留守番電話のテルちゃんは、ケイタ君が好きでした。

ケイタ君はテルちゃんの部屋のご主人様であるHeさんの持ち歩く携帯電話です。ケイタ君はちょっぴり小振りだけどガッシリした、色の黒い電話です。


テルちゃんはケイタ君の良き理解者になれる自信がありました。

だってふたりは同じ電話です。

電話がかかってくる直前のピンッ!とくる予感や、そのキャッチの瞬間の手応え、コールする時のお尻のムズムズ感、電話が切られた瞬間のホッと解き放たれたようなその解放感と充実感_____そんな仲間同士でしか分かち合うことのできない、言葉の下の世界の中で ふたりは繋がっているのだから。

 

少なくともテルちゃんは そう信じていました。

ケイタ君の気持ちはテルちゃんには判るし、また テルちゃんの気持ちだってケイタ君は手にとるように判るはずだと。


けれど、一日中お部屋でお留守番のテルちゃんと、いつもHeさんと一緒に仕事場に、飲み屋に、彼女の部屋にと飛び回るケイタ君との生活には あまりにも違いがあります。

実際、ケイタ君は声の高いファックス専用電話のお姉さんや、可愛いピンクのポケベルちゃんと付き合っていました。


それでもテルちゃんは ひっそり、こっそり、ずっと待っていました。

いくらケイタ君が こっそりとピンクのポケベルちゃんにメッセージを送っていても、Heさんが部屋にいる間、ふたりは一緒です。

今はまだ友達でも ずっと想い続けていればいつかは…と テルちゃんはケイタ君に想いを寄せるのでした。