『奥田さんの絵、好評ですよ!この間もロッカー風のサラリーマンの男性が奥田さんの絵をジッと見つめて、泣いてらっしゃいましたよ!いやぁ凄いですね~』




俺はそう言った後、電話を切った。


しかし、昨日の会議でつい口からでまかせで『うちのプロジェクトマネージャーと会うか?』なんて言っちまったけど、ホントに来たらどうしよう・・・



・・・





・・・・




はは・・ま、まさかな!もうあいつらもなんだかんだで大人だしな!

間には受けてないだろう・・






『きよっちゃん~?きよっちゃんにお客さん来てるよ~』



『あ、はい!お客さん?』




『うん・・なんか、ちょっと変な格好してるけど・・・』




『変な格好?僕、今日ってアポありましたっけ?』




『いや・・・たぶんないと思うけど・・・』




『誰だろ・・・?』




『二人いて、一人は白衣着てるよ・・』







・・・・







・・・・






『ま、まさか・・・・・』






『先輩・・・もう一人は・・・・







フラスコ持ってませんでした・・・??』



『きよっちゃん、やっぱ知り合い!?フラスコ持ってたよ!』



・・・






・・・






 マジで来やがったああ!!!




『すんません先輩・・・知り合いです・・・』





『あ、そ、そう・・・知り合いなんだ・・・』



『いや!勘違いしないで下さいよ!めちゃくちゃ浅い関係なんです!!』





ああああ・・・最悪だ~!あいつらマジできやがった!!





しかも何で白衣着て、フラスコも持ってきたんだよ!!






『あ、清いた~!!』



『お!清!ちゃんと働いているか!?』



『お、お前ら何で勝手にここに入って来てんだよ!!』



『あ?勝手じゃねーよ、そこの人に案内してもらったんだ』



『そこの人?』




『きよっちゃんの友達?』




『渡辺先輩!!すんません!こいつら勝手に!』


『いいよいいよ、私がここまで連れてきたんだから。ね~?たしか武志君と宏君だっけ?』



『はい!私、武志24歳であります!』


『私も、24歳、宏と申します!』


『お前ら声がでかいよ!!』



『二人共、元気だね~。ところで武志君何で白衣着てんの?』



『お気づきになりましか?』



『そ、そりゃあね・・』




『そうです、何を隠そう私はもうじき発明家を応援する会社を作るんです!』



『へ~、凄いね~。きよっちゃんも一緒にやるの?』


『そそそそそんな訳ないじゃないですか!!!』



『何~!清!』



『い、いや!その、、』



『ごめん、なんか私気まずい事聞いちゃったかな・・』



『いやいや!先輩は全然悪くないです!!はい!』



『そっか、それならいいんだけど。ま、私はこれで失礼させてもらうね。じゃゆっくりして行ってね武志君、宏君』


『はい!かたじけない!』



『お、お前!先輩に向かって!!』




最悪だ・・・




『ふふ、面白い友達ね』



『すいません先輩・・・』



『ところで、武志!プロジェクトマネージャーさんとやらはどこにおられるんだ?』


『バカ!お前!!』



『プロジェクトマネージャーがどうしたの?』



『いや、先輩、これには訳がありまして!!』



『はい!実は今日、我々はここの会社のプロジェクトマネージャーさんとお会いさせてもらう約束になってるんです!』


『今日?』


『はい!今日であります!な?清!』



『先輩・・・これを話すと長くなるんですが・・』



『私なら今、手が空いてるから別にいいけど・・』


『せ、先輩!』


 

『渡辺先輩とやら、申し訳ありませんが我々はプロジェクトを進める為にはるか彼方からやってまいりました。お気持ちは嬉しいですが、今はそなたと話す事は何にもありませぬ。。かたじけない・・』


『お前、失礼すぎだろ!!』



『あはは!面白いね、武志君!』



『拙者は、芸人を夢見た時期もあるので、そのせいもあるのかと』


『間に受けてんじゃねーよ!!!』



『武志君はびっくりだと思うけど、私こう見えてプロジェクトマネージャーなんだ』



『そうそうそう、こんなに若い女性の方がマネージャーでビックリ。はい、宏!若い女性とかけまして~』


『かけまして~』




『かけまし・・・・』





・・・






・・・







えええええっっ!!!




