面接が終わるとすぐに横浜へ向かう。



いつもは彼女と中間地点の銀座だけど、


何度も出てきてもらうのは申し訳なく思ったからだ。


逆に僕の頑張った分、帰りの時間は長くなる。



横浜方面に行くのは告白して以来。


その日は映画を見る予定だった。


映画を見る前に食事の時間をとっていたので


何とか映画の開演時間には間に合いそうだった。




しかし、彼女と一緒にいられる時間が


面接官のせいで少なくなってしまったことは残念。


自分だけなら良いけど、相手にも迷惑をかけるのは最低。




自分のことしか考えていない学生も多い。




例えば、説明会のキャンセルの連絡をしない学生がいる。


相手が常にどう思うのか考えたほうが良い。




面接会場から向かっていたので30分ぐらいで着く。


その日は日曜日だったので人ごみがとてもすごい。


彼女を見つけることはなかなかできない。



そこで携帯電話を取り出し、


いつものようにメールをしようと思ったけど、


それでは時間がかかると思い、電話をすることにした。



「もし、もし、木村だけど、今どこにいる?」


「もしもし、もしもし」


「もしもし・・・・」


「も・・し・・・」



あまりにも周りがうるさくて聞こえない。


お互いもっと大きな声で話す。


そして、彼女の声は電話からではなく、


僕の後ろから聞こえていた。


後ろを振り返ってみると彼女がいた。




僕は気がついたけど、向こうは気がついていない。


耳に当てていた携帯電話をおろし、彼女の方へ向かう。


彼女は電話に集中していたため、


1メートルぐらいの距離でも気がつかない。


そして、彼女の肩を叩く。




「ごめん、遅くなって」




彼女は少し驚いていた。




「気づかなかった」


「驚かせてごめん。それにしてもすごい人ごみだね」


「そうだね」


「あと、ホントにごめんね。ダメな面接官のせいで長引いちゃったんだよね」


「別にいいよ。今までテニススクールに行っていたし」



彼女はちょっとさっぱりした顔つきをしていて、


髪が少しだけ濡れていた。


彼女も慌ててきたのだろう。




服装はユニクロのフリースにジーンズ、


自分がよくしている格好だった。


地元だからかどうかわからないけど、


いつもよりラフな格好だあった。


僕にとってはそんな姿がいとおしかった。



人込みは嫌いな僕は


すぐにその場を離れることを提案し、


食事をすることにした。



全くお店は知らなかったので、


彼女にまかせることに。


日曜日の夕方なのでどの店も混んでいる。



探し回るのも時間の無駄なので、


待ち合わせ場所から見えるピザ屋に入ることになった。




やっぱり、会話は就職活動の話。




ピザを注文すると、僕のエントリーシート講座が始まる。


彼女に信頼されていることはうれしかった。


彼女はエントリーシートを取り出し、


メニュー、フォークなどを端によけ、エントリーシートを机に置いた。




「他の人には見せていないんだけど・・・」



僕はそれを1、2分で全部見る。


学生の自分が言うのもおかしな話だけど、


彼女のエントリーシートはまだまだであった。


せっかく、今まで頑張ってきたのに


誰もが書いているようなことを書いていた。




彼女は1番頑張った


テニスサークルの話は書かないようにしていた。




先輩に「軽く見られるよ」と言われたからだそうだ。


しかし、それは違うと思う。


自分が本当に頑張ってきたことなら言うべきだ。




エピソードは何でも構わない


そこから自分の人柄、強みが伝わればいい。


大学生のエピソードなんてほとんどが同じ。




サークル、ゼミ、アルバイト。




あとはどれだけ自分にしかない経験を


自分の言葉で語れるのかが大切になってくる。




「一番自分が本当にがんばってきたことを書いた方がいいんじゃない。テニスを頑張ってきたのは一番知っているし」


「そうかな~先輩は厳しいって言っていただけど」


「その先輩はわからないけど、その先輩はただ良さが伝えられなかっただけじゃない?自分の一番頑張ったことをアピールしないで落ちたら絶対に後悔すると思うんだけど。」


「確かに。もう一度考えてみる。」


「例えば、何か苦労したことはないの?」


「大学からテニスを始めたから下手だったことかな。それで今日もそうだけど、テニススクールに通っているんだけど」


「そういうのでも努力が伝わるんじゃない?しかも、初心者からサークルで一番になったし。」


「そうだよね。」


「でも、ありきたりなエピソードだよね。他にはないのかな?」


「特にはないけど、後輩の指導をしていたのは大変だったかな」


「そうなんだ。じゃあ、そこで苦労したことは?」


