花見の日。雲行きがあやしかった。


前日から天気予報を気にしていたけど、




降水確率は30%。




僕は降水確率について勘違いしていたことがあった。


降水確率が大きいほど、


雨も同じようにたくさん振るものだと思っていた。





降水確率はあくまで雨が降る確率で、


例え、降っているかわからないぐらいの小雨でも


降水確率は90%の場合もある。


30%でも雨が小雨なら花見をすることはできる。




桜の特集をしている雑誌を3冊ほど購入して入念に調べ、


どこが一番きれいに咲いているかまで調べていた。




またもや、学食で待ち合わせ。





しかし、彼女は待ち合わせの時間に現れなかった。


相変わらず電話嫌いなのでメールで連絡する。




すぐに返事はこなかった。




彼女が今日の約束を忘れてしまったのではないかと思った。


もしかすると、また電波の届かない所にいるかもしれないと思い、


たまたまこれから提出するエントリーシートがったので、


課題の回答を考えながら、しばらく待つことにした。


そして、10分後・・・メールが着た。




「パソコン室にいるんだけど出れなさそう」





理由がまったくわからなかった。


メールを返すよりも行った方が早いと思い、パソコン室へ向かう。


パソコン室へ着くと、彼女はパソコンの画面を見ながら、


何度もキーボードを打っていて、困っているように見えた。


僕がパソコン室に来ていることさえ気がつかない。


そっと僕は彼女に近付き、声をかける。




「どうかしたの?」


「あっ、ごめんね。」


「別にいいんだけど、どうしたの?」


「WEBテストの申込みをしているんだけど、ページにつながらないんだよね」


「そうなんだ、ちょっとかしてみて」




彼女に手順を教わり、同じようにしてみたけど、


全くWEBテストの画面は出てこない。


僕はこんなことをしているのも無駄だと思い、




「学校のパソコンでは無理なのかもよ。家に帰ってから試してみは?」


「でも、今日の18時までが締め切りなんだよね。そうすると花見はきつそう」




その時、すでに14時。


自分で言ったことを後悔した。


それと同時に心の中で思った。






「もう少し計画を持って就職活動をして欲しい」






すると、今日をいかに楽しみにしていたか知らない


彼女はありえない一言を言った。





「今日は花見中止でもいい?」





「うそでしょ」と思いながら、何と花見にいける努力する。




「そんな志望度が高い企業なの?一社ぐらいいいんじゃない?」


「いやぁ、ここは受けたいな。後悔しそうだし」




だんだん雰囲気が悪くなってきたので、折衷案を出すことに。





「じゃあ、1時間だけ花見をしよう。それならいいでしょ?」


「わかった、そうする。1時間だけだよ」




何とか花見はできることに。


しかし、雰囲気は良くなったのに天気は悪くなり


学校を出る頃には雨が降っていた。




「雨の花見もいいんじゃない?」




フォローを入れながら目的地に向かう。


花見の場所は中学生の頃に行ったことがある公園。


7年ぶりぐらいに足を踏み入れたのだが、全く変わっていない。


予想外に花見にきている人がいて驚いた。


青いシートを敷いて、食べ物やお酒が置いてある。





その中にはスーツの人もいて、


新入社員で場所取りを命令されているのかもしれない。


スーツが雨でびしょびしょで、かわいそうに思えてきた。





そのような光景を見つつ、傘をさしながら桜を見ていた。


雨は学校を出たころより増し、


桜の色がどんどん暗くなっていた。





あまり花見をしたという気がしない。




どんどん気持ちは落ちていった。


彼女を励ますために行くことにしたのに、


自分が励まされることになってしまう。




僕は彼女の前だけ弱音が吐けた。





この頃、彼女を通じて、


女性の強さを感じ、逆に自分の弱さを知った。


ずっと、内々定の正式な返事をしなければならなく悩んでいた。




初めて内定した会社だったので、


何もわからず、とても慎重になっていた。


のちのち内定辞退は意外と簡単であることを知る。



親からは「大企業なんだから行けば」のようなことを言われ、