『武志・・宏・・お前らホント勘弁しろよな・・・』



『二人共、驚いてるね』




『ほんっっっと!!すいません先輩!!』



『き、清!!これは誠の事か!!』



『ほんとだよ・・先輩は最年少マネージャーなんだ。』



『ごめんね、私けっこう頼りないからよく間違えられるの』



『ま、マジっすか・・・』




『ところで、きよっちゃん。このお二人は本当に私に会いに来たの?』


『いや、その・・・




は、はい・・・そうです・・昨日、そんな話をしていてつい俺がウチのプロジェクトマネージャーに会ってみるか?って言ったらホントに来ちゃった・・みたいな・・・』



『話しって、その会社を作るっていう話し?』


『は、はい・・・なんかこの二人、やけに盛り上がっちゃって会社を作るって聞かないんです・・そんなに世の中甘くないって言ってんですけど・・しかも発明家を応援する会社って・・・』


『面白いじゃん』



『ですよね、面白いですよね~



・・・





せ、先輩!?』



『うん、面白そうだね。』



『先輩!本気で言ってんすか!?』



『うん。本気だよ。』



『先輩・・・っていうか、あいつら先輩がプロジェクトマネージャーだって事にまだ固まってるじゃないですか!』



『おい!武志!宏!聞いてんのか?』



・・・



・・・・





『っつあい!!あ~ビックリしたあ!!まさか渡辺先輩が・・・なぁ?宏・・・』


『ああ・・これには驚いたよ!!今年の流行語大賞だな!』





流行語大賞・・・???






『な、何言ってんだお前ら・・・』





『ほんと変わった二人だね~』



『拙者は、芸人を志した時期もあったのでそのせいでは無いかと・・』


『さっきも聞いたよ!!』


 

『その発明を応援する会社を作るっていつ作るの?』


『はい!材料が揃えば明日にでも!!』








材料て・・・・工作かい!!




『材料かぁ~、なかなか材料を探すのは大変だもんね』




先輩・・・優しいなぁ・・・





『じゃあ、材料が見つかったらまたおいでよ!私が作るの手伝ってあげるからさ』


『せ、先輩~??』



『本当ですか!!かたじけない!』



『約束ね』



『約束って先輩!!こいつら、本気ですよ!!』




『本気だから、手伝ってあげるんだよ。』



『え?』




『きよっちゃん、この二人がここまでわざわざ来てくれたっていうのは本気だからだと思うよ。熱い思いがあるんだと思う。

よくいるじゃん?あれしたいな~とか、夢があるんだ~言ってるのに、行動も何にもしない人って。そんな人は絶対に成功しないでしょ?でもこの二人は昨日の今日で、ここまで来てるんだから、凄い行動力だよね』



『そ・・それはそうですけど・・・』



『その行動力がすっごく大事なんだよ。プロジェクトも一緒。怖いけど、勇気を出して動く事が成功の第一歩なんだから。』




『・・・・先輩・・・』




『なぁ、、宏、、、清のやつ怒られてるんか?』



『ああ、、っぽいな』



『お前らの話しをしてんだよ!』



『あはは、ほんと変わった人達だね』



『先輩、変わった人好きなんですか?』



『うん!大好き!』



『すっごい発想してくれるでしょ?わくわくするじゃない!』



『でも、ほんとすいません・・』



『何で?こんな面白い人に出会えて素晴らしい事じゃない』



『そう言っていただけると有難いです・・・』






それから、俺と武志と宏は先輩にお昼ご飯をおごってもらった。


世の中は何が起こるか分かんない・・・



まさかの状況・・・



武志と宏は、その後嬉しそうに家に帰っていった。


先輩に色々アドバイスを受けて・・



本当に、会社を作るのかな・・・



先輩が、まさかの好感触。



あいつら・・・もしかして天才なのかな・・・




そんな事を考えていると、大阪支社に転勤して姫野君から電話がかかってきて我に返った。



どっちにしても、あいつらが変わったやつらだって事。


まだまだ童貞も卒業できそうにないって事。



はは・・





ほんと・・


変わったやつら・・・




数年後・・・本当に俺達3人がでっかい会社を作って成功するなんて誰もしる由はなかった・・・とさ。










~拝啓エジソン様~



     終わり

テス!



テス!




あ~!





・・・








オホン!



『え~今日みんなに集まってもらったのは他でも無い、チーム『タケシ』にとって重要なプロジェクトが動きだした為だ。』



『よ!武志!』



『・・・』






『チーム『タケシ』が金持ちになる最短の方法、それは発明家になる事である!』



『よ!男前!』






『そして、特許を取りまくって金をいっぱい稼ぐ!!』





『サイコー!!』








・・・








・・・・









・・・・













『以上!解散!!』




『早っ!!!!!』



『なんだ、清?』





『な、なんだじゃねーよ!そんな事、電話で聞いた事じゃねーかよ!こんなたいそうに部屋まで飾り付けしちゃって、

それだけなんてありえーねーよ!』



『不満そうだな、清』



『当たりめーだ!こちとら仕事をわざわざ切り上げてきてるのに、それだけなんて不満に決まってるじゃねーか!』



『・・・・』





『よし!お前がそこまでいうなら、俺も鬼じゃない。明日みんなに話そうと思っていたが今日は特別だ!今日話してやるとしよう!よかったな清!』



『やったなー清!』




『・・・・喜んでいいのか分かんねーよ・・・』




『オホン!実はこの間の話なんだけどさ、俺は普段通りに街頭で募金集めのバイトをしていた訳よ。恵まれない人達に愛の手を~!そこのおばあちゃんには孫の手を~なんつって!』


