『波紋』トークショー付き試写会

にて公開に先駆けて、荻上直子監督の最新作『波紋』を鑑賞した。

 

▼ストーリー

須藤依子は「緑命会」という新興宗教を信仰し、祈りと勉強会に励みながら心穏やかな日々を過ごしていた。そんなある日、十数年前に失踪した夫・修が突然帰ってくる。自分の父の介護を依子に押しつけたままいなくなった修は、がんになったので治療費を援助してほしいという。さらに息子・拓哉は障害のある恋人を結婚相手として連れ帰り、パート先では理不尽な客に罵倒されるなど、自分ではどうしようもない苦難が次々と依子に降りかかる。湧きあがってくる黒い感情を、宗教にすがることで必死に押さえつけようとする依子だったが……。

(映画.com さんより https://eiga.com/movie/98450/

 

※公開前ですが、多少のネタバレも含みますので注意してください。

 

荻上監督の作品といえば、

『かもめ食堂』『めがね』『トイレット』のように

ギスギスした日常から離れた土地で心機一転して暮らしている姿、というイメージを持つけれど、

予告編やポスターの毒々しくも鮮やかな赤を観て、

今回はそれらとは一線を画す作品なんだろうと鑑賞前から心していた。

 

想像通り、荻上監督の代表作品のような「人生の洗濯」的な幸せな逃避行ではない。

それでも、絶望して宗教・霊感商法に浸かりきって終わりを迎えるのではなく、

どこにも行けなくても、

近くにいた誰かとたまたま出会ったことで利害関係のない友情を築き、

ちゃんと救われてゆく、というのが良いなぁ。

鑑賞の直後よりも、すこし時間が経ってからのほうが沁みる。

 

宗教の教えでは、「人を呪わば穴二つ」といい心を清らかに保ちましょうと制される。

それに対して、木野花さん演じる清掃員の女性は「肉を切らせて骨を断つ」というし、

やり返してしまえ!と自分のリアルな感情に蓋をしなくて良いとパワフルに言い放つ。

自分の感情は抑え込まなくて良い。

ジクジクと本音である差別感情を話した際には、

「あんたはっきり差別するね!」と笑い飛ばして深刻にしない返しの言葉が気持ち良い。

嫌味を言われたら「嫌な女!」と切り捨てて笑い飛ばすのも最高。

 

役者さんは全員が演技派で、

主演の筒井真理子さんの悲壮感や怒りをひそめた表情には不憫な・・と何度も同情してしまうし、

光石研さんはダメなオヤジ役が本当に天下一品・・・。

キムラ緑子さん江口のりこさん平岩紙さんの圧倒的な信者世界は説得力ありすぎる。

極めつけは、木野花さん。

優しくて落ち着いているのにパワフルで、わたしも木野花さんに救われたい人生だ。

 

ラストシーンには、なんだか胸がすく。

 

 

試写会の会場の「縁命水」とパネル。

フォトスポットになっており、わたしも例にもれずパチリ。

このお水は最初は来場者へのサービスかと思ったけど、

それにしては数が少ない・・・と思いとどまって良かった!

あやうく窃盗になるところだった。

 

今回は映画鑑賞後にトークショーということで、

映画の内容や核心に触れた話を聞くことができるので、ありがたかったなぁ。

 

トークショーは

荻上監督、主演の筒井さん、

お笑い芸人のみなみかわさん、司会の伊藤さとりさんが登壇されていた。

フォトセッションタイムもあり、SNS投稿可とのことだったので掲載。

荻上監督、ご本人も非常にウィットに富んだ方で、

筒井さんはお綺麗で、みなみかわさんは・・・お笑い芸人としての役割を全うされていた。

 

宗教をテーマに扱っている作品ではあるけど、

時系列としては大きな事件が起きる前に脚本を書かれていたとのこと。

偶然にもタイムリーな設定で、脚本時点が気になったのでスッキリ。

 

会話の中で、今回が実力派揃いという話題では

「わたしは演出に自信がないので、俳優が上手くないと成り立たない」と荻上監督が謙遜されていながらも、

撮影シーンではカメラ越しではなく肉眼で目視して臨むという

撮影時の風景も伺えて興味深かったな。

 

 

50代以降の既婚女性には特に響くであろう作品。