【初読】 ロビン・ベイカー『精子戦争 性行動の謎を解く』秋川百合訳 河出文庫
書店で見かけ、面白そうだったので衝動買いしました。
生物とセックスの結びつきについては大変興味があるのですが、この手の話題で語り合える相手がなかなか周囲にいません。下手するとセクハラになってしまう。
それでは早速、内容について書いていきたいと思います。
以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。
まあタイトルからも分かる通り、科学的根拠に基づいて書かれた真面目な作品です。
この作品ではまず、ヒトの本能は全て「子孫繁栄」という目的に帰結している、というのが前提になっています。その上で、ルーティン・セックスやマスターベーション、コンドームの使用、オーガズムや射精といった性行動が、精子と卵子の結合、つまり受精にどんな影響を与えているのか、生物学的な観点から解説していこう、という内容となっています。
一般向けとのことですが、専門用語も多く、やや難解な部分もあります。
全部で十一章、三十二のシーンから成っていて、内容は全て、具体例として日常のセックスを描いた【シーン】と、その場面の状況を分析した【解説】で構成されています。
例えばシーン12「マスターベーションの役割」では、まず男性が自宅でマスターベーションをしている【シーン】が描かれます。そしてその後の【解説】で、なぜ人はマスターベーションをするのか、マスターベーションによって精子の質や量はどのように変化するのか、ルーティン化したマスターベーションが女性とのセックス(妊娠の可能性)にどれだけの影響を与えるのか、というような説明が続いています。
「不倫」「避妊」等の他の単語に関しても同様に、【シーン】と【解説】による説明です。
【シーン】に関しては、ちょっとエロさがあるというか、まあもうほぼ官能小説みたいな感じで書かれているので、R18くらいはあるかもしれません。シーン20「乱交パーティ」のように割と過激なシーンもあります。ただ、メインの【解説】の方は完全に生物学的観点からの分析結果なので、色気はゼロです。
参考図版が白黒でちょっと見辛かったので、ネットで性器の断面図を探してスクショし、それで精細管や卵管の構造を確認しながら読みました。この作品は本文中に挿絵があるのではなくて後ろのページに図版が纏められているタイプなんですよね。ページを行ったり来たりしながら読むのも大変ですし、参考資料(図)は別途用意した方が、内容の理解もよりスムーズにできるのではないでしょうか。
ヒトの生殖機能や遺伝子と性的欲求の密接な繋がりなど、知らなかったことが多かったので非常に勉強になりました。何となく、受精・妊娠においては女性の方が少し優位なのかな、というように感じました。面白かったです。
やや断定的な文章なので、読む人によっては少し極端な論説に感じるかも。
サラッと読めるタイプの作品ではありませんし万人受けもしにくいとは思いますが、私は結構楽しめました。買って正解。
興味のある方はぜひ。
それでは今日はこの辺で。