『あははははははは!!』





『・・・・』




『そしてらさ、変なオッサンが俺に向かって言う訳!俺っちにはそのお金は入らないのかプ~?ってよ!』


『何だそのオッサン!頭おかしいんじゃねーのか!?』



『やっぱりお前もそう思うか宏?だよなぁ、いや俺も直感で、こいつはおかしいっって思ったんだよ!だから言ってやったよ!

お前にやる金なんて一銭もねーよ!!あんまふざけてっと、殴るぞこのバカ!ってさ。』


『すげー!』


『そしたら、そいつどうしたと思う?』



『どうしたんだ?』




『そいつ泣きながら、じゃあ僕のお金で世界を救ってくださいプ~!つって一万円札出してきやがったんだぜ!』


『なんだそれ~!』



『だから俺はまた言ってやったよ!』


『何て?』




『お前ごときの金で世界が救えるほど、甘かねーんだ!死ね!!ってな。』


『マジか~!!すげーな武志!!』



『そう言ってやったら、おしっこちびって逃げていったよ』



『ちげーね~』




『いやいや、絶対ウソだろそれ?』



『何だ、清。発言は挙手だぞ!』


『初めて聞いたよ!そんな事。』




『で、俺はそのときにピーンと来たんだ!そうか!さっきみたいなヤツの為になんか発明できないか?ってな!』



『さっきみたいなヤツの為の発明?』



『ああ、この世は寂しい世の中なんだ。だからあんなヤツがでてくる。そんなヤツの為を救ってやれるような施設を作ってやろう!

ってな』



『スゲー!武志!!』






・・・





・・・・







施設を作るって・・・・










発明じゃねーじゃん!!






『どうだ宏?あっけにとられるとはこの事だっ!て言いたそうな顔してるな』


『ややこしい!』



『あ、ああ・・正直ビビッタよ!お前の天才ぶりに天晴れだ!』



『これだひとつ発明が出来たな!』


『は、は~い・・』


『はい!清君!』



『それって、発明じゃないと思うんですけど~』



『何?それはどういうイデオロギーだ?』


『イデオロギー?何言ってんだお前。いや、それは発明じゃなくて、事業計画だと思うっていってんの』



『宏、聞いたことあるか?あのイデオロギー?』



『いや!初めての見解だ!』



『・・・・何言ってんだお前ら???』



『とにかく!発明じゃねーでしょ!?』



『これが発明じゃなかったら、何が発明なんだ宏?はい!宏さん!発明とかけまして~』

『かけまして~』





『・・・うぜー!!』




『いいか清。お前の言いたい気持ちも分かる。だけどな、あのエジソンだって、発明だけじゃくって会社だって立ち上げてるんだぜ?世界でも有名なあのゼネラル・エレクトリックって会社をな』



