ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」[1874年第1稿(ノーヴァク版)]/ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団 ヤング(シモーネ)

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 今日の一枚は、シモーネ・ヤングがハンブルク・フィルを指揮したブルックナーの4番だ。

 最近の僕は他人の非難をなるべくしないようにしている。頭ごなしに否定をするのは、生産的な行為ではないと思うようになってきたからだ。一回その演奏家を駄目と決めつけてしまうと、もう彼の良いところも見いだせなくなってしまう。それはどうなのだろうか。だからこのブログでも自分が良いと思ったCD以外は紹介しなくなった。

 だけど、今日のシモーネ・ヤングのブルックナーには苦言を呈さざるをえない。シモーネ・ヤングはおそらく現在一番知名度の高い女性指揮者である。日本でも音楽評論家の宇野が褒めており、レーベルも大々的に宣伝しているので、知っている人も多いかと思う。HMVのレビューでも18件も集めており、賞賛する内容のコメントが並んでいる。

 しかし、彼女はブルックナー指揮者としてどうなのであろうか。僕は世間の声に全く賛同することができないのである。
 彼女のブルックナーは勢いに任せた演奏だ。ブルックナーの綿密な建築美が全く浮かび上がってこない。弦は豪快な音をならしているが、他の音が埋もれてしまっている。また坂道を転がり落ちるように次のモチーフに突っ込んでいくため、ブルックナー休止が効果的に聴こえてこない。
 ブルックナーは感情的に、勢いで演奏しては絶対いけないと僕は考えている。設計図のようにくみ上げられた全体像を自らの知性によって解きほぐし、モチーフを丁寧に積み上げていかなければならない。特に第一稿は他の版に比べて音の数が多いので、より慎重でなければならなように思う。彼女の演奏からそのような姿勢は聴こえてこない。ぶっきらぼうにモチーフを次々と放り投げている印象を受ける。

 僕は彼女のブルックナーは2、4番と持っており、双方とも同じような印象を受けた。ただ、僕は彼女が無能な指揮者であると罵倒しているのではないことを強調しておく。彼女の方向性がブルックナーとは合っていないように思うのだ。

 一方僕がおすのが、同じく初稿でブルックナーの交響曲全集録音を進めているケント・ナガノである。ケント・ナガノのブルックナーを聞いてみてほしい!ブルックナーの交響曲が壮麗な建造物を連想するような緻密な曲であることがよくわかる。ブルックナーの抽象美は彼のような演奏によってこそ露になるものだと僕は思う。聴き比べればその違いはすぐわかるだろう。

双方SACDで録音状態も良いのだが、演奏の質は間違いなく後者の方が良い。そして初稿のパイオニア、インバルの演奏が素晴らしいことも付け加えておこう。

Symphony No 4 (Hybr) (Snyr)/Anton Bruckner

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名演コレクション:ブルックナー:交響曲全集/インバル(エリアフ)

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