年の始めにベネズエラ情勢について考える
新年早々、米国によるベネズエラ侵攻作戦・マドゥロ大統領拘束という衝撃的なニュースが飛び込んできました。
私たちが馴染みのない西半球での出来事だけに、唐突感が半端なかったと思いますが、すでに昨年秋頃からトランプ政権は頻りに警告していました。
その上で、綿密な計画に基づきCIAと特殊作戦部隊の連携により今回の電撃作戦を成功させたようです。
米国とベネズエラの位置関係
米国の行動は国際法違反 されど・・・
この軍事侵攻に対しては、国際法違反との批判が寄せられています。
外形的には、国連憲章が禁ずる「武力行使による一方的な現状変更」に他なりません。米国はこれまでにも、1983年のグレナダ侵攻、1989年のパナマ侵攻、2003年のイラク戦争など、国際法違反が濃厚な軍事行動を行なってきましたので、今更、面食らったようにそれを叫んでみても始まりません。
この際、私たちは、「現下の国際社会が法と秩序に基づいて整然と統治されている」というような甘い考えを見直す必要があるのではないかと考えます。
今回の米国の行動を批判するのは簡単ですが、現実の国際政治はそれだけでは済まない複雑怪奇なものです。
もちろん、今回の事案がロシアの侵略行動や中国の台湾に対する強硬姿勢へどのような(悪)影響を及ぼすかについても、十分念頭に入れて慎重に対応する必要があるでしょう。中露が勢いづくかもしれませんし、戦争の長期化のリスクに対しより慎重になるかもしれません。
トランプ政権は、なぜ軍事作戦に踏み切ったのか?
ですから私は、米国トランプ政権がこの軍事作戦に踏み切った理由や、それによって達成しようとしている戦略目的が何なのかをしっかり把握することが、より重要ではないかと考えます。
米国に、マドゥロ大統領を排除せねばならない差し迫った理由があったとすれば、少なくとも次の4つに集約できるでしょう。
①国家主導の麻薬密輸による米国社会への脅威、
②世界最大の埋蔵量を誇る石油をテコにキューバやニカラグアなどと反米枢軸を形成し米国の利益を毀損(石油利権の確保とも言われる)、
③大量移民の国外流出(過去10年で800万人に上る!)を招いたマドゥロ政権下の圧政と経済崩壊を食い止める必要、
④マドゥロ政権を通じて西半球への浸透を図る中露に対する警告、
など。これらの理由には、それぞれ理解できる点もあります。
戦後の国際秩序が壊れ、19世紀的な大国間の勢力均衡に
最後に日本の対応ですが、まず大前提として、現下の国際情勢を正しく認識する必要があると思います。
ズバリ言えば、好むと好まざるとにかかわらず、戦後のリベラルな国際秩序は崩れ始め、急速に19世紀的な「大国間の勢力均衡」政治に移行しつつあるということです。それを前提に、日本の外交・安全保障戦略を練り直さねばなりません。
勢力均衡を主導する「大国」とは、差し当たり米国、中国、ロシアということになります。それぞれが独自の「勢力圏」を志向し、ディールを繰り返すイメージです。問題は、ロシアの勢力圏と欧州大西洋諸国の利害が衝突し、中国の勢力圏とインド太平洋諸国の利害が衝突することです。米国は西半球を勢力圏としつつ、欧州大西洋とインド太平洋に関与して、中露の影響力拡大を牽制してきました。
日本は、「戦略的自律」の確立を目指せ
日本はその中で、米国との同盟関係を基盤に自国の平和と安全と繁栄を図ってきたわけです。
しかし、主に米国内の事情から、これまでのように米国が率先して同盟国支援を買って出てくれるような「おめでたい時代」は終わりつつあります。この認識こそが最も重要なポイントだと思います。(ですから、今回のことで米国を批判するだけでは済まないと申し上げました。)
日本がなすべきは、この勢力均衡の厳しい時代にあって、自らの生存と繁栄を図るためには、(昨年来繰り返し述べてきたように)「戦略的自律」を確立することです。戦略的自律のためには、地力をつけ(総合的国力の増進)、同志を増やす(同志国連携の深化と拡大)ことに尽きます。
今年は、戦略3文書改定の重要な年です。上述のような認識に基づいて、戦略的自律を確立できるような総合国力の増進と経済安全保障や情報力、外交力、国防力の強化を加速させる3文書を策定して参ります。
2026年大國魂神社初太鼓
衆議院議員 長島昭久拝

