鳥 [DVD]/ジェネオン・ユニバーサル

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 音楽と映画は互いになくてはならない、蜜月の関係にある。つまらないシーンでも、音楽によって人々は涙を流する。特に最近の映画は良い絵がとれないからと、お涙頂戴の叙情的な音楽で無理矢理人を感動させようとする。このようなパブロフの犬的な本能に訴えかける映画を見ると、怒りしか湧いてこない。特に最近のドラマなんか、僕は怒りを通り越して、笑いしかこみ上げてこない。うん。

 逆に音楽をほとんど使わない映画もある。

 例えばヒッチコックの「鳥」は、音楽を使わず人々を映像だけで惹き付けた傑作映画だ。人々のパニックと恐怖が、映像だけで見事に描きだされる。人々が何の理由もなしに鳥に襲われるという摩訶不思議な物語を、映像だけで紡いだヒッチコックの手腕は感嘆せざるをえない。僕は映画に夢中になって、音楽がほとんど使われていないことを最後まで気がつかなかったほとだ。僕は映画を意識的に見ている人間ではないので、ヒッチコックの何が我々を釘付けにするのかわからない。編集か構図か脚本か。でも、そこに音楽という要素がないことだけは確かだろう。

 おそらく映像と音楽については数限りないほどの文献が存在しているだろうが、音楽に精通していると映画が二倍も三倍もおもしろくなると、映画を見ていて思う。そういえば、僕のブログにもよく登場する片山杜秀先生は、ゴジラの伊福部昭などの日本の映画音楽好きから音楽人生をスタートさせた。芸術とは、多角的に見れば見るほどおもしろく、奥行きが出るのである。