Toscanini Collection/Arturo Toscanini

¥9.096
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 今年最初のクラシック音楽CDのビッグニュースは、やはりトスカニーニの85枚組ボックスだろう。去年EMIが出したフルトヴェングラーの21枚組ボックスとは規模が違う(brilliantレーベルは100枚組ボックスを出したけど)。アマゾンのマルチバイ価格8000円と、一枚あたり100円を切る超破格。トスカニーニファンには天を仰ぎたくなるほどのハッピーな企画かと思う。

 ついでに、これを機会に少しトスカニーニについて考えてみました。トスカニーニについてはあちこちで語り尽くされているので、目新しいことは何もないけれども。

 トスカニーニは昨今フルトヴェングラーの圧倒的個性の前に押され気味のように感じる。トスカニーニのやり方はカラヤンやセルにも見られ、フルトヴェングラーのような唯一性はないからだ。よくあるトスカニーニ批判だろう。
 
 だから本ボックスを買って何枚ものCDを聞いても、トスカニーニの現代的かつ非感傷的で合理的なスタイルでは、目新しい驚きはあまりないんじゃないかと思うだろう。楽譜通りに演奏するなら、どの曲も同じように聴こえるはずだから。例えば彼のドビュッシーは全くフランス音楽らしくない(と僕は思うことがある)。

 しかし、トスカニーニに惚れ込んでしまう人が後を絶たないのは、その指揮法が斬新であったからだけではなく、強烈な個性を兼ね備えた指揮者であったからだ。要は彼が好きか嫌いかで決まる。それが少々曲本来の姿をねじまげる危険性を備えていたとしても、怖いもの見たさで、彼の演奏を聞かずにはおれないのだ。彼の演奏は細部を見て行けば、かなりやりたい放題やっている。そういう指揮者は歴史を見回してもなかなかおらず、やはり彼は希有の大指揮者であったわけだ。 

 以上、僕がトスカニーニに思うところをつらつらと。
 トスカニーニは嫌いではないのだが、このボックスを購入することを見送る。でも、この機会を逃したらもう手に入らない限定商品なので、トスカニーニファンは何が何でも購入することをすすめますよ。