ないこと あること

ないこと あること

脳内に浮かんだ光景を記しております

妄想を書き留めたフィクションブログです。登場する人物、団体名等は実在の物とは関係ありません。

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川岸で釣りをしていたところ、上流から猫が流されてきたので、助けなくてはと川に入っていって抱きかかえると、しきりにニャーニャーいっていた。怖いんだろうと思い、刺激しないようにそっと川岸に座らせたが、目を離した隙にまたヨタヨタと川に入っていって、体が水に浸かるやいなやイルカかペンギンのような、結構なスピードで泳いでいってしまった。釣具屋の主人にその顛末を話すと「なんだあんたそんなことも知らんのか、いいかね、山には山猫、海には海猫がおるだろう、だから川には川猫がおって当然だろうが。」と言われた。
通常ならひと煮立ちさせて出来上がる甘酒を、毎日一回、千日かけて千回煮立たせる行事があることを知った。もともとは神社の神主が御神酒を飲んでしまい、村人にバレるのが怖くて手近にあった甘酒を蒸留しようとしたが失敗したのが始まりだという。毎年持ち回りで選ばれるニタテビトが、熊手を使って大窯の甘酒をかき混ぜる。千日火を絶やさないことが難しいが、以前に居眠りをして火を絶やしてしまった村人が神隠しにあい、それ以来皆怖がって決して火を絶やさないようになった。煮詰まらないよう毎朝神社の側にある井戸から水を汲んできて継ぎ足すが、六百日あたりから強い粘りが出てきて強烈な刺激臭を放ちはじめ、側にいると目が開けていられないらしい。千日目に窯を倒し中身を境内に撒く「大零し(おおこぼし)」が行われるが、この日は村の人口がいつもの十倍に膨れ上がり、熱気に包まれる。
「日本水山10選」という写真集を見つけた。解説によると日本国内の水山は少なくて、全部で13山しか確認されていない。その中から厳選した10山の写真を集めたのが本書だという。貴重な噴水時の写真が全山収録されているのが特徴だそうで、休水山の噴水口付近に観測カメラを設置して何年も粘った末に撮影に成功したものもあるそうだ。火山、湯山に比べ火傷の危険もなく、噴水もちょろちょろ出るような山が多いので山岳界では地味な存在だが、根強いファンがいるのだからこういう写真集も出たのだろう。隣に「日本の銘気山」という写真集もあり、訓練すると見えるようになるという「噴気」時の写真ばかりを集めた本だったが、素人の自分には山頂の噴気口から出る気は見えず、ただの山にしか見えなかった。

名前のホテルに泊まった。コンクリートの殺風景な建物で、フロント脇の土産物販売コーナーにはピーポ君のぬいぐるみや十手のキーホルダーが売っている。部屋に案内してもらうとドアの横に「取調室5」というプレートがついていた。部屋の中にはスチール製の事務机とパイプ椅子がふたつあり、手の届かないところにある小さな窓には鉄格子がはまっていた。机の上にはよく刑事もののドラマで目にする電気スタンドと「宿泊に際して」というタイトルラベルが貼られたクリアーファイルが置いてあった。ファイルの中身は非常口やモーニングコールの案内などに加えて、メニューがカツ丼のみのルームサービスというのがあり、オプションで「取調べ(ハード・ミディアム・ソフト)」というのがつけられるらしい。そのルームサービスだけは妙に説明が細かくて、ハードな取調べでは刑事役の従業員がお客様をお殴りすることもございますとか、ソフトな取調べは刑事がお客様の涙を誘ういわゆる泣き落としで、記録係の警官役が同室してもらい泣きいたしますので、お客様もできるだけお泣きくださいとか、写真入りで何ページにもわたって解説してあった。
天井をみていたらいつもよりも低いような気がしたので調べてみたところ「入眠時空間把握障害」の症状だということが分かった。昨年度の統計によると、寝るときに天井を低く感じる人が日本では3万人ほどいて、天井を高く感じるという人もほぼ同じ数存在するということだった。重症の人になると、部屋の隅に巻尺を伸ばして貼り付け、天井高が何メートル何センチかを確認してからでないと寝付けなくなるそうだ。屋外で星空を見ながら野宿するセラピーが有効な療法で、空気が澄んでいて星が見やすい地域で定期的に行われているらしい。
今は「おまかせパック」がブームになっているらしい。引越しおまかせパック、お掃除おまかせパック、オンラインショップ開業おまかせパック、受験勉強おまかせパック、焼き肉おまかせパックなど、様々な物事がパックになっているようだ。なかでも最近登場して話題になっているのが「人生おまかせパック」で、誕生、就学、就職、失恋、結婚、退職、余生、臨終と、一通りの人生体験を過不足無く安全に得られるというサービスだそうだ。
注文を済ませた。やがて料理が運ばれてきてさぁ食べようかと思ったら、隣のテーブルに座っていたサドゥー風の痩せこけた老人が自分のあいむかいに移動してきて、食べるのを待って話を聞けと言わんばかりに腕を掴んできた。切羽詰った目をしていたのでなんだろうと思うと老人は、「私のグルが2年前に死んだ。グルは死ぬ前に、『私はもうじき死ぬだろう。私が死んだ日時を記録しておきなさい。私が死んでから2年後の同じ日時、あそこの食堂に東洋人がやってくる。その東洋人はパロタを2枚注文した後に、クシャミを2回する。その方がお前の次のグルになってくださる方だ。』と言った。その遺言通りの人が現れた。そう、あなただ。どうか私のグルになってください。」と涙ながらに懇願された。
呼ばれている様な風体の子供が日干しレンガを手に持ちながら物凄く険しい目付きでこちらを見ている写真のポスターが通りに貼ってあった。よく見ると右上に写真の解説が書いてあり、「この子は学校に行かせてもらうこともできず、1日のうち14時間以上レンガ造りの仕事をさせられています。この国の半数以上の子どもが20歳まで生きることができません。」とあった。ずいぶん凄惨な境遇だなあと思っていると、ポスターの左下に「教訓:若い時の苦労は買ってでもしろ」と太字で書いてあった。写真の子供の心中と、ことわざの意味を考えていると混乱して目眩がしてきた。
商品の新聞広告を初めて目にした。「食器や便器のように、これからは陶器で寝る時代」というコピーの横に、真っ白い布団をそのまま陶器にしたようなつやつやした寝器の写真があった。寝器は、中に人が入って寝られるように掛け布団が大人1人の体の大きさだけ盛り上がった状態で固まったような形をしていた。見ているだけで触れたときのひんやりとした感触がわいてきて冬はつらそうだと思ったが、下部の注意書きに「温水ヒーターを内蔵しております。」と書いてあったので寒いということはなさそうだった。また陶器というとなんだか固そうで、寝ている間に体が痛くなるのではと思ったが「使うほどに体に馴染むフォルム」という商品説明からするとそうでもないのだろうか。
すごく太くて短いねじが売っていた。ずいぶん特殊なねじだなと手にとってみると、パッケージに「頭専用」と書いてあった。頭のねじが緩んでいるとか無いとか言う話はてっきりたとえ話だと思っていたが、実際に商品が売られているところをみるとそうではないらしいし、自分の頭はどうなんだろうと気になってなでてみたところ、売っているねじの直径と似たような大きさのふくらみがあったので、多分ここにあるんだなと思った。そしてねじを交換するときは頭皮を切るんだろうかと想像して寒気がした。