フィボナッチ数 | 億の細道

億の細道

1億円をようやく突破してきました。


果報は寝て待てというけれども、どうですかね?


 次の数列はどのような規則にしたがって数がならんでいるでしょう。
1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,・・・・・・

わかりましたか?

はじめの2つの1を除いたこの数列のそれぞれの数は,その1 つ前の数と2 つ前の数との和になっています。 2=1+1,3=1+2,5=2+3,8=3+5,・・・・・・

このような数列をフィボナッチ数列といいます。「フィボナッチ」とは12~13 世紀のイタリアに実在した数学者の名前です。

下の長方形は,フィボナッチ数列を図形の観点から理解するための図です。

<フィボナッチ数列の長方形>

はじめに1 辺が1の正方形を2つならべ,その横に1 辺が2の正方形,1 辺が3の正方形,1 辺が5の正方形を次々にならべてどんどん大きくなる長方形を作っていく。長方形のたて,横の長さはフィボナッチ数である。


この数列がなぜ‘有名’なのかというと,自然界の様々なところにこの数列を見出すことができるからなのです。次にその例をいくつか見ていきましょう。

<自然界に見出すフィボナッチ数列>

‘松ぼっくり’や‘パイナップル’のかさをよく観察してみると,右回りに8 個ずつ,左回りに5 個ずつ,または右回りに5 個ずつ,左回りに3 個ずつになっている。この,(8,5),(5,3)はフィボナッチ数である。 松ぼっくりを上から見ると…→

 

ひまわりの顔をよく観察してみると,真ん中にある種のならび方はらせん状に21 個,34 個,55 個,89 個・・・となっている。これらの数字はフィボナッチ数である。

 

木の枝の伸び方はフィボナッチ数列で明快に説明できる。
木の枝の伸び方は一般に次のルールで枝分かれすると考えられます。
ルール1:枝は成長期に2 つに分かれる
ルール2:枝が2 つに分かれるときに栄養は均等に配分されずに,栄養の多いほう,少ないほうとかたよりがある。栄養の多いほうの枝は次の成長期に2つに分かれることができ,栄養の少ないほうの枝は次の次の成長期に2 つに分かれることができる
この2つのルールにのっとって,枝分かれの様子を再現してみると下図のようになる。おのおのの成長期における枝の本数はフィボナッチ数列そのものである。

<フィボナッチ数列の数学的な性質>

このように,フィボナッチ数列は不思議なことに自然界に色々な形で顔をだしますが,一方,数学的にも大変重要な数列で,興味深い性質がたくさんあります。2,3紹介しますので,‘数学的な内容’に興味のある方は読んで みてください。

フィボナッチ数列の各項を2で割って,その余りを書きならべると,
1,1,0,1,1,0,1,1,0,1,1,0,1,1,0,1,1,・・・
となり,(1,1,0)という周期が次々にくりかえす周期数列になる。これを「周期3」の周期数列といいます。
同様に3でわると,
1,1,2,0,2,2,1,0,1,1,2,0,2,2,1,0,1,・・・
となり,これは「周期8」。
各項を11 で割ると,
1,1,2,3,5,8,2,10,1,0,1,1,2,3,5,8,2,10,1,0,・・・
となり,これは「周期10」です。

一般に,
「フィボナッチ数列の各項を5以外の素数で割ってできる余りの列は,周期数列である」
という美しい定理が成り立ちます。

~定理~
「フィボナッチ数列の中から2 つの数を取り出したとき,その2 数の最大公約数もフィボナッチ数列の中にある」

階段を登るとき,最後まで1 段ずつ登るか,最後まで2 段ずつ登るか,または1 段ずつと2 段ずつを取り混ぜて登るかの3 つに登り方を限定するとき,n 段の階段の上り方は何通りあるか,という問題の答えは次のようにフィボナッチ数列になります

