フライヤーが出来上がりました!!

菊地成孔マネージャーの速報Ⅱ

中山康樹氏からコメントもいただきました!



菊地成孔マネージャーの速報Ⅱ


中山康樹氏の原稿はこちらです。




 2010年は、マイルス・デイヴィス『ビッチェズ・ブリュー』40周年ボックス・セットと菊地成孔『闘争のエチカ(上下巻)』を除き、マッドリブ『メディシン・ショーNo.8:アドヴァンスド・ジャズ』のジャケットを超える音楽はなかった。

 17761225日、アメリカ独立戦争の只中、ジョージ・ワシントンは大陸軍を率い、デラウェア川を渡った。この英断によって、大陸軍はニュージャージー、トレントンにおける戦いで、ドイツ人傭兵隊を急襲することに成功した。

 1851年、ドイツ人画家エマニュエル・ロイツェ、凍てつくデラウェア川を颯爽と渡るワシントンと大陸軍の雄姿を油彩画『デラウェア川を渡るワシントン』(Washington Crossing the Delaware)として完成させる。その作品は、現在、ニューヨーク、メトロポリタン美術館に展示されている。鑑賞者のイヤホンからは、以下のような解説が流れている(と勝手に想像する)。

 「横6.5メートル、縦3.8メートルの大きなこの作品は、深夜の出来事であったにもかかわらず、雲の間から彼らを祝福するかのように日の光が射していたり、1776年の時点では使われていなかった初期の星条旗が風になびいたりしていますが、しかし先頭で胸を張るジョージ・ワシントンは勇ましく、頼れる指揮官という風情です。川面の氷が、この夜の寒さを表現しています」

 同じく1851年、エマニュエル・ロイツェが『ハドソン川を渡るジャズ野郎ども(Jazzcats Crossing the Hudson)』という油彩画を描き遺していたことは、知られていない。あちらではワシントンが指揮官として描かれているが、こちらではマイルス・デイヴィスが指揮官然として船上前方に立ち、マントをなびかせている。大きな黒いサングラスの向こうの視線は、ニューヨークを見据えている。マイルスの後方には、副司令官だろうか、ジョン・コルトレーンが至上の愛を胸に立ち、その脇を参謀なのだろう、サン・ラとチャールズ・ミンガスが固めている。そしてセロニアス・モンク、ハービー・ハンコック、エリック・ドルフィー、オーネット・コールマン、スティーヴ・キューン、ファラオ・サンダース、アーマッド・ジャマル、デオダート、フィル・ラネリンが同乗し、ある者は櫂で漕ぎ、ある者は風で飛ばないよう帽子を押さえている。登場人物に一貫性がないとする指摘は野暮というものだろう。消息筋によると、この知られざる謎の絵画は、ウィキペディアにおいて、「この絵画は、ジャズ・ジャイアンツがニューヨークに到着するシーンを描いたもので、驚くべきことに、登場するミュージシャンたちが生まれる数十年前の1851年に描かれた」と解説されているという。

 マッドリブが2010年に発表した優に10枚を超える新作のなかの『メディシン・ショーNo.8:アドヴァンスド・ジャズ』のジャケットに、この絵が発掘され、使用された。聴くまでの1週間、ジャケットを眺めながら、日本人を入れるとしたら誰だろうと考えるまでもなく、菊地成孔の顔が浮かんだ。そして8日後、聴いてすぐに、マッドリブと菊地成孔が至近にあることを理解した。解体、再構築、諧謔、放置によるジャズ/音楽史の再読と新たな可能性そして発展への挑戦並びにマイルス、ミンガス、オーネットその他ジャイアンツへの少女のような思慕。

 菊地成孔は、本来であればマッドリブがそうしているように、さまざまな変名あるいはプロジェクト名で成すべき仕事を「菊地成孔」という、たったひとつの名前でやっているのではないか。ジャズ・ミュージシャン、サックス奏者、作曲家、著述家、スピーカー、教授、研究者等々、これらをひとつの名前で踏破せんとする、その「自然な不自然さ」に我々が慣れるということは、どうやら永遠にないように思える。

 届けられた資料には、「同一の呪法による二つの儀式~菊地成孔と菊地成孔によるダブルコンサート」とある。一日が、ペペ・トルメント・アスカラールによる「エロス+虐殺」、一日がデートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンによる「巨星ジークフェルド」ということは、よくはわからないが、菊地成孔が2人ということか。

 マイルス・デイヴィス生誕85年・没後20年の2011年初春、あえて「マイルス愛」のトリビュートな特記はされていないかもしれないが、個人的には、菊地成孔率いる大陸軍がそのような思いと音楽的展開を提示しつつ、ミシシッピ川を渡り、凍てつく身体を揺さぶってくれるであろう二夜を楽しみに待ちたいと思う。

中山康樹



菊地成孔マネージャーの速報Ⅱ


渋谷JZ Bratでの濵瀬元彦 THE ELF ENSEMBLEに参加してまいりました!

次回は4月11日(月)です。お楽しみに!!


DCPRGが富山でのイベント「ヘリオスグルーヴィーナイト20」に出演いたします!

詳細はこちら からどうぞ!


旧年中は菊地成孔への多数のご声援、まことに有難うございました。

今年も宜しくお願い致します!


今年はこちらのブログにもこまめに写真をアップしていこうと思います。

お楽しみに!