。
それは雨でもなく、緊張して手から出た汗だった。
慌てて、切り抜きとバックを抱え込み、
面接のブースから出る。
僕は自分の半分以上の力も出せなかった。
【教訓】
可能性をなくさないためにも就職活動の最初は興味のありそうなところはエントリーシートを出しておくこと。
第一志望の企業の面接でも落ち着いて、「余裕」を持ってのぞむこと。