Conducts Brahms-Sym 1-4/Sergiu Celibidache

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 今日の一枚はチェリビダッケのシュトュットガルト放送響とのブラームス3、4番。

 去年ミュンヘンフィル時代の激安ボックスが発売され、再び脚光をあぶているように思えるチェリビダッケ。しかしチェリビダッケといえばミュンヘンフィルとのコンビが有名かもしれないが、それは晩年になってからのことである。ベルリンフィルを追い出された後彼はあちこちのオケを点々とした末、シュトュットガルト放送響で音楽監督を務めていた。

 チェリビダッケの録音嫌いはこの時も徹底しており、録音はあまり残ってはいないが、彼の死後DGからブラームスの交響曲全集が発売された。チェリビダッケが幻の指揮者として人気を得始めたのもこの頃からであり、この時期のチェリビダッケこそ彼の真の姿であると言う人もいる。

 今日紹介するのは、チェリビダッケの得意とするブラームスの交響曲から第三番と四番だ。これが最高の名演なのだ。おそらく僕はブラームスの4番の最高の名盤は何かと問われれば、クライバーでも、カラヤンでも、ミュンフェンフィル時代のチェリでもなく、シュトュットガルト響のチェリビダッケと答えるかもしれない。星のごとく存在するこの曲の名演たちを、一瞬でも吹き飛ばすような力強さのある見事な演奏なのだ。

 チェリビダッケの持ち味である水晶のように透明なハーモニーはこの時既に出来上がっており、実に美しい。しかしこの頃のチェリビダッケは、晩年の彼の代名詞である「異常に遅い」演奏をする指揮者ではなかった。演奏はエネルギッシュでキレがあり、テンポ設定はむしろ早いといえる。楽譜の音を全て克明に描き出そうとするドライな姿勢は健在だが、知性よりも情感を優先した、ロマン的な音が聞こえる。トスカニーニばりの全てをなぎ倒して行くような強烈な推進力は、晩年の彼には見られなかったものだ。

 もしもチェリビダッケがカラヤンのように録音好きでアピールがうまく、バーンスタインのように社交的であったならば、彼の境遇は少し違うかったのではないだろうか。晩年のチェリビダッケが突然変異のように現れたわけではなく、様々なスタイルを経験した上で生まれた結晶であることがよくわかる。このCDを是非手に取って、チェリビダッケの奥深さにぜひとも触れてほしい。

 下のリンクは、先日発売されたブラームスの交響曲が収録されたボックスだ。安い。この時代にクラシック愛好家になれて本当に良かったと思わせる品なので、ぜひ。

Symphonies/Sergei Celibidache

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