今年は学園祭を一番楽しみにしていた。
むしろ行きたいくらいだった。
彼女と一緒に学園祭に
行く約束をしていた。
彼女もゼミに所属していたので
ゼミの共同論文の発表のために来なければならなかった
そのため、ゼミのブースの当番の日を相談し、
一緒の日に合わせていた。
テニスサークルに所属していた彼女は
1、2年の時は露店でホットドッグの販売をしていた。
ホットドッグを作ったりするのではなく、
チケットを売りさばいていた。
テニスサークル内でも1位、2位を争う。
そんなに口が達者ではないはずなのに、
そこまで売れるのには驚いた。
「彼女は美人だから」
そう思っていた。
でも、僕が売ったら絶対にそんな数はいかない。
そう思うと、なんとなく悔しかった。
3年生になればさすがに彼女も引退。
ゼミに専念していた。
年に1度の学園祭を2人で楽しむ。
こんなうれしいことはない。
ゼミの準備をしていても心はウキウキで、
決して嫌な顔をひとつもせずせっせと働いていた。
しかし、学園祭の前日。珍しく彼女から連絡が入る。
「ごめん。いけなくなっちゃった。おばあちゃんが亡くなって、山梨に行かなければならなくなって」
そのメールをもらった途端、頭は真っ白。
ショックでどう返事をしていいかわからなかった。
1時間ぐらいして気持ちを整理して、
今の自分ができる精一杯のメールを返す。
「わかった。仕方がないよね。おばあちゃんがいたからみっちゃんがいるわけだし。最後のお別れをしてきてね。今年は無理でも、来年一緒に行きませう!」
僕たちは「しょう」を「せう」という風に打っていた。
こんなときだからこそ、いつも通りに振舞おうと頑張る。
そして、すぐに彼女からメールが返ってくる。
「ごめんね。今度はランチでも。」
学園祭の数日間、
「いつものように」何もすることがなかった。
本来なら入ゼミも兼ねているので、
2年生がくるはずなのだが、
人気のないゼミなのでほとんど来ることはこなかった。
自分が担当していた時にブースに来たのは、
日本酒の一升瓶を持ったドラえもん風に
体をペイントしているふんどし姿の男だった
見かけも寒いが、それ以上に
1人寂しく販売している姿はもっと寂しかった。
お酒の飲めない僕でも同情して買いそうになった。
なぜか、自分が来る日はミスコンの日。
4階にあるゼミのブースからミスコンを眺めていた。
心の中で僕が勝手に決めた人がミスコンに輝く。
その時のミスコン受賞者は
女子アナウンサーに内定している。
アナウンサーになるのならミスコンで賞を取るのが近道。
マスコミ関係者も見に来ていることもあるけど、
自己PR の基本は誰もがしていないことを書くこと。
ミスコン優勝者は日本で一人しかいない。
これほど誇れるものはないだろう。
何よりも自信につながる。
自信を持っている人ほど魅力的な人はいない。
面接でも明らかに雰囲気で違うのがわかる。
ミスコンで優勝しなくてもてもいい。
ちゃんと自己分析をして、
自分が誇れるものを見つけることが大切だ。
【教訓】
どんな小さなこと、地道なことでも構わないので、誰もしていないことをアピールしよう。