12月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:1833
ナイス数:41

 

12月に読んだ本は9冊。

小説もエッセイも読めた師走。

でもやっぱりもっと物語を読みたい。

 

 

西加奈子『わたしに会いたい』


西加奈子さんの短編集。 

どれも、女性の身体性がテーマになっている。 

自分の身体性を見るふたつの眼差し。

自分が意識するところの身体、他人から勝手に値踏みされるところの身体。 

誰かに侮辱されたって、わたしはわたしの身体とありのまま付き合って生きていこう。

この本を読んでいたらそう思える。 

どれも終わり方が痛快で、勇気をもらえた。 

西さんも大丈夫だし、わたしも大丈夫だし、あなたも大丈夫。

身体含めて、侮辱されてもわたしは減らない。
読了日:12月21日

 

トーマス・S・マラニー、クリストファー・レア、安原和見訳『リサーチのはじめかた』


デスクリサーチを基軸に、「問い」の立て方や妥当性を精査していく一冊。 

読み手の知性を試されるかも。読む前に抱いていた印象よりもずっと難しい…!
読了日:12月16日

 

「マイメロディの『論語』」


現代語で意訳された『論語』にマイメロディの可愛らしいイラストが相まって、押し付けがましくなくヤル気をもらえる一冊。

特に好きなのはp.112「本当の勉強は社会に出てから。学ぶことをやめない人が、最後に必ず幸せになる。」かなぁ。
読了日:12月13日

 

梨木香歩『歌わないキビタキ』


梨木香歩さん、最も敬愛する作家のひとり。

梨木香歩さんの、野生の生き物に対する真剣であたたかいまなざしに感銘を受ける。 

自然の中に身を置いて四季折々の風物を観察しながらも、

騒がしい俗世の話題や現実の人間関係にも接点をもった文章の構成はすごいなぁ。 

教養も非常に豊かでおそれいる。

梨木香歩さんの文章には、生命の神秘に触れるような超越性、拓かれた感覚と異国情緒を感じる。

日本の作家のようには思えない。 

それでも、わたしと同じように日本でコロナ禍を体験したんだってこの本を読んで実感した。
読了日:12月12日

 

ジル・チャン、神崎朗子訳『「静かな人」の戦略書』


台湾出身の著者が語る、グローバルに内向型タイプが活躍する心得。 

派手なパフォーマンスは得意な人に任せておき、

信頼と人柄で立場を得るというのは古今東西そんなに変わりがないのかもしれない。 

内向型といいながら野心家な人は好きだ。
読了日:12月10日

 

安西水丸『安西水丸が遺した最後の抒情漫画集 陽だまり』


安西水丸さんの叙情漫画集。 

絵のタッチからは想像もできないほどエッジが効いた、男と女の悲哀が描かれている。 

いたぶられる愛人、女の競り、という刺激的な題材をこの絵で魅せるんだから凄い。 

ストーリーも言葉も、叙情的な奥行きがあってたまらない。

映画を観てるみたい。 すごいなぁ。

イラストが好きだと言いながら、少し侮ってたかも。 天才だ。
読了日:12月10日

 

ヘンリー・スコット・ホランド、高橋和枝訳『さよならのあとで』


愛する人をうしなった人に向けた、一つの詩。

日本未刊行の詩、42行の言葉を一冊にして出版するという試みに敬服する。

ゆっくりと丁寧に、愛する人を想って頁をめくるのにはこの体裁がふさわしいよ。 

「死はなんでもないものです。 私はただ となりの部屋にそっと移っただけ。」というはじまりから、

誰かに柔らかく抱きしめられているような気分になる。 

人生のなかで、これから何度かこの本のお世話になると思う。 

「いちばん 大きな かなしみに」という帯の一文も素晴らしい。
読了日:12月09日

 

堀井美香 『一旦、退社。』


アナウンサーの堀井美香さんが「沖に出て」からの日々を綴る一冊。 

めっちゃくちゃ良い!!!

 Podcast『Over The Sun』を聴いていても

堀井さんは張り合わないし穏やかで保守の立場を取っているように見えて、

人生経験も豊かだし想像以上に行動派でますます好きになった。 

車も好きで小型船舶1級の資格も持っていて、

都会育ちではなく秋田から上京されて、

「女子アナ」全盛期に25歳で出産されてからもお仕事を続けられてきた方。

アクティブさをおくびにも出さないし、なんて魅力的なんだろう。

全然えらそうにしないのも尊敬する。

当時25歳の娘さんの寄稿文で締めくくられている構成も完璧。素敵すぎる。好き。
読了日:12月09日

 

津原泰水、宇野亞喜良『五色の舟』


戦時中の不安定な時世。

そんな時代の混沌の中で集っていた見世物一座の家族。

彼らの不思議な均衡とその終幕を描く幻想SF。 

くだんは人間に利用されているようでもあり、でも主人公一家も含め、人間に極めてフェアな態度なのが良い。 

昨今流行りの言葉でいうところの「別の世界線」をテーマにしている。 

『五色の舟』というのは過日の家族の象徴であり、

「別の世界線」へ渡る幻想を二人だけが共有したという絆の象徴でもあるよね。 

不思議な読み心地。 

宇野さんの挿絵も相まって詩情と幻惑的な官能に満ちている。
読了日:12月03日