Philips Original Jackets Collection/Philips Original Jackets Collection

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 しばらく更新ができておらず、申し訳ありません。修論の中間発表に追われ、音楽をきく余裕なんて全くありませんでした。音楽って心身ともに健全でないと、心に沁み入ってこない。レビューを書く気も起こらず、今日までずるずるきてしまいました。

 というわけで、今日は先日届いたフィリップス55枚組ボックスを何枚かきいての所感を書きたいと思います。

 今までユニバーサルが発売した50枚級大型ボックスは、どれも素晴らしい内容だった。特に前回のデッカボックスは特に良かった。デッカの録音水準の高さを存分に堪能することができたし、思わぬ収穫もたくさんあった。たとえアンセルメの来日公演の出来が悪くとも、このCDからきこえてくる音はまぎれもなく超一級の名演だ。音が輝き、ラヴェルやドビュッシーの緻密な音楽の綾が見事に表現されている。これが録音マジックだったのなら、素直にその奇跡を受け入れたらいいじゃないか。

 しかし、今回のボックスの録音はどうだ。どれもこれも音が混濁し、広がりにも乏しい。LPとCDの悪い特性だけを併せ持ったような録音だ。フィリップスレーベルってこんな録音の悪いレーベルだったのか?

 なかにはマルケヴィチのチャイコフスキーの交響曲第三番などのマシなアルバムもあった。まだきいてないCDもあるから、この見解は覆されるかもしれない。でも、期待して取った20枚弱のCDはどれもことごとく裏切ってくれた。

 たとえばプレヴィンによるガーシュウィンの交響曲集。プレヴィンのピアノはきくべき価値があるだろうが、オーケストラの音の貧弱さといったら・・・ガーシュウィンの音楽史的な功績は、シンフォニック・ジャズ、つまりはジャズとクラシック音楽の融合にあったわけだ。普通の協奏曲のように、オーケストラに手を抜いてもらったら困るわけである。ジャズの自由奔放さを受けとめるだけの器量を、オーケストラは持たなければならない。ガーシュウィンのCDを語る上で必ず話に出る名盤だけど、噂倒れだった。

 小澤のシベリウスのヴァイオリン協奏曲と、オルフのカルミナ・ブラーナも落胆の度が大きかった。
 ボストン響とのシベリウスは、ぼくの心に何の波風も起こらなかった。ぼくは小澤と彼の手兵だったボストン響との演奏を、今思うと一度もきいたことがなかった。確かに、小澤は一般的にフランスものが得意だと言われるだけあって、オーケストラの音にはフランス的な線の細さと肌触りの良さがある。だけど、肝心の繊細さは今ひとつで、炭酸のぬけたサイダーみたいだ。彼がフランスものを得意とするのは、ミュンシュの遺産を継いだボストン響の伝統によるのでは、と訝しがりたくなる。指揮にたつとカリスマ性を発揮し、人々を惹き付ける舞台人である小澤には、フランスのような洒落っ気のある音楽よりも、ドイツ音楽のような巨大で迫力ある音楽が向いているように思える。

 日本の合唱史において欠かすことのできないアマチュア合唱団の晋友会合唱団と世界一のベルリンフィルとの共演は、録音が駄目だった。この録音からは、当時ホールつつんでいた熱気は全く伝わってこない。非情に残念だ。

 正直こんなアルバムばかりきいていると、気が滅入る。演奏よりも、録音の出来に問題があるのかもしれないけど、CDって録音で印象がかなり変わるからね。

 以上、久しぶりのレビューは愚痴で終わってしまいました。残念。