その日の僕はドキドキしていた。


二度目の告白を決意していたからだ。


「花見をもう一度しよう」と言っていたときから決めていた。





花見の日。






あいにく彼女は説明会があり


夜しか空いていなかった。


仕方がなく、友達と夜まで


履修登録のための作戦会議をすることにした。




彼女を紹介してくれた五十嵐君と一緒。




さすがに毎日学校に通っていた僕も、


4年になってからは遊びたかった。


大学1年生の頃から思っていたけど、


授業をさぼるのがどうしてもできず、今までにいたる。




よく自己分析をしてみると、


学校が楽しかったのかもしれない。




学校に行けば、誰かに会える。


渋谷にいる女性高生も同じで、


誰かに会えるからブラブラしているそうだ。


そして、ラブラブになる。





人は人がいないと生きていけない。






スポーツだって相手がいないとできない。


孤独に耐えられる人なんてなかなかいない。


一時期、人と話さない時期があって、


人と話すことの大切さを学んだ。


毎日話していないとコミュニケーション力は落ちる。





面接も毎日していないと上手にならない。





よく面接では「毎日通っているようには見えない」


なんてことも言われたけど、授業に出ていたのは本当だ。





4年はギリギリの単位の授業しか取らないことにした。


そうすれば、サボらずに遊べる。


普通の大学生なら、たくさん単位をとって、


切っていけばいい話だが、それができなかった。


どうしてもDを取るのが嫌だった。






成績に対することでもプライドの高さがうかがえる。






五十嵐君と打ち合わせをしながら、


彼女との花見を楽しみにしていた。


五十嵐君はこの後、合コンに行くようだった。


いつもなら羨ましく思うところだけど今日は違う。


比べものにならないぐらい楽しみなデートが待っている。





未だに五十嵐君には


彼女と2人で遊んでいることを打ち明けていない。





五十嵐君と別れると大手町へ向かった。


その日は日曜日。


駅に着くと閑散としていた。


いつものように待ち合わせ時間より早く着いてしまった。


時間をつぶそうと外に出たけど何もない。




いかにもビジネス街という感じで、


本屋もコンビ二もなかった。


仕方がないので、彼女と一緒に撮ろうと


用意していたデジカメで色々なビルを撮影。




誰もいなくて、ビルの明かりがキレイで、


意外と絵になっていた。


道路の真ん中で写真を撮っても大丈夫だった。


20分ほど撮影していると、とても手がかじかんできた。


あまりにも寒いので、駅に戻ることにした







すると、あることに気づいた。







携帯電話の電波が入らない。


彼女と連絡が取れない。


最悪なことに待ち合わせ場所を具体的に指定していない。


彼女から終わったら連絡をもらうことにになっていた。





とても焦り、どうすればよいかを考えた。


電波が入るのは外しかないと思い、


外と地下鉄の駅の境目の階段で、彼女の連絡を待つことにした。


なんとか電波が入るけど、それでも寒い。





携帯のお天気サイトでチェックすると3度しかなかった。





早く連絡が来ないかと待っていたが、なかなかこない。


「何をしているんだろう」、そう思っていたとき、


いかにも「就職活動 をしています」とわかる


女子学生が自分の前を歩いていた。





1人を発見すると、またもう1人、流れるように歩いてくる。


もしかしたら、彼女が行っている


会社の説明会が終わったのではないだろうか。


そう思いながら、ずっと目をこらしてその集団を見ていた。




あまりにも寒かったので、


連絡を待つのはやめ、彼女を探すことにした。


走って探そうとすると、彼女が遠くからやってきた。


まだ、向こうは僕に気づいてない。


僕は慌てて彼女の方へ向かう。


そんな様子に彼女は少し驚きながら、




「待たせた?ちょっと説明会が長引いたんだよね」


「全然。」




ちょっとためらいながら答える。


今までの経緯を知らない


彼女は不思議そうに僕を見る。





二度目の花見が始まる。





もう頭の中は「告白」の二文字でいっぱい。


告白をしようと思っていたので、


あえて人がいないくて、桜が見えるところを選んでいた。


彼女の家から遠すぎないという条件も加え、


