トリトンスクエアに戻ると


くつろげる場所が見つからなかった。


どこで時間をつぶそうかと考えながら、


歩いていると「本屋」を発見。


ボクは発見してすぐに彼女に言った。




「本屋で時間つぶそう」


「いいよ」




ほぼ毎日、立ち読みをしているので、


「時間をつぶす=本屋」だった。


初めて、エントリーシートを提出した時、


今見ると、とても恥ずかしい自己PRをしていた。




「立ち読みで1日3冊以上読み、年間1000冊以上本を読み、足腰には自信があります」




案の定、エントリーシートは落ちていた。


何をアピールしたいのかが全くわからない。


あくまで仕事ができそうかどうか連想させることが大切。


転職と新卒の違いは「可能性」。


転職は実績を基づき判断されるけど、


新卒の場合は「可能性」で判断するしかない。


悪い例だが、たとえ自分ができない人でも、


採用担当者に「できる」と思わせることが大切。





このとき、ゼミ員も同じ会社に提出していた。


しかも、ゼミ員は全員受かっていたのに。


自分だけ落ちていたが悔しくてとても恥ずかしく、



「そこの会社には出していない」




とごまかした。


友達が通過していて自分が落ちる。


認めたくないかもしれないけど、それが現実。


自分の非は素直に認めなければならない。




普通なら一緒に歩いて


話したりするのだろうけど、お互いマイペース。


自分の好きなように立ち読みをしていた。




30分もすると彼女が気になり始め、彼女の元へ向かう。


彼女は真剣に読んでいて、全く僕には気づいていない。


隣まで近づいても気がつかない。


ボクはそっと肩をたたき



「何を読んでいるの?」


「男運の悪い女たち 」


「すごいタイトルだね」


「私は悪いんだよね。あまりいい人出会っていないし。男運が悪いのは父親のせいらしいよ」




それを聞いた途端、ショックだった。


今、目の前にいる自分は「いい人」ではないのだと思った。


すると、彼女の携帯電話が鳴り、彼女は慌てて本屋の外に出る。


それにつられるように僕も本屋を出る。


今度は男ではなく、アルバイト先からのようだった。



「9月10日空いているんだけど、入れる?(電話の声)」


「その日なら空いていますので、よろしくお願いいたします」




彼女の声のトーンがいつもと違い、驚いた。


アナウンサーみたいにしっかりとした声だった。


彼女はスーパーの試食品売り場で働いてた。


大学の学園祭で、フランクフルトを1人で


1日150本以上売るくらいセールスが上手。


その割には普段はとてもおとなしいかった。




これだけ時間をつぶしても、まだ時間があった。





コンビニエンスストアで飲み物を購入し、


高層マンションの中庭のベンチでくつろぐことに。


ベンチの前には「滑り台、砂場」があり、ちょっとして公園だった。


子供たちが楽しそうに遊んでいる。


「あんな時期があったんだな」自分にもあったんだなと思う。


自己分析をしていると、こんなことを思うことがある。





「あの頃、何か目標を持って頑張っていれば、今はすごいことになっていたかもしれない。もしも、昔の自分に会えるのなら、教えてあげたい」





決して、今まで時間を無駄にしてきたわけではない。


もっとよい生活が送れたのではないかと思ってしまう。


過去は取り戻せない。前しか進むことはできない。




まだ9月とは言え蒸し暑い。


気を使いすぎて、疲れてしまい、ボーとしていたら、


隣で彼女が異様に右腕を掻いていた。



蚊にさされたらしい。



かなり痒いらしく、赤くなるぐらいまでに掻いていた。




見ていると痛々しい。




そんな彼女を見て、



「かゆいだろうけど、掻かない方がいいよ。跡が残るし」


「そうなの。知らなかった」


「薬があればいいんだけどな~」


「平気、平気」




僕は掻くのをやめさせた。


普通の女性ならそんなことをしないだろうけど、


そういうことをする人だった。


ベンチで愉快に遊んでいる子供たちを見ながら、


夏休みの話、将来の話、秋の授業の話、色々話をした。




「秋の授業はこれ以上ないくらいつまっていてヤバいよ」


「私は前期がんばったから、後期は週4休みかな。すごいでしょ」


「本当に!?自分は毎日出席しないとだめなのに」


「そんなにあるの。大変だね。」


「うらやましいな~くやしいな~」




それと同時に彼女が週3日しか


学校にこないことを聞いた途端、寂しくなった。


彼女と学校で会うのが少なくなってしまう。


そのようなことから水曜日と木曜日しか会う機会がなかった。


僕はいつも前日の火曜日は楽しみで仕方がなかった。


突然、彼女は惜しそうな表情で僕に言った。



「花火でも持ってくればよかったね」


「そうだね。今年、1回も花火を見に行っていなかったな。」


「私も」


「じゃあ、来年、晴海の花火大会を見に行こうよ」


「そうだね。その時は学生最後の夏休みだね」


「学生最後か~もう3年なんだね。あっという間だった気がする」


「本当にあっという間だね」


「もうそろそろ就職活動だし」


「まだ、自分がやりたいことなんてわかってないし」


「私も。これから見つけないと」


