野球選手は国家公務員の位置付けであるキューバにおいて、月給は一律40ドル(約4700円)。グリ | 億の細道

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1億円をようやく突破してきました。


果報は寝て待てというけれども、どうですかね?

 野球選手は国家公務員の位置付けであるキューバにおいて、月給は一律40ドル(約4700円)。グリエルがDeNAから受け取る報酬5億円は大金だ。そのうち7~9割を政府に税金として持っていかれると言われるが、それでも十分な額を手にすることができる。

 日本で治療し、年俸だけもらって、来年メジャーに移籍すればいいではないか? ある週刊誌の記者と話をしていて、そうした指摘を受けた。もっともだと思うが、これは日本人的発想だ。国際問題を読み解くには、相手の発想に立って考える必要がある。

 キューバを歩いていて感じたのは、「儲(もう)ける」という発想が日本人とは決定的に異なることだ。
 たとえば、現地の土産物屋ではTシャツが1枚約1500円で売られていた。「3枚買うから3000円にしてほしい」と言うと、「1枚1500円なのだから、3枚なら4500円ではないか」と値引き交渉の余地がないのだ。

 日本人的発想で言うと、値引きしても売り上げを立てて、利益を出したほうがいいと考えるのが一般的だ。だが、キューバ人にとっては1枚1500円できっちり売らなければならない。なぜなら、それがルールであり、さらに言えば、売り上げを立てても彼らが手にする給料は変わらないからだ。

 キューバの野球選手とミュージシャンは、政府から良質な自動車と家、近年普及しだした携帯電話を与えられるという。グリエルはすでに欲しいものは手にしており、たとえ外貨を稼いでも、物資不足のキューバでは使い道が少ないのだ。

 環境的要因を挙げると、キューバの医療は世界最高峰と言われている。グリエルは現地でけがを治し、その後、来日したかったのだろう。

 昨年、かたくなに日本食を拒否したように、自ら異文化に溶け込もうとするタイプではない。どうせ野球をプレーできないなら、過ごしやすいキューバにいたいと考えたのではないだろうか。

今回の騒動で失ったものと得たもの

 興味深い「事実」もキューバでは指摘されている。フランスのアルプス山脈にドイツ・ジャーマンウイングス社の航空機が墜落したのは3月24日。グリエルの来日予定だったのは、その翌々日だ。昨年、台風接近の際に横浜DeNAの遠征同行を拒否して「飛行機恐怖症」と診断されており、今回の来日拒否もこのためではないかという指摘もあるのだ。

 これは筆者の推測だが、右太ももを負傷していなかった場合、グリエルは来日していたと思う。そして米国との国交回復がなされ、来年、メジャー移籍と算段していたのではないか。しかしけがによって事情が変わり、今年、日本でプレーすることはやめた。来年、万全の状態でメジャーに行ったほうがいい。そう考えると、筋が通るのだ。

 ひとつ残念なのは、ともに来日するはずだった弟、ルルデス・グリエルJrは兄に劣らないほどの好選手だということだ。日本では「セットで獲得」と言われ、ハンバーガーについてくるポテトのように見られているものの、現地では5ツールプレーヤーと評価されている。ルルデス本人は「キューバで磨いてきたことがどれだけ日本で通用するか、楽しみにしている」と話していた。「日本食は勘弁してほしい」と苦笑していたが、日本球界の映像を取り寄せ、兄からも情報を得ていたという。