周りも「辞退するのはもったいない」と言われていた。


正直、他の業界にも気持ちが向いていたけど、


早く就職活動を終わらせたかった。




就職活動を楽しんでいたけど、


さすがに毎日2、3社受け、ずっと続けていると飽きる。


毎日、緊張感のある生活をしていたので、


おかげで体重も2キロほど痩せた。


早く終われるなら、これほどうれしいことはない。





しかし、それが「逃げ」であることはわかっていた。





そんなことから彼女にも何度もどうしたらよいか相談していた。


そのとき、彼女は内定 を持っていなかったにもかかわらず。




自分のことも大変なのに相談に乗ってくれる彼女には何度も感謝した。


僕も彼女の相談はどんな時でも乗っていた。


良い関係というのはお互いが


貢献することによって成立するものだと思う。





僕は「人脈」という言葉が嫌いだった。





人脈というと相手の力を利用して、


自分が得するようなイメージがあったからだ。


就職活動も同じで自分が貢献できると思わせなければ、


自分の好きな仕事なんてやらせてもらえない。




彼女は先ほどのWEB試験が気になっていたに違いない。


ましてや、自分の愚痴を聞くのは嫌だったと思う


ただ歩いているだけなおに公園を1周まわっていた。


彼女がそれをはかっていたかのように、



「もうそろそろ時間だし、帰ろう」


「うん・・わかった」




さらに雨がひどくなってきたので、途中で花見はやめることに。


先ほど花見の準備をしていた人たちはいなくなっていた。


駅に向かい、方向が全く逆なので改札で別れる。




ホームに降りると、遠くのホームで


慌てて電車に乗る彼女を見かけた。


その姿を見て申し訳なかった。


彼女の電車が駅を出るのもを見計らい、僕も電車に乗る。


座席に座ると、隣に新入生と思われる


女子学生二人組みの話声が聞こえてきた。



「第2外国語って何にする?」


「ドイツ語は難しそうだし、中国語にしようかな?」


「でも、ドイツ語は日本語と文法は似ているらしいよ」


「でも、フランス語も気になるよね」




そんな会話を聞きながら、




将来、時間、可能性




がある彼女達が羨ましく思えた。


「ドイツ語が楽だよ」


そう心の中でささやきながら、


何もすることがないので彼女達の会話を聞いていた。



そんな時、バックから


携帯電話のバイブの音が聞こえてきた。



気持ちが落ち気味だったけど、


すぐに就職活動モードに切り替わる。


受験している会社からの連絡だと思い、


すぐに携帯電話をバックから取り出した。




すると、彼女からのメールだった。




今まで彼女からメールをすうることはほとんどない。


慌ててメールを見ると、




「内定を貰っていることに自信を持たないと。私なんてないんだから。昔、私も受験で悩んだことあったんだけど、マーフィーの本を読んで、何とか乗り切りました。具体的に自分がしたいことをイメージすると良いってあって、学校に実際に行ったり、その学校で生活をしているようにイメージしたりして、何とか大学に入れたんだ。前向きな言葉を言い続けることが大事だよ。ダメな時でも前向きな言葉を言い続ければよくなるかもよ・・・」




さすが、本の趣味があう彼女だ。


何より「彼女が自らメールをくれた」ことに感動した。


このメールは就職活動 中に辛くなった時に読み返していた。





前向きな言葉を言い続けていれば前向きになる。


単純なことだけどなかなかできない。


でも、言えば言うほど得することしかない。


もしも、志望している企業があれば堂々と言ってほしい。





「私は●●から内定をもらう」





人気企業であればあるほど、


それぐらいの強い気持ちがなければ難しい。



僕は「ありがとう」というシンプルなメールで返した。


次の日、いつものようにおはようメールを送ると、


彼女からすぐに返事が返ってきた。





「ちゃんとWEB試験ができました」





【教訓】


パソコンのトラブルなど、あらゆるリスクを想定して就職活動をすること。必ずWEB試験、申込みは余裕を持ってする。


就職活動ベストブログランキング


就職活動五行歌ランキング