この学会は、生殖医療にかかわる「こころ」の問題について、医師・看護師・助産師・心理士・胚培養士など、さまざまな職種が集まって話し合う場です。

生殖医療を取り巻く環境や考え方が変わってきている今、あらためて心理的な支援の大切さを考える機会となりました。

 

 

 

今回の学会では、不妊治療の保険適用が始まってからの現状や、第三者提供型治療(ドナーの精子・卵子を使う治療)に関する法律の動き、そして実際にその治療を行っている医療施設の取り組みについての発表が多くありました。

 

 

 

 

今回はその中から、第三者提供型治療についてまとめます。

昨年、議員立法として提出された「特定生殖補助医療法案」は、最終的に廃案になったとのことでした。この法案は、ドナー精子やドナー卵子の扱いを法律で定めること、そしてそこで生まれた子どもが「自分の出自を知る権利」を持つことを明記することなどを目的としていました。

 

しかし現在、日本では第三者提供型治療についての十分な法整備はされていません。

海外では、たとえば アメリカ合衆国、フランス、イギリス など、多くの国で法律が整えられています。それに比べると、日本はまだ制度が十分とはいえない状況です。

日本では法律による明確な規制はありませんが、日本産科婦人科学会 はAID(非配偶者間人工授精)は認めているものの、提供精子・卵子による体外受精は原則として認めていません。

そのため、誰でも簡単に受けられる治療ではありません。ただし、厳しいガイドラインのもとで提供精子による治療を行っている医療施設もあります。

 

第三者提供型治療でとても大切なのは、「生まれてくる子どもが自分の出自を知る権利を守ること」です。
廃案になった法案では、開示されるドナー情報は血液型や身長など、限られた内容だけでした。

しかし実際には、子どもや治療を受けるご夫婦が知りたいのは、「どんな人なのか」という情報です。たとえば、なぜドナーになろうと思ったのか、どんな性格なのか、体質や病気の有無などです。

中には、ドナー本人が手書きで記入した紹介文を、将来情報開示の際に渡している医療施設もあるそうです。もちろん個人情報の扱いには慎重さが必要で、医療機関が間に入り、トラブルが起こらないように配慮しています。また、子どもが自分の出生の経緯を知ったときに心の揺れが起こる可能性を考え、支援体制を整えている施設もあるとのことでした。

 

さらに、「テリング(子どもに出自を伝えること)」についても、治療前から学ぶ機会を設けている施設があります。どのような言葉で、どのタイミングで伝えるのかを夫婦でよく考え、その内容をレポートにまとめなければ治療を開始できないという、非常に厳格なルールのもとで実施しているそうです。

 

 

当施設(名越産婦人科)では第三者提供型治療は行っていないため、実際の現場での課題に直接触れる機会は多くありません。それでも今回の学会を通して、多くの新しい学びを得ることができました。

 

第三者提供型治療は、条件を緩くしすぎても問題が生じますし、厳しくしすぎても別の問題が生じます。ドナー、治療を受けるご夫婦、そして生まれてくる子ども、そのすべてが心の面でも社会の面でも守られるような制度が整っていくことを願っています。

 

2026年2月 看護師 S