第四章平戸生月島

① 逃走

池沢と小山は永山官房長官が重症を負ったものの命は助かったことを知って残念がって、再度挑戦する為にここは逃走して、時期が来るときを待つことにして、何処かに逃走しようと計画した。
小山の出身地は長崎県の平戸の生月島(いきつきしま)だった。

そこに二人は身を寄せることとして、高速道路は検問や、監視システムがあるので、真夜中に福岡市から、西九州道路を通り、釣りに行くような格好をして盗んだトヨタランクルプラドで唐津から伊万里経由で平戸方面に向かった。
伊万里をぬけて国道204号を進み松浦バイパスを通っているとき後ろから猛スピードで追って来た日産スカイラインを横に少し避けて先に行かせたのだった。
先程、休憩がてら寄った伊万里の釣具店で、今夜は長崎県警のスピード違反の取り締まりが実施されていることを聞いていたので、わざと先に行かせたのだった。
スピードが出せる松浦バイパスが終わり国道204号に入ると、道は軽い登リ降りとなり、左手に湾曲して行く下り坂の途中で、長崎県警の速度検知器の赤いランプをちらりと目にした助手席の池沢は、思わず速度計を覗いた。
メーターは42kを指していた。
ここは60kのバイパスをぬけて直ぐに40kに制限された警察の交通安全課の点数稼ぎの最適な場所の一つの所だったのです。

「スピード出すなよ！」

と小山に声をかけた時、横の広場に先程のスカイラインと数名の警察官の姿があった。

「危いな、あのスカイラインに感謝だ。」

「今は夜中の１時15分だぜ、嫌らしい所で検問していやがるな、あそこは誰でもスピードが出る所だ、しかもこんな時間に。
肝を冷やしたな！」

松浦発電所前を通過してもう一山越えて田平の平戸口にたどり着く所まで来て、

「ここまで来れば、もう大丈夫だ、橋を２つ渡れば俺んちだ。」

と小山が安堵の声をあげた。
平戸大橋を渡って直ぐに左手に曲がり降りて、平戸公園に入り、車を停めた。

平戸大橋

「ここで朝まで仮眠をとろう。
明るくなったら生月島に渡ろう。」

「アアーア、疲れた！」

当りが明るくなったのに気付き、小山が助手席の池沢を起こした。

「おい、起きろよ、出発するぞ、その前にトイレに行っとこう。」

と、車を降りて公園のトイレに向かった。

平戸市内に入り、地方主要道路19号を西に向かい生月大橋を渡った。

生月大橋

そこで運転手の小山が車を急停止させた。
まだ眠気の残っていた池沢は目が覚めた。

「ヤバイ！検問していやがる。」

しかし、生月大橋を渡り終えての一本道は曲がる所が無い。
検問の場所は大橋を渡り終えて直ぐの生月観光協会売店前であった。
車はこのまま進むしかない、バックしたら怪しまれる。
しかたなく、警察官の止まれの合図に従い、車を停めると、窓を開けて、

「釣り船の時間に間に合わないのだが、どうしたのですか？」

と惚けて聞いた。

「免許書を見せて下さい。」

と寄って来た警察官が免許書の提示を求めた。

「車のエンジンを切って、二人伴、降りて下さい。」

「逃げろ！、ばれたようだ！」

と、車のナンバーを確認している警察官を見て池沢が叫んだ。

小山はとっさに急発進して前にいた警察官を一人はねて走り出した。

「追いかけろ！」

と、云って数台のパトカーがプラドの後を追った。
二人の乗ったトヨタランクルプラドは地方主要道路42号を北に逃げて行った。
パトカーに追われて行き止まりの大碆鼻(オオバエ)灯台にたどり着いて、その先は断崖になっていた。

車を降りた二人を追って、パトカーから降りてきた警察官が拳銃を構えて迫って来ていた。

その中に私服の江崎真司係長と宮下雫刑事の姿があった。

「危ない皆臥せて！」

と雫が大声を出して身を屈めた。

直ぐに「ドン」と地響きと同時に追い詰められていた池沢と小山の身体が粉々に飛びちっていた。
自爆装置と爆弾を小山が背負っていたのだった。

(つづく)

フイクション怪奇小説・さニハ司五島朱鳥「2020年・夏」 第四章 P１

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