トレース台を買って以来の
初めてのオリジナル作品が
完成しました。
タイトルは
【有限会社 斉藤牛肉店】
店の名前をそのままに。
このお店は私が小学生の頃から
お世話になったお肉屋さんです。
コロナ渦を耐え忍んだ後
経営されるご家族達の高齢を理由に
惜しまれながら店じまいをされました。
此処のお店で買った合挽き肉を使い
ハンバーグやロールキャベツを作ると
スーパーで買った肉を使用した物とは
雲泥の差の料理が出来ました。
此処のお店で漬けた豚肉の味噌漬けは
香ばしい風味が絶品でした。
此処のお店が仕入れる馬刺しは
遠方から足を運ぶお客様もいるほどの
知る人ぞ知る名品でした。
此処のお店で作られる自家製のお惣菜は
地元の人たちにとても愛されていました。
茹でた4ツ割りのじゃがいもを揚げた
昔ながらのイモフライ。
つぶし方が粗いため成形がいびつな
手作りコロッケは1個80円でした。
やけに薄っぺらいメンチカツは
日によって味つけが濃かったりも
自家製ならではの愛嬌でした。
ゴロンゴロンの柔らかいヒレ肉と
大ぶりの玉ねぎを交互に刺した
串カツは130円。
にんにくや生姜を使わない
鶏肉そのものの旨味を大切にした
シンプルな鶏の唐揚げも美味でした。
毎週末、足繫く通っていた私だったので
おじさんから店じまいを告げられた時は
ショックを通り越して途方に暮れました。
ただお金と品物を交換するだけではなく
お天気の話や町の治安情報だけでもなく
その週に起きた楽しいことや驚いたこと
悲しかった出来事や腹が立った出来事も
お店の人とお客さんの立場を取っ払い
色んな会話を交わして来たのでした。
日常生活の当たり前となってただけに
心の拠り所が無くなってしまう現実に
涙が出る前に心が空っぽになりました。
店じまいの最後の日。
おじさんの了解を得てお店の写真を
1枚だけ撮らせて貰いました。
絵の中の手前にある椅子の後ろ姿は
接客からお会計まで一人で切り盛りするため
順番を待つお客さん用に用意された物です。
私はよくこの椅子に腰をかけて
大好物のコロッケを頬張りながら
おじさんとおしゃべりを交わしました。
『お客さんの待合椅子として用意したのに
そこでコロッケを食べてくのは●●ちゃん
アンタだけだよ』
対面ショーケースの向こう側から
おじさんは頬杖をついて楽しそうに笑って
よくそう言いました。
私が初めてのオリジナル作品を
色鉛筆で描く日が来た時には
その在りし日の
【有限会社 斉藤牛肉店】を描く
ずっとそう心に決めていました。
自分で勝手に決めていた約束だけど
果たせた今、晴れやかな気持ちです。
