『夜の大人、朝の子ども』

 

離婚し、親権を手放してひとり暮らしをする女性の成長を描く物語。

わたし自身は子どもの頃に戻りたい、なんて一度たりとも思ったことはないから、

子ども時代を「朝」として、心の拠り所にしていくという発想が

わたしとは違う感性で新鮮だなぁ。

純真な「朝」の子ども時代に出会った人たちに、「夜」のゆいが再会していく。

ゆいだけが傷を抱えているわけではなくて、

再会した人たちそれぞれが悩みや苦しみを持ちつつ

大人として暮らしている様子は、一歩前へ進む勇気をくれるね。

モヤモヤと苦しんでいたはじまり時点から、明確に新しい道を切り開いていく姿はカタルシスがある。

ゆいが何故親権を渡したのか、ゆいの過去をあの背景にするのは、

今日マチ子さんの問題意識への射程の広さを感じるなぁ。

 

『私のことを憶えていますか』14巻

 

完結巻。

最高!!!!!!

そうそうそうそうそう!!!こういう漫画が読みたいの!!!

東村アキコ先生、ありがとうございます!!!

遥がどちらを選ぶか、文句なしの結果だった。

アグリー!共感しかない。

どんなに改心したって、スパダリになったって、自分のせいで怪我を負ったって、

全然好きになれない人と結婚しちゃダメなんだよ。

最終話のモノローグも、漫画でしか味わえない表現で染み入る。

2人の恋物語だけでなく、SNSの誹謗中傷という社会問題にも一つのアンサーを示していて、

本当に素晴らしい。

そしてエピローグが盛り沢山なのも幸せ。

キラキラ美しすぎるし劇的すぎる、恋愛漫画にしか満たせない欲望を最大限に満たしてくれる。

ギャグシーンもこの上ない。

あ~・・・終わってしまった。

アキコ先生は速筆で多作な方だから、次の作品がすぐ読めたらいいなぁ。

 

『ミステリと言う勿れ』13巻

風呂光さんの叔母さん殺人事件・富山編は完結。

各事件の登場人物は少ないから、誰が犯人なのか分かりそうなものだけど、

物事を単純に理解させない多面的真実がこの作品の真骨頂。

陽気なサイコパスと仕事人。

可哀そうな存在だと感情移入させておきながら真相に近づいて、人物評を転覆させる手腕はさすが。

仕事人は野に放たれているのが、いいな。

ここで捕まえる教科書通りの正義には、興味がない。

ミステリの仕掛けもさることながら、田村由美さんは本当に人間を描くのが上手すぎる。

 

『白山と三田さん』7巻

三田さんの東大受験予備校話が中心。

模試でB~C判定なら、十分に合格を狙える実力はある。

三田さんは変人だけど内面の葛藤は意外になくて気持ちの浮き沈みがないタイプだから、

友人の手助けができる余裕があるところも魅力的だなぁ。

白山のお姉ちゃんは今巻でも豪快でわがままで気持ち良い。

 

『ザ・ジョジョランズ』1巻

ジョジョシリーズ9作目。9部。

舞台はハワイ。主人公は15歳の少年ジョディオ・ジョースター。

8部は頭がこんがらがってついていけなくなり途中で離脱したけど、

9部は4部と5部のミックスのような方向性で、読みやすい。

4部=主人公の日常の中に事件があり、目的に向かって行動するのではなく巻き込まれることでストーリーが進行する。

5部=アウトローな立身出世モノ。

ジョジョは1巻時点の設定やキャラ付けが終盤まで首尾一貫することは稀なので、

ジョディオのキャラクター性についての所感は保留。

新キャラが登場する中で、シリーズお馴染みのあの人が登場!!!

見た目も設定もオリジナルワールドそのまま。興奮するな~。そしてあの人は2023年現在で一番タイムリーだな~。

あの人のスタンド能力は読者には既知の情報なので、

あの家で起こったスタンド現象は誰の差し金なのか気になる。

次巻が楽しみ!!!

 

『てつおとよしえ』

山本さほさんのご両親とのエピソードを綴った作品。

ガジェットが大好きで温厚な事業家のお父さまと、専業主婦で働き者のお母さま。

人の家庭というのはどの家庭も千差万別で、我が家が一番フツーだと皆が思いながらも、

他の家庭から見ると奇妙だったりもする。

わたしは母子家庭だし、親戚の女性にも専業主婦がいない環境で育ったので、

こういった各々の持ち場で支えあう家族の光景が、わたしには新鮮に感じた。

年の離れた末っ子というポジションの山本さほさんは、

ご両親にとっても可愛くて可愛くて仕方がない存在だったんだろうなぁって伺い知れる。

自分がちびっこだった時代から月日は流れ、やがて両親は親というよりも祖父母へ。

多くの人が体験する、人生の経年変化への戸惑いがほろ苦い。

 

『ひらやすみ』6巻

ヒロトがやりたい事を見つけたの巻。

ヒロトの夢に付き合ってくれるナダルも、二人して高校時代のままガムシャラさと楽しさがあるのが良い。

スランプで追い詰められたなっちゃんはヒロトに当たり散らすけど、

いとこの家に居候させてもらってる身・・・

兄妹ならまだしもイトコなのに遠慮ないよねー。大学生だしそんなもんかもしれないけど。

熱血編集のエピソードが良いなぁ。

パワハラは良くないけど、熱意をもって接していることをちゃんと分かっている人もいる。

立花よもぎさんはどちらの男性とくっつくのか。それともどちらともくっつかないのか。

どちらとも、男女の緊張感をまとっているのではなく、

計算のない素直な知人・友人関係で近づいていっているのが良い。