「そう思うと、何も目的もなく学生生活を送っていた気がする」


「そんな人のほうが少ないんじゃない」




僕は学生生活充実してこなかった学生の方が多いと思う。


だからこそ、就職活動で苦しむ。


集団面接で聞く自己PR は、


アルバイト、サークルのエピソードばかり。


そこから自分にしかない経験を


伝えられればいいけど、似てしまう場合の方が多い。




もしも、3年生の夏から就職活動を始める人がいたら、


自分の大学内では並ぶものがいないくらいのレベルで


差別化できる経験と実績を作ってほしい。


そのような意識をもって学生生活を取り組んでほしい。


それがきっと「財産」になる。



しみじみした雰囲気になってきた。


そんな雰囲気をはじき飛ばしたくて、


少し大きな声で言った。


「もうそろそろ、夜景を見に行こうか」


いつの間にかあたりは暗くなり、


周りで遊んでいた子供たちはすでにいなくなっていた。


今度は正規のルートで展望台に向かう。


一度経験済みなので展望台までは迷わない。



向かう途中、誰も人気がなく不気味だった。




暴走族がいかにも走りやすそうに道路はすいていた。


港の雰囲気が本当にそう思わせる。


三角コーナーなどで道が塞がれ、


とても歩きづらかったが展望台に着く。



入り口付近に近づこうとすると


警備員の人に呼びかけられ、止められる。



「ちょっと」


「はい!?」


「君達、もう終わりだよ」


「確か終了時間は20時ですよね」


「いや、9月からは17時までだよ」


「そうなんですか」



9月からは展望台の終了時間が


8月より3時間も早まっていたらしい。


お互い、とてもガッカリした。


最小化ら17時だったら夜景も見ることはできない。




最初から計画は無駄だった。




結局、僕達はあの絶景ポイントから


夜景を見ることはできなかった。


でも、本当は夜景なんてどうでもよかった。




彼女と一緒にいられればそれでよかった。




仕方がないので僕たちは帰ることにした。


電車に乗ることもなく、


晴海通りを歩いてまた新橋方面へ向かう。


その途中、橋からとてもきれいな夜景が見えた。


そこで立ち止まり、川を眺め、苦し紛れに言った。


彼女にフォローをしようと必死だった。



「晴海の夜景は見れなかったけど、こっちもキレイだね」


「そうだね。」



それ以上は何も語らなかった。


5分ほど何も語らず眺めていた。


帰りの道は異様に早く感じられた。


もうそろそろ、彼女と別れることになる


ということを知っているからだろうか。


どうしてもまだ一緒にいたい僕は食事に誘う。



「疲れたし、食事でもしない?」


「いいよ」




彼女も疲れているらしく迷うことなくOK。


ようやく、駅付近を着いても場所は銀座。




高級なお店ばかり。





疲れているのにもかかわらず、


安そうなお店を見つけるためにひたすら歩くことに。


晴海通りをまっすぐ歩き続けると、


有楽町の駅前にファミリーレストランを発見。


迷わず、その店に決めることにした。


店内は「冬」と思うぐらいに涼しかった。




でも、僕の体は汗でベトベト。


今すぐにでもシャワーを浴びたいくらい。


せめて、顔だけでもと思い、おしぼりで顔をふいていた。


彼女の前だから恥じらいもあったが、


不快感には勝てなかった。




彼女はカキ氷を注文し、


僕はステーキ、パフェなどボリューム満点な料理を頼む。


まるで運動したくらいに疲れていたので、


とても食事はおいしかった。


そんな疲れを吹き飛ばす言葉が思いもかけず、


彼女の口から出てきた。



「今日は楽しかったね」


「そうだね。今度は展望台に行けるといいね。」



その言葉で今日は満足。


食後のデザートのように甘く疲れがとれる。


そして、食事が終わると新橋駅へ向かう。


お互い一度休憩してしまったので体が重く、無言。


駅に着くと、彼女は慌てていた。




もう終電ギリギリの時間だった。




別れの余韻に浸る間もなく、彼女は去っていった。


そして、僕も家へ帰ることに。


どうやって帰ったのか覚えていない。



翌日の朝、日課の「おはようメール 」


これでけは欠かせない。


もちろん、話題は晴海の話。



「昨日はたのしかったね。体重はかったら、1キロもやせていたよ。また、今度も遊ぼうね」


「おはよう。昨日は私も楽しかったよ。そんなに痩せたんだ。私も測ってみようっと。」



数日後、まだ夏休み中に彼女に会いたく、


メールで誘ってはみたものの、彼女は忙しくて会えなかった。


断る口実なのではないかと疑ってものの、



「彼女は忙しい」



そう自分に思い込ませ、僕の夏休みは終わった。


でも、彼女と一緒に過ごせたこの2日間は忘れない。


今でも夏になり銀座を歩くと思い出す。



【教訓】


自己PR は仕事で活躍できるか思わせるものを書くこと。


充実した学生生活を送っている人は多くない。間に合うのなら今から充実させよう。


インターネットで無料で簡単に診断できる適職診断サイトがいっぱい!


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