『あの人か』
『……知り合いか』
『養成所時代の同期』
『刃さんの……友達、だ』
最後の一言だけ、少し間があった。
『……信用できんのか』
『出来ねぇ』
刃は即答する。
『だが、腕と情報は本物だ』
『……危ねぇ奴じゃねぇの』
『危ねぇよ?性格が』
亮司が肩をすくめる。
『ニコニコしてて、何考えてるか分かんねぇタイプ』
『……最悪じゃねぇか』
『だろ?だから留守番』
『……俺、連れてかねぇのか』
一瞬、空気が止まる。
刃は玲を見る。
『……今のお前を連れて行く意味はない』
『……そうかよ』
言葉は荒いが、拒絶ではないと分かる。
『治せ。立てるようになったら話は別だ』
『……』
亮司が、さりげなく割って入る。
『明日な、雨宮さん変な事言うけど』
『?』
『悪意は無ぇ。ただ、距離感がおかしい』
『……お前が言うな』
『俺よりひでぇ』
刃が立ち上がる。
『……食事は終わりだ。明日は早い』
『了解ッス』
亮司も立ち、鍋の火を落とす。
『玲、明日は寝てろ。無理すんな』
『……分かってる』
『ほんとかぁ?』
『……多分な』
亮司は苦笑して、玲の頭をぽんと軽く叩く。
『じゃ、先に風呂な』
二人が居間を出ていく。
残された玲は、空になりかけた器を見る。
『……雨宮、ね』
知らない名前。
知らない世界。
(……俺に関係ねぇ)
そう思おうとして、
なぜか胸の奥が、少しだけざわついた。
翌日。
【田代商店】はシャッターが閉まり、
商店街はいつもより静かだった。
二階の部屋。
玲は布団に座り、包帯を確認する。
『……留守番かよ』
ふと、階下から「音」が聞こえた。
コツ、コツ、コツ──
(足音…)
『……』