Works of Igor Stravinsky/Sony/Bmg Int’l

¥3,369
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 近年発売される廉価ボックスの数には驚かされる。ぼくがクラシック音楽のCDを本格的に集め始めた6年前まではnaxosやブリリアントクラシックスぐらいが廉価レーベルだった。学生のぼくにとっては貴重な存在であり、有り難かった。ブリリアントから出ていたブラームスやメンデルスーンゾの合唱曲ボックスがたったの4000円弱で売られているのをHMVのサイトで見た時の感動は、今でも忘れない。

 だが次第にクラシック音楽廉価業界にメジャーレーベルが参入するようになり、一枚100円、200円が当たり前のようになっていく。特にEMIやDGなどのメジャーレーベルが抱える名演はどんどん手頃になっていった。おそらくユニバーサルレーベルがグラモフォン111周年を期に発売した55枚組ボックスや、ハルモニアムンディの50枚組ボックスが出だしだった気がする。音質にさえ不満がなければ、だいたいの巨匠の名演は2万円もあれば50枚程度はすぐ買いそろえる時代になってしまったのだ。

 作曲家ものも同様だ。ユニバーサルの作曲家シリーズは毎年恒例となり、ブラームスから始まり、シューマン、リスト、ワーグナー、ベートーヴァン、バッハと続いていき、もはや最初の頃の新鮮さはとうに失われてしまっている。ブリリアントなどは100枚超級のバッハやモーツァルト全集を1万円を切る。ムソグルスキー、チャイコフスキー、ドヴォルザーク、テレマン、ヴィヴァルディ、Rシュトラウスからブリテン、ディーリアスまで・・・・とにかくだいたいの作曲家の大型ボックスは出尽くし、一人の作曲家の作品を網羅的に楽しむことができるのだ。実に幸せだ。

 ぼくはこの現状に不満を言うつもりはない。確かにネット上ではその安さへの苦言をしばしば見かけることがある。廉価CDは音質が悪いだの、演奏の重さがなくなるだの、と。しかし、音質にうるさいのは昔から一部のクラシック愛好家だけだし、芸術の価値を金銭ではかるのは一つの価値判断でしかない。関西人のように価格で評価が二転三転するわけでもないし、鳴っている音楽が重要なわけだ。高価なLPをすり切れるまできいて体にしみ込ませる昔の聞き方は素晴らしいと思うが、様々な演奏を浴びるようにきくことも現代のあり方として認めるべきだろう。

 だが、廉価ボックスに一つだけ苦言を呈するとするならば、ストラヴィンスキーのボックスがないのだ。これほどの大家のボックスをなぜレーベルはほっておくのだ!ストラヴィンスキーは春の祭典までの一連の傑作だけでいいのか!?けしからん!!

 で、見つけたのが上のストラヴィンスキーによる自作自演の22枚組ボックス。ストラヴィンスキーの知らない音楽がたくさん収録されている実に幸せなボックスである。なんといっても3000円という値段がいい。一枚あたり200円をきっている。うれしいものだ。ぐひひひ。

 明日届くみたいなので、音質についてなどはまたレビューします。内容がよければ最高のストラヴィンスキー入門ボックスになるはずです。

 以上、最初は固く、最後は一気にくだけて駆け抜けてみました。もはや何も驚くことがなくなった廉価ボックス市場において久々のうれしい発見でした。しめしめ