品川のホテルの桜を見ることにした。





電車を乗継ぎ品川駅に着くと、


どこへ行っていいのかわからなかった。


品川駅に下りることはあっても、品川を歩いたことはなかった。


駅の付近はホテルばかり。


何度もホテルのまわりをまわっていた。


やっと目的のホテルに着くと、意外に人がいて驚いた。





「これでは告白ができない」






そう思いながらも花見をすることに。


ホテルの中には大きな桜が数本並んでおり、


桜を外から見るのではなく、桜の中を見るというような感じ。


宴会用の席があったけど


ベンチのようなものはなく歩きながら桜を見るしかなかった。




これでは落ち着かない。




落ち着きながら告白をしたかった。


せっかく花見をしにきたので、


二度目になる彼女とのツーショット写真を撮ることに。


前回は、撮り慣れていないため、満足いく写真ではなかった。





今回はうまく撮影できるように練習していた。


他の人から見られたら不気味な光景に違いない。


そのため、夏より数倍アングルはよかった。





しかし、あまりにも周りが暗く、


フラッシュをたいてもそれほど効果がない。


僕たちはうまく撮れていたけど、


せっかくの桜が暗くて見えなかった。


それから何枚も撮ったが、うまくとれず何度も撮りなおした。


あまりにも夏のリベンジを果たすことに燃えていた


僕を彼女は哀れみ、「もういいでしょ」と諭されてしまう。





彼女はそのあと携帯カメラで桜を撮影。





なぜかシャッター音が「お寺の鐘の音」だった。


その間にちゃんと撮れているか再確認。


今日は選考がなかったので僕は私服で、


「就職活動中の学生とプー太郎」という構図に見えなくもなかった。




それから桜を見ながら歩いていたけど、


意外に見る場所が少なく、


全体を見るのに10分くらいで見れてしまった。


告白をしようと思っていたのにここではできなかった。





ホテルを去ろうと


下り坂の道を歩いていると、あたりに人はいなかった。


これはチャンスだと思い、隣を歩いている彼女の顔を


首を横にふり、しっかりと見た。


顔を少し引きつらせながら。




「ちょっと真面目な話があるんだけどいいかな?」


「何?」



1回目の告白と同じ流れ。



「あの~今日ずっと言おうと思ったんだけど、やっぱり友達ではいたくないんだよね。12月に告白したときから気持ちは変わっていないし、みっちゃんのことが好きなんだ。付き合ってくれないかな?」


「・・・・・・・」



12月と変わらない雰囲気。


彼女はとても気まずそうな顔をしていた。


どう答えて言いのかがわからないようだった。


すると、彼女は覚悟を決めたように




「やっぱり、友達としか見れない。ごめん。」




予想していた答えが返ってきた。


でも、今まで遊んできた分、


ちょっと期待していたので少し落込む。


このままではいけないと思い、笑顔で彼女に言った。




「そっか。でも、諦めないから。ずっと好きでいる自信があるし。また、就職活動 が終わったら告白する。」




本当はごまかしてはいけないと思っていたけど、


関係が壊れるのを恐れた僕にはは限界。


冗談めいて言った分、彼女は安心していた。





「わかった。わかった」





その後は「いつも通りの関係」で坂を下る。


また、12月のように今までの経緯を冗談をまじりで話す。


お互い食事をしていなかったので居酒屋に入ることに。




お酒の飲めない僕に気遣い、


彼女もお酒を飲まず、ただ居酒屋で食事をしていた。


背の低い男性に気遣い、ヒールを履かない女性のような感じだ。


終電が近くなり、居酒屋を後にし、


エスカレーターで駅のホームに向かう。


その途中、彼女の前にいた僕は振り向きながら笑顔で言った。




「絶対に就職活動 が終わったら、告白するから。」


「わかった。わかった」




彼女は笑顔で答えてくれた。それに安心し僕は続ける。




「本当だからね。」




ホームで彼女と別れる。


これからもまだ彼女とは続けていけそうだ。


告白は失敗してたけど、


充実感に満ち溢れ、電車の座席で寝ていた。




家に帰ると、彼女と一緒に撮った写真を見ながら、


今日の反省を日記につづる。




「告白はダメだったけど、よく頑張った。少しまた成長した。明日も頑張ろう!」



【教訓】


コミュニケーション力は人と話せば話すほど身につく。