『いや、それは知ってるけど。』



『ちなみに、最近はエジソンじゃなくってエディスンと呼ばれる場合もあるみたいだ』


『・・・・まぁ、どっちでもいいけどさ、特許を取るんなら会社を先に作っても仕方ないでしょ?』


『会社を作る?』



・・・






・・・・







・・・・





そうか!!会社を作る!!そうか!!分かったぞ!!!』



『びっくりした!』




『いいこと思いついた!!いいか?発明をする人を応援する会社を作るんだ!!で、その会社から生まれた発明のいくらかが俺たちの給料になる!』



『すげー!!すげーよ武志!!』



『資金は?』



『資金は俺たちがバイトをして稼ぐんだ!』


『バイト~?』



『そのお金で満足いく発明をしてもらうんだ!そしていい発明が生まれたら、俺たちにもお金が入るじゃねーか!』



『お、お前にしては普通の事言うから驚いたけど・・』




『清!童貞のパワーをなめるな!』



『自慢すんなよ・・』




『これは来たんじゃねーか?』



『来たんじゃねーか?って穴だらけだよ・・・』




『いや!これは成功する!!マジやばい!!!』




『清!ぜったい成功するぞ!!』


『清!!』



『清!!!』





『・・・清!って言われても・・・





分かったよ。じゃあ明日、俺の会社のプロジェクトマネージャに会ってみるか?うちは最近、上場した会社だけどまだまだベンチャーだ。色々、相談に乗ってくれると思うよ』



『あの、ナグ&ワークって会社か?』


『ナグ&ウォークだよ!!』



『そ、そうか!やってくれるか清!!』


『さすがだな清!!』





『ちょっと、、っていうかかなり嫌だけど仕方ねーじゃん・・』



『そ、そうか・・プロジェクトマネージャーか・・へへ・・武者震いするぜ・・・』


『すげーな武志・・半端じゃねーよお前!!』






拝啓エジソン様、俺はいろいろ遠回りをしてきましたがどうやら、ついにこれ!ってものが見つかりました。

発明を応援する会社。


発明家という道ではなくなりましたが、あなた様が作ってこられた歴史からヒントをいただいたようなものです。

トーマス・アルヴァ・エディスン様。


あなたは私の神様であります。






『ところで、武志。街でからんできた変なヤツを作る施設はどうなったんだ?』

『却下!』


『早っ!!』



失礼しました、エジソン様。横で下々が騒いでおりますがお気になさらないで下さい。

明日、清の会社の人に会ってプロジェクトを進めてまいります。




それでは、また明日報告いたします。










『あ~・・・』





・・・







・・・・
















憂鬱だ・・・















拝啓エジソン様~ラクロス~

















俺の名前は清。


今は感動提供の会社に勤めている。



成績もボチボチで、そんなに不自由なく過ごしていた。





あの日までは・・・








武志と宏・・・







あいつらに変なプロジェクトを任命された、あの日までは・・・







そもそも、あいつらとの出会いは高校の時で、俺ら3人は同じクラスになった。

席が近かったという事もありよくつるむようになった。


今でも忘れないんだけど、武志との初対面でヤツが俺に言った台詞がある。




『君、童貞??』










他に聞く事ね~のか!!





第一印象は凄かったね!





あまりの気迫に俺はつい・・







『う、うん。童貞だよ・・・』










って言っちゃった・・






実は俺、中学校の時に童貞は捨てていて、その場の空気に飲み込まれて嘘をついてしまった。

それから数年・・・




俺はずっと童貞だって言ってきた。





でもさすがに、大学生にもなって童貞ってのも微妙だから、

ラクロス部の娘と、初めての経験をしたって武志達に告げたら



『ま、まじか!?す、すげーじゃねえか・・・!!』



って、以外な反応で一緒になって喜んでくれた。





〈本当は初めてじゃないんだけど・・・〉







その後、蛍の光を歌ってくれた・・・






しかも、あいつら二人、







泣いてた・・・









『清が男になった!わっしょい!わっしょい!宏、赤飯だ!赤飯勝ってきてくれ!』



『武志!赤飯って何だ!?』




『お前、赤飯も知らないのか!?う、う~ん・・・しかたない!かやくご飯でいいや!』



『了解!かやくご飯だな!』








・・・こいつら、ホント馬鹿なんか??











しかも、武志は何をどう聞き間違ったのか・・・





ラクロス部の女を、







落語部の女!って間違っているし・・・





ラクロス・・・





ラクロス・・・





ラクロ・・・








ラクゴ・・・







落語・・・










どう耳が機能したら、ラクロスが落語になったんだろう・・・?







説明するのもややこしいから、俺は大学で落語部に所属していた事になっている。



でも面倒臭いことがあって、武志と一緒にいたらよく、






『はい清さん!お年玉とかけまして~』





とか、






『はい清さん!大晦日の”お”~!』








って具合に、なぞカケをしてくる・・・






俺が落語部だった故の、運命だろう・・・









ラクロス部なんだけど・・・








そんなこんなで、武志と宏とは腐れ縁でいまも続いている。








しかし、プロジェクトは参ったよなぁ・・・

どうしよう・・


あいつらマジだったしなぁ・・・




何だよ、チーム名『タケシ』って!




何だよ、『スーパー武志』って!!







・・・病気じゃねーか??







昨日、スーパー武志から電話があって、



『清!金持ちになる方法が見つかった!』





『え?な、何だよ・・・?』






『それはな・・・・ダララララララ・・・』






早く言えよ・・・






『チャーン!なんと、僕らがお金持ちになる方法は・・・・













発明家になる事でーす!



はい、拍手ー!パチパチパチパチ!』









発明家・・・












武志、お前さては昨日の『偉人のあれこれ!!』って番組見たな・・・











どうやら、チーム『タケシ』は発明集団になって、特許をとりまくり金持ちになるというプランが決まったようだ・・・







はぁ・・・






頭痛い・・・






俺はいつまで、引っ張られるんだろう・・・




今日の夜は、みんなで集まって発明をするらしい・・




武志は、研究家みたいな白衣を買ったらしい・・




宏は、何故はフラスコを買ったらしい・・





何に使うんだろう・・・?








そう考えながら時計をみたらもう夜の7時!


俺は、仕事をいったん終えてタイムカードを押した。




はっきり言って、 




だいぶ憂鬱なんだけど・・・






俺は、国道沿いの道を白い息を吐きながら渋々、武志の家に向かった・・




神様・・・






僕を助けてください!