  • 階段が1 段のとき→1 通り
  • 階段が2 段のとき→2 通り
  • 階段が3 段のとき→3 通り
  • 階段が4 段のとき→5 通り
  • 階段が5 段のとき→8 通り
  • 階段が6 段のとき→13 通り

0 段の階段の登り方を1 通りと考えて1を付け加えれば,きれいにフィボナッチ数列になります。無駄な知識ですが,階段を登るときの話題の1つくらいにはなるでしょうか・・・

<黄金比と黄金長方形>

さて,ここで唐突ですが,次のア,イの2 つの長方形を見て,どちらが美しいとかんじますか。


アの長方形のたて,横の辺の比は1:2で,これは何の変哲もないただの長方形です。しかしイの長方形は「黄金長方形」とよばれ,身の回りの様々な長方形(タバコの箱,教科書やノートの形,名刺,テレホンカード・・・)に利用されています。この長方形のたて,横の辺の比は約5:8ですが,この形は古代ギリシャの時代から,もっとも均整のとれた美しい長方形である,とされてきたのです。

このイの長方形から正方形を切り取ると,残った図形はどのような性質をもつだろうか?


黄金長方形は,上のようにして作った小さい長方形がもとの長方形とたて,横の辺の比が同じであるという性質を持っています。この小さい長方形からさらに正方形を切り取り,さらに小さい長方形を作るとやはり同じ形の長方形になり,この作業は永遠に繰り返すことができます。つまり黄金長方形とは,「そこから正方形を取り除いても形が変わらない長方形」である,と言えます。

この黄金長方形の辺の比を数学的にきちんと計算すると,次のようになります。


上の比を「黄金比」とよび,これもまた,古代ギリシャの時代から,もっとも均整がとれ,美しい比であるとされてきました。これがなぜ‘美しい’のか,これはどのような比なのか,といったところを次に見ていきましょう。

<黄金比と美術>

辺の比に黄金比をもつ黄金長方形は古来よりもっとも均整がとれ,美しい長方形であるとされてきました。それは世界的に有名な建築物や芸術作品に,意識的にせよ,無意識的にせよ作家たちに応用されてきました。

ピラミッド(エジプト)…ピラミッドの側面にある三角形の高さと底辺の半分の長さの比は黄金比です。

パルテノン神殿(アテネ B・C400)…この神殿を正面から見ると,たて,横の比はほぼ黄金比です。

ミロのヴィーナス(メロス島出土 B・C200)…均整のとれたプロポーョンのこの彫像は,身体の様々な部分に黄金比が応用されています。たとえば,ヴィーナスの頭のてっぺんからおへそまでの長さと,おへそからつま先までの長さの比は黄金比になっています。

<フィボナッチ数列と黄金比>

ここで,もう一度フィボナッチ数列を見てみましょう。 1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,・・・・・・

この数列のとなり合う2数の比を分数の形にならべて新しい数列をつくります。

一見なんの関係もないような2つのことがらが,実は密接に結ばれていたということが,数学ではよくあります。
上の点線でかこまれた数列は無限につづくので,最後にある値に到達して終わり,というわけにはいきません。
しかし,この数列は永久にある値に向かって,決してその値に到達はしないけれど,永久にある値にむかって進んでいくのです。その値こそ・・・

~「フィボナッチ数列」と「黄金比」との関係~
◎ フィボナッチ数列のとなり合う2 つの数の比は,黄金比に限りなく近づいていく

これが,今回の結論です。数学的に言うと,上の点線でかこまれた数列は黄金比に‘収束’するのです。このことは,高校数学の知識で証明できます。

最後にこのことを図形的に解釈してみましょう。始めのページにみた「フィボナッチ数列の長方形」のたて,横の辺の比はフィボナッチ数列のとなり合う2数の比と同じです。この長方形は,正方形を次々にたしていきながら無限に大きくなり,その形は限りなく黄金長方形に近づいていく,ということができます。