「苦労ではないけど、私と同じように初心者から始めた人に教えるのは難しかったかな」


「その初心者に対してはどうしたの?」


「私も同じ気持ちが分かるから、初心者の人達とノ反省ノートを交換していた。直接手渡ししたりしていたから、会う機会も増えって仲良くなったかな」


「それは面白いね。実際、営業の人も会う機会を増やして、アプローチすしたりするし、すでにそれをやっているわけだよね」


「そうかな。」


「当たり前と思っていても、周りからすごいことかもしれないよ。あとは自分が決めるだけだね」


「参考にするね」



結局、彼女はテニスのエピソードで


自己PRを作成することになった。



誰かに質問してもらうことによって、


エピソードが出てくることもある。




1人で自問自答できる人なら大丈夫だけど、


そんな人はなかなかいない。


あとは就職活動本などに


掲載されているワークシートの質問に答えるのも良い。


ひとりで就職活動をしないで、


いろいろな人に出会った方がいい。



エントリーシートの話が終わると、ピザがやってくる。


食事をしている最中に、




選考中の会社から電話が入る。





店内ではとても聞き取りづらく、外にでる。


さらに地下にあるお店なので電波が弱いらしく、


それでも聞こえない。


仕方がなく100メートルぐらい走り、地上に出て話す。


食事中に走ったこともあり、とても息が荒い。


思考能力もなくなっていた。


彼女のことで一杯な僕はすぐさま、





「誠に申し訳ないのですが辞退します」





すぐに電話を切り、「学生だから許して」


と思いながら、すぐさま彼女のもとへ戻っていった。


席に戻ると、自分達の隣の喫煙席で


いかにも脂ぎったオジサンが煙を飛ばしていた。




席につくと、食べかけのピザを食べる。


食事中に煙草を吸うのが嫌いな僕は


段々イライラしてきた。



さらに彼女もタバコが嫌いで


彼女にもかかるのが嫌だったので、


ちょうど目があった時に、


オジサンを思いっきり睨み飛ばす。


オジサンは煙草を吸うのを辞める。




すると、彼女は僕に言った。




「もう出よっか」




ちょっと嫌そうな顔をしていた。


僕は慌てて最後のピザをほおばり、


店を出る支度をする。


お店を出た後、言い訳もせず謝った。




「ごめん」



彼女は何も返事することはなかった。


しかし、彼女はケンカをする人がとても嫌いだった。


でも、彼女のためにしたことなのに


許されないのがちょっと悲しかった。




本当はそれが原因ではなかったかもしれない。


いつの間にか、映画の開始ギリギリの時間になっていた。




慌てて映画館へ向かう。




映画館を探していると、


風俗関係のお店が並んでいてとても気まずい。


彼女はどんな風に思って見ているのだろう、


そんなことを気にしていた。




映画館に着くと、色々映画があり誘惑されたが、


当初の予定通り、おすぎ絶賛の映画を見ることにした。




映画はまたもや失敗だった。




あまりにも暗すぎて、


お互い終わったあとに会話に困った。


暗い映画はお互い好きだったけど、





あまりにも暗すぎた。





この日は、実は映画は二本目。


映画会社のエントリーシートの課題で


公開されている映画のコピーを考えなければならなかった。


もちろん公開されているのは映画会社の作品。



僕たち学生を利用しているような気がした。


その前のエントリーシートの課題は





「映画化したらおもしろいアニメ」





僕は「バガボンド 」について書く。


スラムダンクを書いていた井上雄彦さんが


モーニングで連載している漫画。




就職活動中に読み始めたけど、いっきに全巻読んでしまった。


バガボンド6巻の宮本武蔵が戦いに敗れ、




「俺はちっぽけだんだ」




という言葉は就職活動中の僕の心を代弁してくれていた。




コピーなどを考える際には情報収集が大切。


実際に見るのが一番。


そのため、面接の前、


午前中に映画をすでに一本見ていた。


この映画がさらに暗くてつまらなかった。


映画館には同じ課題で来ていると思われる学生もいた。




本日2本目の映画が終わると、


彼女とのお別れの時間。




毎回、この瞬間がつらい。





自宅まで2時間かけ、家に帰る。


さすがに1日2本は辛く、倒れるようにして寝ていた。




【教訓】


自分が頑張ってきたことには自信をもつこと。誰に何を言われようと、それがあなたの「強み」だから。


友達に質問してもらい、自己分析をするのも役立つ。



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