『ロブスター』(ギリシャ、フランス、アイルランド、オランダ、イギリス、2015年)

 

を観た。

独身者は取り締まられ、独身であることが発覚すると自ら選んだ動物に姿を変えられてしまう近未来。

妻に離婚され独身となったデヴィットは、あるホテルに収容される。

そこでは、独身者が集められており、45日以内に配偶者を見つけなければならない。

もし失敗した場合は動物に姿を変えられる運命が待っているのだが・・・。

ヨルゴス・ランティモス監督作品。

 

おったまげるほど面白い怪作。

 

この作品は翻訳者・岸本佐知子さんがTwitterでおすすめされていたので鑑賞。

ヨルゴス・ランティモス監督作品は、『女王陛下のお気に入り』をいつかの試写会で観たっきり。

 

作中では、独身者が人権むなしく手術でグロテスクに動物に姿を変えられてしまう、という

理不尽な構造自体への反感はなく、

誰もがそのルール自体には従っていながらもがき苦しんでいる。

 

デヴィットが収容されたホテルでは、

紳士淑女は気品溢れる姿で着飾って最大限にマナーを守りながら食事をし、

ダンスパーティを楽しむ。

それでいて、森に逃げ込んだ独身者たちを狩り、狩りのボーナスで執行猶予が1人につき1日加算されていく。

 

野蛮でありながら上品。

卑猥でありながら優美。

 

露骨に卑猥なシーンや残酷なシーンを

優雅で洒落た映像や演出で、胸やけせずとも印象的に脳裏に焼き付ける技術はすごいなぁ。

 

ホテルパート、森パートの場面の移行も良いし、

最初から最後まで想像できないような展開に転がっていくのが痛快。

 

設定だけで奇抜で心惹かれるけど、

それを上回るようなストーリーの意外性と、演出の妙、キャストの魅力が素晴らしい。

 

最初に選んだ相手は、デヴィットにとって不運きわまりない。

森で伴侶となっても、見つかれば動物に変えられてしまうって、あまりにも理不尽すぎる設定だよ。

どうすることもできない先に選んだ未来が、物悲しい。

 

 

 

今後、何度でもこの作品を観返してしまう気がする。