『鉄コン筋クリート』(日本、2006年)
を観た。
義理人情の街・宝町で暮らし超人的な身体能力で<ネコ>と呼ばれる悪ガキのシロとクロ。
不安定なバランスで成り立つ宝町に、開発の名目でならず者たちが踏み込んでくるのだが・・・。
松本大洋原作のアニメ映画。
原作は未読。
シロとクロという手に負えない子どもが大人と対等にやり合うことで、
時代に淘汰されゆく混沌とした古い街の哀愁と爛熟期の輝き、
整頓されていない世界の真実味、人情、
昭和の風景の塗り替えに抵抗することを描いた傑作。
昭和のノスタルジーと一言でいうと安直だけど、
シロとクロの歪な共存関係と同じくらい、
終わりゆく街への執着というのが強烈なテーマに感じた。
全然違うけど、
同時期の漫画では浦沢直樹『20世紀少年』にも共通するような、
人間が人間らしくいられた、システマチックなものに侵されていない昭和のダイナミズム、
塗り替わった風景への甘やかなノスタルジーを、
むき出しの暴力で描くから、壊したいのか守りたいのか、分かんないや。
好きで仕方がないことは分かる。
110分前後の短い作品だけど、
物語がブレずに進んでいくし、声優陣も良いなぁ。
シロとクロの主演の二人もそうだけど、ネズミ役の田中泯さんは声だけでも圧倒的な存在感がある。
それにしても、
物語と完全に融合するアジカンの主題歌「或る街の群青」が素晴らしすぎる。
歌詞のいたるところに、物語の印象的な言葉が散りばめられていて、
この曲は中学生のときによく聞いたアジカンのアルバム「ソルファ」に収録されてたから、よく聞いたのに
映画を観た後だと、歌詞が沁み入って全然違うように響くよ。