【再読】 夏目漱石『坊っちゃん』 新潮文庫
ふと目に留まったので、本日はこちらを再読。
古本なので表紙の見映えが悪いです。赤色がすごい褪せてる。
久しぶりに通して読み返しました。
それでは、感想の方を。
以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。
物語の大半は、坊っちゃんが教師として赴任した四国の学校が舞台となっています。
短気で思慮は浅いものの、義理堅く曲がったことを憎む正義漢の「坊っちゃん」。世間のいつわりやおべっかを嫌い、あくまで一本気に生きていこうとする彼の姿が鮮やかに描き出されている作品です。
主人公の一人称(地の文では「おれ」)視点で物語が進行していきます。口の悪い主人公による、ポンポンとリズミカルに飛び出すような文体が小気味良い。漱石作品の中でもかなり読みやすく、大衆的な作品です。国語の教科書教材などでもよく取り扱われています。
主人公・坊っちゃんの真っ直ぐさは、格好良い、羨ましいと思う反面、社会では生き辛いだろうなと思います。閉鎖的な田舎社会であれば尚更です。それでも、他人の不興を買おうとも意に介さず、己の正義を貫いて、世にはびこる不義に対して徹底抗戦しようとする彼の在り方はやはり眩しく感じられますし、読んでいて応援したくなるんですよね。
それにしても、寄宿生らの嫌がらせはマジで陰湿です。イナゴ事件も勿論ですが、それ以上に天麩羅蕎麦や団子を食べたことをこそこそ冷やかし続けていたのがイヤな感じです。坊っちゃんじゃなかったらもっと精神を削られて病んでいたのでは。
子供のいたずらと笑い飛ばすにはちょっと度を越しているように思うのですが、私が神経質すぎるのかな。学生たちからすればからかっているだけで、殊更に先生を傷つけようという悪意はなかったものとは思いますが、現代なら普通にいじめにカウントされるのでは?
この作品の悪役、同僚の赤シャツは、分かりやすい嫌な奴感があるのでキャラとしては結構好きです。外面が良くて卑怯で陰湿。腰巾着の野だも同様です。うらなり君の婚約者欲しさに色々と裏で手を回し、彼を左遷させたりしたのは最低でしたが、実を言うとその手腕には少し感心しています。上手いことやったなあ、という感じ。行い自体は最低ですが。
この二人が悪い奴らなのは間違いありませんが、実際のところ、一番問題なのは優柔不断な校長なんじゃないでしょうか。
子供の頃は、坊っちゃん全肯定の清が不気味で滅茶苦茶怖かったのを覚えています。何を考えているのか全く分からなくて苦手でした。今でも彼女の心情はよく分かりませんが、とにかく坊っちゃんのことが可愛くて、大好きなのだということは確かです。
彼女が坊っちゃんの成長をどのように見守ってきたのか、清視点で見ることができれば良いのですが。
割と短いので、パラッと読めてしまうのが良いですね。展開の早さ、文章のテンポの良さも読みやすさに拍車をかけています。
勧善懲悪ものなので読後感もスッキリです。
本日も良い読書時間を過ごすことができました。
それでは今日はこの辺で。